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第1部 まるで初めての恋
4-4 ※
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「せ、せんせぇっ、あのっ、わ、たし……」
────うわ、面倒だよ処女とか。何で捨てなかったんだよ?
嫌な記憶が蘇る。
陽菜は最賀の寝室にいた。部屋は寝るだけの為、と言いたげだ。クローゼットに全て仕舞われているのか、物が少なく大きなベッドとサイドテーブルだけが置かれていた。目覚まし時計も無く、携帯をアラーム代わりに使っているらしい。
シーツに背中を預けた陽菜の上には、最賀がいる。最賀の家に来なければ、きっとこんな機会は無かったはずだ。
交際をしている割には、最賀は陽菜へあれから一度も触れなかった。軽いキスはするが、陽菜の肌には全く、だ。
あまりにも奥手過ぎて、陽菜がリビングで前屈みに程良いアルコールの力を借りて問いただすと。一度怖い思いをさせてしまったから、と最賀が先程観念した様子で白状したのである。
陽菜の押しの力に引っ張られたのか、最賀は一度大きく息を吐いて、それから決心が固まったのか陽菜を寝室へ連れて行った。陽菜は最賀の小指と薬指を握って優しく誘導されたのだった。
「なんだ?」
「……初めて、なんです、わたし」
「初めてが、俺、なのか?」
ぎしりとベッドが二人分の体重で軋む音がやけに大きく聞こえた。陽菜は次の言葉が何を紡ぐのか怖くて、嫌がられる、とぎゅっと目を瞑る陽菜に対して予想外なことを言われる。
「まあ、それは……凄く嬉しいですが……」
恐る恐る片目だけ開いて、ちらりと窺うと最賀は態と肩を竦めて見せた。
「なんだよ…」
「────面倒じゃ無いって言ったひと、初めてなので」
「山藤の初めてが面倒なんて、そんな訳ないだろうに」
「先生……本当に、その、キスも、触られるのも、先生が初めてなんです」
陽菜の言葉に、最賀は思わず衝動的に陽菜の体をかき抱いた。強く抱き締められて、陽菜は骨張った肩甲骨に腕を回す。背中のラインが綺麗だなと首筋に顔を埋めて心を落ち着かせる。
「分かった、まず俺から言えることはな」
「……はい」
「痛いこと、嫌なこと、気持ち良いことは素直に俺に言うこと。あとは、力を抜いてリラックスして俺に委ねてくれ」
前髪越しに、眉上にある抉れた傷へキスをされる。陽菜は啄むキスに順応するのに精一杯だった。鼻先や、頬、唇と降りて行く。
「ゆ、だね……る」
「うーん、あとは、まあ、ゆっくり進めるから」
「は、い……ん、……は、ぁ……っ」
首筋に舌が滑って、ざらざらとした感触が陽菜を身震いさせる。何だか頭のてっぺんから足先まで熟知した、獣がいる気がした。欲情した荒々しい目付きが、それを示唆する。陽菜は抵抗せず、体の緊張故に硬直した体を何とか弛めようと努力した。
陽菜の緊張を解そうと、最賀はゆっくりと唇にキスをして、それから皮剥け一つない陽菜の口唇を舌で開ける。上顎を舐められて、深い口付けがこんなにも性的欲求の燈を宿すのだなとぼんやりと考える。
「楽にしててくれ?」
「最賀、先生………」
シーツに縫い付けられて、ひやりとした感覚が背中に当たることで押し倒されたのだと陽菜は気が付いた。大きなシャツは襟ぐりまで開いて、鎖骨や右肩を晒している。布越しから最賀の指先が体のラインを確かめて撫でた。腰骨を触られ、脹脛から腿にかけて手のひらが滑って行くから、その度に身震いする。
陽菜はキスをされながら、器用に最賀が胸元を探り当てたことが不思議だった。寝転んでいるせいで、胸は重力で逸れてしまったのかと思っていたからだ。そんなことを考えている暇は無くなることに、まだこの時は陽菜は知る由もなかった。
最賀の掌が優しく陽菜の胸元を包む。柔らかい弾力のある肌を暫く触れていると、布を押し上げる物が主張し始めた。最賀はそれが何なのか、知っている。陽菜はぼーっと口の中を侵されていたので、自分の体がどう変わっているのかまだ良くわかっていなかった。
「ん……擽ったい?」
「最初は、そう感じるかもなあ」
すると、主張するつんと尖った部分を指の腹でやんわり押したり、摩り始めた。陽菜はびり、と電流が走って、体が小さく跳ねた。なにが、と口に出そうと最賀の唇が離すとそれを追い掛けて舌を捩じ込まれた。激しく口内を蹂躙して、先程とは別物の口付けをするので頭が追いつかない。
じゅる、と唾液が絡んだ舌を吸われて陽菜は身じろぐ中で、指が胸の頂を捏ねくり回すのだ。
「んぅ、ぁ、……は、ぁっ、せ、せんせぇっ、や……っぁあ……」
限定的な刺激が、むず痒くて陽菜は両膝の頭を無意識に擦り寄せていた。何だか足の間が熱い感じがするのだ。
「……服、脱がすからな」
張り詰めた声が、熱っぽくて陽菜は生唾を飲み込んだ。
「あ、先生、恥ずかしい…です、見ないで…っ」
陽菜の真珠の様な白い肌は、やや桃色に火照っていた。シャツのボタンが全て外されると、陽菜が腕でガード出来ないように指を絡めて押さえ込んでしまう。
「綺麗なんだから、見ないと損だろう?」
胸元に顔を埋めて、谷間にキスを落とす。すると、吐息が肌に当たって生暖かい。舌が尖端を捉えるとざらついた柔らかい舌先が容赦無く粘る。
「ひ……っ、ぁあっ?! な、っ…ぁ…っなにっ?」
じゅう、と口唇で挟んでから重点的に生き物の様に舌が食んだり、吸い付くので背中に電気が駆け巡って行く。指を絡められてがっちりと離さんばかりに抵抗出来ないでいるので、声が全く抑えられない。はあ、はあ、と吐息混じりに甘い声が勝手に喉から出て行ってしまう。
「声、我慢しないって約束するなら手、離してやる」
「で、できませんっ」
「じゃあこのままだな、そんなに手繋ぎたかったんだな」
「あ、ぁっ……ア、ん、…っ、それは、っそう、ですけどぉっ……」
陽菜は体を震わせて抗議する。愛撫を止めない最賀は段々と腹の窪みから臍まで唇でちゅ、ちゅ、と触れて行く。確かめる動作が余計、陽菜の奥底に熱を灯す。
「変、そこっ、なんか……っ、や、めて……っ」
陽菜の艶かしい足を抱えて、間に顔を埋めた最賀は秘裂を舌先でついとなぞった。
舌の柔らかくて熱い感覚に身を捩って、初めて秘所の快楽を与えられて戸惑った。下着越しでは以前、愛撫と言う名の嫌がらせを羞恥心とスリルの中されたが、今は状況が全く異なる。
誰にも見せたことも暴かれたことのない秘部は、最賀の入念な前戯の序章によって少しずつ熟れていた。
「指よりは、こっちの方が快いと思うが?」
「せ、んせぇ、汚いよぉ、だめぇ、舐めちゃ、だめっ!」
ぴちゃ、ぴちゃと水音が寝室に響いて陽菜は堪らず根を上げた。
だめ、と口にしてしまう割には体がひどく悦んで溢れた蜜液が垂れているのを感じる。茂っているはずの下半身が、涼しげになっているのを最賀は小首を傾げて、どうして剃ったのか顔を埋めながら問われる。
「だ、って……下、綺麗にした、方が良いって……ネットで見たからぁ……ぁあ、あっ」
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