元勇者のOL生活

スキル:耐熱の使い方

さあさ皆さま
耐熱スキルって知ってるかい？

ちょっと前、勇者だった頃
火龍なんかにブレスをゲロッパされても大丈夫なスキルなんだよ。

戦う時も、鍋のフタ取る時にも、熱さはわかっても火傷などしない便利なスキルなんだ！




「アチっ！アチっ！」
生ビールで喉を冷やしながら熱い熱いと炭火で爆ぜる牡蠣を素手で摘んで
チュルッてオクチに投入。

んーーー！
ぷっはぁーー！！！
オクチん中が海ぃぃー！おいチさが溢れとるぅぅぅ！

口ん中が旨さの津波に溺れるぅぅぅーー！！


「‥瑞希アンタ手、大丈夫？」
あっけに取られていた友人そのイチは三巡目ぐらいで声を掛けた。

「ああ！軍手忘れてた！！」
「いやそんな問題じゃないでしょ！」「大丈夫でしょ瑞希の手は顔ツラの皮ほど分厚いんだってーwww」
アハハハハ！！
ギャハハハ！！


女子も三人集まればかしましい

1人精神年齢中年に差し掛かっていたが
女は死ぬまで可愛くキュートな女子なのだ。
そこは譲れない。


此処は海辺の牡蠣小屋
目の前には炭火がガンガン焚かれている
豪快に一斗缶からザリザリと直接網に乗せる
口が開いたら食べ頃だ。
生ビールは飲み放題
牡蠣は食べ放題

純粋に牡蠣だけ食べれる
それ以外のメニューは潔く無い。

パンパン弾けて攻撃してくる牡蠣にも負けず、イザ尋常に勝負！！


食べて呑んでいい気分で帰る時
瑞希はうっかりしていた。
カバンで七輪を倒したのだ。
ひょいひょいっと赤々と熾った炭を摘んで直した。

うん！これで元通り！
知らん顔してお会計をしてホテルに戻った。


駆け寄ろうと火箸を手にした店員数名が彫像のように見送った。

【結論】
元勇者の手の皮は顔ツラの皮程にブ厚い。