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二章
二話 不思議な少女
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「仕事ならしょうがないわよね」
緒美は信号待ちをしながら、独り呟いた。
お礼に昼食をご馳走しようと思っていたが、黒羽根は急遽仕事が出来てしまった。
(そういえば…黒羽根さん何か言いかけてたような…気がしたけど)
そんなことを思いつつ緒美は、時間が気になり鞄からスマホを取り出そうとする。
すると鞄からハンカチが落ちて、緒美は慌てて拾い上げた。
「あ、返すのすっかり忘れてたわ…」
それは以前、黒羽根から借りた物だった。
(そういえば…あの時、黒羽根さんに泣き顔を見られたのよね)
緒美は黒羽根からハンカチを手渡された時のことを思い出し、人前で泣き慣れていないゆえの羞恥心で顔に熱を帯びるのを感じた。
「困ったな…」
不意に、若い女性の声が耳に届いた。
「ん?」
緒美は声のする前方に視線を向けた。
いつの前か信号が青に変わっている。
そして向こう側から横断歩道を渡ってくるセーラー服姿の女の子と、腰の曲がった老婆に目が止まった。
女の子は左右を何度も見回し、老婆の周りをまるで子リスのようにちょこまかと動き回りながら、後をついている。
(…何してるのかしら?)
奇妙な行動だと不思議そうに見つめていると、その女の子と目が合った。
「ねぇ!そこのお姉さん!」
「…え?」
「このお婆ちゃんを助けてあげて!」
「???」
緒美は意味がわからず、首を傾げた。
しかし、老婆は足が悪いのか杖をつき、大きな風呂敷袋を下げている。
かなりゆっくりな歩みで、あの調子だと信号が赤に変わってしまいそうだ。
「お婆さん、荷物お持ちますよ」
すかさず老婆に声をかけた。
「ああ…ありがとうね」
老婆は頭を下げた。
緒美は風呂敷袋を持って、老婆と一緒に横断歩道を渡った。
「本当にありがとう…良かったら、これ」
老婆はそう言って、風呂敷袋から3つほど蜜柑を取り出すと緒美に手渡した。
「いいんですか?」
「ええ」
「艶が良くってとても美味しそうですね!」
「ありがとう…うちで採れた蜜柑なのよ」
「そうなんですか!」
「孫に食べさせたくって、九州から持って来たの」
「遠くから来られたんですね。気をつけて行ってらっしゃい」
「ありがとう」
そこで緒美は老婆と別れた。
しかし後ろ髪を引かれて少し様子を見ていると、一人の青年が老婆に駆け寄ってきた。
「お婆ちゃん!」
「おや、智」
「駅で待っててって言ったのに…」
「あら、ごめんなさいね」
「…まぁ、いいよ。行こうか」
孫らしい青年が風呂敷袋を持って、老婆の背中に手を添えながら、ゆっくりと歩き始めた。
「……大丈夫そうね」
緒美はその光景に、ホッとした。
「お姉さん、ありがとう!」
後ろから大きな声がして、緒美は驚いて振り返った。
「私の代わりに助けてくれて!あのままだったらあのお婆ちゃん、車に轢かれてたかもしれなかったよ。お姉さん、ホント女神!!」
「…え?」
緒美は女の子の言葉に一瞬戸惑った。
「あ!私ね、こう見えて実は幽霊なんだ~!だからお婆ちゃんに私の声が届かないし、触れないし、助けられなかったの!」
「ゆ、幽霊?」
「うん」
目を丸くする緒美に、女の子は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
緒美は信号待ちをしながら、独り呟いた。
お礼に昼食をご馳走しようと思っていたが、黒羽根は急遽仕事が出来てしまった。
(そういえば…黒羽根さん何か言いかけてたような…気がしたけど)
そんなことを思いつつ緒美は、時間が気になり鞄からスマホを取り出そうとする。
すると鞄からハンカチが落ちて、緒美は慌てて拾い上げた。
「あ、返すのすっかり忘れてたわ…」
それは以前、黒羽根から借りた物だった。
(そういえば…あの時、黒羽根さんに泣き顔を見られたのよね)
緒美は黒羽根からハンカチを手渡された時のことを思い出し、人前で泣き慣れていないゆえの羞恥心で顔に熱を帯びるのを感じた。
「困ったな…」
不意に、若い女性の声が耳に届いた。
「ん?」
緒美は声のする前方に視線を向けた。
いつの前か信号が青に変わっている。
そして向こう側から横断歩道を渡ってくるセーラー服姿の女の子と、腰の曲がった老婆に目が止まった。
女の子は左右を何度も見回し、老婆の周りをまるで子リスのようにちょこまかと動き回りながら、後をついている。
(…何してるのかしら?)
奇妙な行動だと不思議そうに見つめていると、その女の子と目が合った。
「ねぇ!そこのお姉さん!」
「…え?」
「このお婆ちゃんを助けてあげて!」
「???」
緒美は意味がわからず、首を傾げた。
しかし、老婆は足が悪いのか杖をつき、大きな風呂敷袋を下げている。
かなりゆっくりな歩みで、あの調子だと信号が赤に変わってしまいそうだ。
「お婆さん、荷物お持ちますよ」
すかさず老婆に声をかけた。
「ああ…ありがとうね」
老婆は頭を下げた。
緒美は風呂敷袋を持って、老婆と一緒に横断歩道を渡った。
「本当にありがとう…良かったら、これ」
老婆はそう言って、風呂敷袋から3つほど蜜柑を取り出すと緒美に手渡した。
「いいんですか?」
「ええ」
「艶が良くってとても美味しそうですね!」
「ありがとう…うちで採れた蜜柑なのよ」
「そうなんですか!」
「孫に食べさせたくって、九州から持って来たの」
「遠くから来られたんですね。気をつけて行ってらっしゃい」
「ありがとう」
そこで緒美は老婆と別れた。
しかし後ろ髪を引かれて少し様子を見ていると、一人の青年が老婆に駆け寄ってきた。
「お婆ちゃん!」
「おや、智」
「駅で待っててって言ったのに…」
「あら、ごめんなさいね」
「…まぁ、いいよ。行こうか」
孫らしい青年が風呂敷袋を持って、老婆の背中に手を添えながら、ゆっくりと歩き始めた。
「……大丈夫そうね」
緒美はその光景に、ホッとした。
「お姉さん、ありがとう!」
後ろから大きな声がして、緒美は驚いて振り返った。
「私の代わりに助けてくれて!あのままだったらあのお婆ちゃん、車に轢かれてたかもしれなかったよ。お姉さん、ホント女神!!」
「…え?」
緒美は女の子の言葉に一瞬戸惑った。
「あ!私ね、こう見えて実は幽霊なんだ~!だからお婆ちゃんに私の声が届かないし、触れないし、助けられなかったの!」
「ゆ、幽霊?」
「うん」
目を丸くする緒美に、女の子は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
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