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第九話

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 妻にはすぐにバレた。
 なぜなのか。
 夕食の時に「今日は何があったの? 変だよ」と言われた。
 心配をかけるのは本意ではないから、正直に弁護士と話をしてきたことを伝えたら随分と驚かれた。
 「そこまでして動画を作らなくてもいいじゃない」と、随分と心配されてしまったが、内容的には大したものではないこと、ブロックすれば見ずに済むことを伝えて、一応は納得してもらえた。

 その日のうちに、暴言を書き込んでくるユーザーのほとんどをブロックした。
 残りは後、一人。俺の個人情報を握っている相手だ。
 暴言への対処を調べたり、弁護士との無料相談で出掛けていた分、動画投稿の頻度が下がっている。
 考えを整理する時間も欲しいし、今は動画のほうに注力しよう。

 ほんの数日。
 いくつかの動画を投稿したところで、暴言を書き込むユーザーが増えていることに気付いた。
 ほとんどをブロックして、残りは一人だけのはずだったのに、だ。

 新しく増えたユーザーはどこから来たのか。
 調べたところでは、ブロックしたことは相手に伝わらないとなっていた。暴言を書き込んでいたユーザーがブロックされたことに気づいて、別のユーザーアカウントを取ったわけではないと思う。
 しかも、増えたユーザーは全員が片足を揶揄するコメントを残していた。

 それをどこで知ったのか。

 考えられるのは、以前の動画に残されたままのコメント。
 俺の片足を揶揄するコメントは、最初の一人が書き込んだものがそのまま残っている。見る気になれば誰でも見れる場所にだ。
 それを見て、同じように揶揄するコメントを書き込んでいるのであれば、いずれはスーパーの名前も目にするだろう。いや、もう見ている可能性のほうが高い。
 動画に顔は出していないとは言え、そこまで出掛けてくれば義足で歩いている俺を見つけるのは難しくはないだろう。

「……くそう」

 気が滅入る。
 しばらくは、あのスーパーは避けよう。自宅まで配達してくれるネットスーパーもあるし、米や冷凍食品などの保存が効くものであれば、ネットスーパー以外でも買える物は多い。
 いくら近所だからって、あのスーパーに行けないくらいで生活が行き詰まるわけではない。

 しばらくはそれでいい。
 それでも不便になるのは確かだし、今後、どんな情報をバラされるのか分からない。
 やはり弁護士に相談しよう。
 お金を掛けて、相手が誰なのか調べてもらおう。訴訟をするかどうかは、その後のことだ。まずは、相手が誰なのかを明らかにしなければ。
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