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第9話「まつり縫いのリサ」
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「カリン氏? その格好はいったいどうしたんでござるか?」
女児向けアニメの魔法少女が書かれたTシャツを着た目の前の客が、魔女のハロウィンコスプレをしたカリンに問いかける。
「ま、まあ……いろいろあったのよ……。あはは……」
「まさかカリン氏にコスプレ趣味があったとは。人は見かけによりませんな」
「趣味でやってるわけないでしょ……」
目の前の客による絶妙に腹立つ言動に対しても、いちいち噛みつく気力すら起きない。
「またまたぁ。隠さなくてもいいんでござるよ?」
「いい加減にしないとぶっ飛ばすわよ……?」
そんなやりとりをしている間も、カリンの格好は自ずと店中の注目を一心に集めていた。
「何であの子だけコスプレ……?」
「カワイイ~。こっち向いて~」
「アオイちゃんとノアちゃんのも見たかった~」
敢えて聞かないように努めても、否が応でも耳に入ってくる。完全に穴があったら入りたい。
「しかし、その衣装はこの店とはミスマッチですな? いったいどこで選んできたんですかな?」
「私じゃないわよ……。店長が『セルバンテス』で買ってきたの」
触れて欲しくない質問にしぶしぶ答えながら、チーズフォンデュの火付けのため指先へ火を灯す。
「どうせ『セルバンテス』で買うなら、もっと際どい衣装がよかったですぞ」
「ふざけたことぬかしてると、アンタの服に『うっかり』火点けるわよ……?」
くだらない冗談を流している余裕など、今のカリンには当然あるわけもなかった。
「冗談はさておき、それならイメージに合うものを自作してみてはいいのではないですかな? あ、ガサツなカリン氏では無理でござ……すみませんでした! 謝りますからどうか、拙者の『ぷりてぃ☆うぃっち マジカル☆フェアリー』のロゼちゃんTシャツに火を点けるのだけはお許しを!」
Tシャツに描かれた女児向けアニメのキャラクターの顔付近に火球が近づいてくると、チーズフォンデュ男は態度を一変させ、必死の形相で平謝りし始めた。
「はぁ……。ただでさえ注目の的なんだから、余計なことで目立たせないで……」
ため息をつきながら、火球を火付け皿へと戻す。
「いや、カリン氏が勝手に目立っ……いえ、何でもございません」
今度のはいたって正当な指摘な気もするが、今のカリンにそんなことは関係ない。カリンの右手に灯された炎を見ると、フォンデュ男は発言を取り下げる羽目となった。
「お詫びと言ってはなんですが、知り合いの衣装職人を紹介するでござる」
「いや、アンタの知り合いって時点で不安しかないんだけど……?」
「界隈では『まつり縫いのリサ』の二つ名で恐れられるほど、折り紙つきの実力の有名人なので安心ですぞ?」
「今の説明に安心できる要素なかったんだけど……。なんなのよその二つ名……」
「ちょうどこの今近くにいるらしいので、ちょっと店に来てもらうでござる。30分ぐらいで着くそうですぞ」
カリンの不安もどこ吹く風で、勝手に話をすすめるフォンデュであった。
***
「あ、どうも……。リサといいます……。突然押しかけてすみません……。よろしくお願いします……」
30分後、フォンデュ男に呼ばれた「まつり縫いのリサ」が来店し、カリンの元へ挨拶に来た。
リサはその奇抜な二つ名からは想像できないような、何なら少し地味目の印象を受ける女性だった。
「お店の雰囲気に合う衣装が欲しいと彼からお聞きしました……。サイズさえ分かれば、ピッタリの衣装がお作りできるかと思います……」
「そういう訳ですのでカリン氏。早くスリーサイズを言うでござる!」
「アンタねぇ……。今度こそ本当に燃やすわよ? ていうかグラビアアイドルじゃあるまいし、自分のスリーサイズなんかいちいち覚えてないわよ……」
右手に炎を灯し、セクハラフォンデュ男を睨みつけるカリン。
「大丈夫です……。この場で図らせてもらえれば……」
「いや、店の中で採寸はちょっと……」
まさか客のいる店内で肌着だけの姿になって測られる訳にもいかない。
「あ、いえ……。そのままの格好で大丈夫です……。すぐに終わりますから……」
彼女もまた、フォンデュとは別ベクトルで人の話を聞かないタイプだと察するカリン。いっそさっさと終わらせてもらおうと諦めのため息をついた。
「はぁ……。まあいいわ……。こう見えても仕事中だから、手短に頼むわね?」
「では……。失礼します……」
そう言うと、カリンの背後へと回りこむリサ。まあ今着ている衣装だって相当な薄着だ。大まかなサイズを測るくらいなら問題ないだろう。
刹那、カリンの感じた違和感。あれ、リサって手ぶらで店に来てたわよね……?
カリンの両脇の隙間から胸元へと伸びてくるリサの両手。その指はワキワキと艶めかしく妖しい動きをしていた。
え? まさか? カリンの頭によぎる一抹の不安。
しかし時すでに遅く、その両手はカリンの胸をおもむろに揉みしだき始めた。
「ぐへへ。姉ちゃんいい身体してんじゃねぇか」
鼻息荒くよだれを垂らし、耳元で囁くリサ。先ほどまでとは別人のような豹変ぶりだ。
「いやあぁぁぁ~~~~~~!!!」
カリンの絶叫が店内中に響き渡った。
女児向けアニメの魔法少女が書かれたTシャツを着た目の前の客が、魔女のハロウィンコスプレをしたカリンに問いかける。
「ま、まあ……いろいろあったのよ……。あはは……」
「まさかカリン氏にコスプレ趣味があったとは。人は見かけによりませんな」
「趣味でやってるわけないでしょ……」
目の前の客による絶妙に腹立つ言動に対しても、いちいち噛みつく気力すら起きない。
「またまたぁ。隠さなくてもいいんでござるよ?」
「いい加減にしないとぶっ飛ばすわよ……?」
そんなやりとりをしている間も、カリンの格好は自ずと店中の注目を一心に集めていた。
「何であの子だけコスプレ……?」
「カワイイ~。こっち向いて~」
「アオイちゃんとノアちゃんのも見たかった~」
敢えて聞かないように努めても、否が応でも耳に入ってくる。完全に穴があったら入りたい。
「しかし、その衣装はこの店とはミスマッチですな? いったいどこで選んできたんですかな?」
「私じゃないわよ……。店長が『セルバンテス』で買ってきたの」
触れて欲しくない質問にしぶしぶ答えながら、チーズフォンデュの火付けのため指先へ火を灯す。
「どうせ『セルバンテス』で買うなら、もっと際どい衣装がよかったですぞ」
「ふざけたことぬかしてると、アンタの服に『うっかり』火点けるわよ……?」
くだらない冗談を流している余裕など、今のカリンには当然あるわけもなかった。
「冗談はさておき、それならイメージに合うものを自作してみてはいいのではないですかな? あ、ガサツなカリン氏では無理でござ……すみませんでした! 謝りますからどうか、拙者の『ぷりてぃ☆うぃっち マジカル☆フェアリー』のロゼちゃんTシャツに火を点けるのだけはお許しを!」
Tシャツに描かれた女児向けアニメのキャラクターの顔付近に火球が近づいてくると、チーズフォンデュ男は態度を一変させ、必死の形相で平謝りし始めた。
「はぁ……。ただでさえ注目の的なんだから、余計なことで目立たせないで……」
ため息をつきながら、火球を火付け皿へと戻す。
「いや、カリン氏が勝手に目立っ……いえ、何でもございません」
今度のはいたって正当な指摘な気もするが、今のカリンにそんなことは関係ない。カリンの右手に灯された炎を見ると、フォンデュ男は発言を取り下げる羽目となった。
「お詫びと言ってはなんですが、知り合いの衣装職人を紹介するでござる」
「いや、アンタの知り合いって時点で不安しかないんだけど……?」
「界隈では『まつり縫いのリサ』の二つ名で恐れられるほど、折り紙つきの実力の有名人なので安心ですぞ?」
「今の説明に安心できる要素なかったんだけど……。なんなのよその二つ名……」
「ちょうどこの今近くにいるらしいので、ちょっと店に来てもらうでござる。30分ぐらいで着くそうですぞ」
カリンの不安もどこ吹く風で、勝手に話をすすめるフォンデュであった。
***
「あ、どうも……。リサといいます……。突然押しかけてすみません……。よろしくお願いします……」
30分後、フォンデュ男に呼ばれた「まつり縫いのリサ」が来店し、カリンの元へ挨拶に来た。
リサはその奇抜な二つ名からは想像できないような、何なら少し地味目の印象を受ける女性だった。
「お店の雰囲気に合う衣装が欲しいと彼からお聞きしました……。サイズさえ分かれば、ピッタリの衣装がお作りできるかと思います……」
「そういう訳ですのでカリン氏。早くスリーサイズを言うでござる!」
「アンタねぇ……。今度こそ本当に燃やすわよ? ていうかグラビアアイドルじゃあるまいし、自分のスリーサイズなんかいちいち覚えてないわよ……」
右手に炎を灯し、セクハラフォンデュ男を睨みつけるカリン。
「大丈夫です……。この場で図らせてもらえれば……」
「いや、店の中で採寸はちょっと……」
まさか客のいる店内で肌着だけの姿になって測られる訳にもいかない。
「あ、いえ……。そのままの格好で大丈夫です……。すぐに終わりますから……」
彼女もまた、フォンデュとは別ベクトルで人の話を聞かないタイプだと察するカリン。いっそさっさと終わらせてもらおうと諦めのため息をついた。
「はぁ……。まあいいわ……。こう見えても仕事中だから、手短に頼むわね?」
「では……。失礼します……」
そう言うと、カリンの背後へと回りこむリサ。まあ今着ている衣装だって相当な薄着だ。大まかなサイズを測るくらいなら問題ないだろう。
刹那、カリンの感じた違和感。あれ、リサって手ぶらで店に来てたわよね……?
カリンの両脇の隙間から胸元へと伸びてくるリサの両手。その指はワキワキと艶めかしく妖しい動きをしていた。
え? まさか? カリンの頭によぎる一抹の不安。
しかし時すでに遅く、その両手はカリンの胸をおもむろに揉みしだき始めた。
「ぐへへ。姉ちゃんいい身体してんじゃねぇか」
鼻息荒くよだれを垂らし、耳元で囁くリサ。先ほどまでとは別人のような豹変ぶりだ。
「いやあぁぁぁ~~~~~~!!!」
カリンの絶叫が店内中に響き渡った。
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