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第1部 まるで初めての恋

6-4 ※

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「つよ、い…です……っ、気持ち、良ぃ……ッあ、はぁ、あっ!」

 煮えたぎる体が、熱くて熱くて早く放出したかった。腹の真ん中がぐつぐつと炎を取り込んだ様なくらい、欲しくて堪らないと叫んでいる。
 陽菜は視界が点滅して、甘く高い声を上げて、何度目か分からない絶頂を迎えた。

 それでも顔を上げずに陽菜が内腿を痙攣させていても止めないので、達したばかりで敏感な場所は直ぐに陽菜を連続して短いスパンで手を引いてくれる。

「いった、ばっか……なのにっ、また…っ…ひ、ぃ……ア、ぁっ、あー……っあぁ…ッ」

 何度も何度も互いを受け入れて、気持ちをすり合わせては、この恋は間違っていないのだと刻む必要があった。
 逃避行とは、当本人達だけで無く過去も今もそこに存在していた全てを捨てて、去るのだから。陽菜達にはその工程を双方の熱量と感情で証明し続ける必要があった。

 そうでなければ、両手いっぱいに抱えた己の歴史と決別することは出来ない。

 陽菜は駆け落ちして一度目の朝を迎えるまで、そんな難しいことは考えないようにしていた。
 いや、そもそも契約社員の医療事務員と最前線で活躍する医師とでは、本来ならば釣り合っていない間柄であったからだ。
 世間が羨む輝かしい、人道的で命を救える術を持つ患者の希望である人間をこの手で個人的な感情で奪ってしまったのである。

 そんな、背徳的で罪悪感に苛まれることをしてまで、陽菜は最賀忠と現実から、逃げた。許されるべき行為では無いだろう。その重罪を陽菜は一生抱える覚悟は、この腕の中に最愛の男を抱き留めた時にとっくについている。

 レースのカーテンに光が差し込んで明るくなる頃には、すっかり肩で呼吸をして陽菜の上に体重をかけ雪崩れ込む最賀がいた。背中は汗で濡れて、湿った肌すら愛おしい。
 暫くすると、重たい体をむくりと起こして最賀は陽菜の手首に口付ける。儀式的な、清廉とした空気に包まれて陽菜はこの気怠さも幸せに感じた。

「────陽菜、ついてきてくれて、ありがとう」
 
もしかしたら、最賀も見えない何かに蝕まれていたのかもしれない。

「忠さんが、連れ出してくれたから…。私、今ちゃんと息、出来るんです」

 陽菜はふかふかの布団よりも、最賀の腕の中の方が何百倍も心地良いと思った。弛んだ頬が笑みを自然に綻ばせると、最賀は小さく吐息を漏らした。

 すると、最賀は陽菜の肩から腰にかけて掌を滑らせる。確認する様に、しっとりと潤んだ肌はまだ汗が引いていない。次第に鼠蹊部辺りまで到達すると、やっと陽菜にこう言うのだ。

「朝起きて早々に……何かくるものが、あって。良いか?」

「あ、指、が……っ」

 ちゅぷりと二本指が陽菜の隘路へ進んで行く。体が敏感なのか直ぐに潤いを分泌して、最賀の指に絡み付く。

「まだ中、潤ってる、凄く濡れてる……」

「忠さん?あ、えっ?!あ、ぁ…っ」

「頸、綺麗だな、かぶりつきたくなる」

 腰を高く上げられて、陽菜は枕にしがみ付いた。ずん、と腰が押し進められると陽菜は背中を反らして軽く達してしまう。
 頸をべろりと舐められて、長い髪を踏まぬ様に最賀が慎重に退かしてくれる。覆いかぶさって、律動で揺れる陽菜の胸を大きな掌が揉みしだく。
 厚い胸板がぴたりと陽菜の背中に合わさって、熱を帯びる。汗が流れる。

「ひぁ、……っ、あ、ぁん、ゆび、引っ掻いちゃ……ぁっんん……!」

 肌と肌が打ちる音が響く中で、陽菜の尖を深爪にされた指先で弾いたり引っ掻くから痺れる快楽に啼いてしまう。

「少し強く指で挟まれるのも、好きだろ?ほら、凄く締め付けてる」

 指できゅ、と頂きを挟まれると先程よりも強い刺激に喉から迫り上がった高い声が飛び出してしまった。

「忠さん、好き、キス…したい、です……顔見たいよお……」

「うん、少し体勢…変えようか、足持つぞ?」

 徐に片膝を持たれたので、そのまま体勢を変えるのかと思いきや、骨盤が開かれた瞬間にぱちっと奥に男茎を押し込まれて陽菜は目を見開いた。
 ずちゅずちゅと激しく揺さぶって、蜜液が内腿を伝っていく。陽菜は何が起こったか分からなくて、シーツを握り締めるしか出来なかった。

 ただ、下半身がとにかく我慢出来ないくらい、水を出したがっている。排泄を極限まで我慢した感覚に陽菜は最賀に静止を求めたが、乾いた唇を舐めて、やってごらん?と言うのだ。

「だめだめぇっ、出ちゃ、……漏れちゃうからぁっ!」

「バスタオル敷いてあるから、遠慮するなよ、漏れないから、そっちじゃあない」

「いやっ、あ、あぁっ、あ……はぅう……っ出ちゃ……っあぁっ!」

 ぐり、とカリ首が陽菜の奥を突いた瞬間に陽菜は腰を震わせてぴしゃっと噴き出した。追い風とも言える、最賀が陰核を指先で左右に刺激するから耐え難い排泄感は止まらない。がく、がくと腰が揺れて一滴まで出し切る。

 最賀の大きな手は潮で盛大に濡れており、陽菜が脱力してシーツの波に横たわると、仰向けにして足の間に平然と入る。べろりと舐めて、上手く潮吹けたなと色欲に滲んだ双眸が陽菜を映した。

「し、お……?」

「気持ち良過ぎて出るんだよ、奥摩ったり、敏感なそこ、刺激すると」

「漏らし、たかと思って、怖かった……」

 バスタオルはびっしょりと水捌けにはなったものの、もう吸水するには心許ないくらい濡れていた。最賀が器用に畳んで退けると、陽菜の腰を上げてまた新しい物を敷く。嫌な予感しか、しない。

「あの……せんせ、い」

「忘れないように、もう一回?」

「だ、だめ、です……っ辛いから、腰…溶けちゃうみたいで怖いんです」

 愛潮を出すのは、初めてではない。だが、この排尿感はいつまで経っても慣れないので、その度に陽菜は不安になるのだ。箍が外れて堰き止められたものが一気に押し寄せて、本当に排泄してしまったのではないか、と。

 そうやって、不安に駆られれば最賀は癖をつけさせる様になのか、陽菜の体に記憶させたいのか、執拗にぐずぐずに蕩けさせてから同じ工程を行うくらいには、隠れサディストなのかもしれない。

「あと一回だけ……な?蕩けた顔、また俺に見せて下さいな」

「あ、まだっ、敏感だからっ……忠さん…っ」

 陽菜は目を見開いて大粒の涙を溢した。ずぶずぶと男根が沈んでいく様子を静止したくて、最賀の腕を掴んだが止められるはずがなかった。腰に響く、快感の振動は陽菜の思考を掻き回す。

「う、うう……っ、はぁ、っ、ア、ぁあ……」

 快楽に溺れそうだ。尾を引いた余韻すら待たず、陽菜を新境地へ連れて行く。必死で陽菜は抗おうとしたものの、虚しい抵抗は呆気なく抑えられた。
 手首を優しく掴んで、ぐんと腰を打ち付けられると陽菜は水を得た魚の様に体が跳ねる。制御出来ない衝動に、陽菜はただ喘いで唾液で唇を濡らすのだ。

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