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第6話「お祈りメール」
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「得意な魔法は?」
テーブルに置かれた履歴書に頬杖をつきながら、気だるげに質問する店長。
「小石を飛ばす魔法です!」
「不採用」
***
スタッフ募集を再会したあの日。ノアの予想に反して、応募数自体は何十件にも及んだ。
しかし残念ながら、結果は見ての通りだ。
「お疲れ様……。これで面接何件目?」
やつれた様子の店長を見かね、カリンが労いの言葉をかける。
「44件目だ……。だから嫌だったんだ……」
頭をボリボリかきながら店長がぼやく。
「お前やアオイなんかはもう即決。ノアはまあ際どかったが、選り好みできる状況になかったから採用したんだっけな……。でも、まあ……基本はこんなもんだ……」
昔のことを振り返り、店長は遠い目をしていた。
誰でも発展した科学の恩恵を受けられるようになったことで、わざわざ魔法に頼る機会も少なくなり、その流れに従って自ずと魔法使いたちの力も落ちていった現代社会。そんな中で「コルボ」でのパフォーマンスに使えるような都合のいい魔法を使える人材に出会える確率は限りなく低いものであった。
得意な魔法がそもそも飲食店向きでないもの、パフォーマンスとして地味すぎるもの、適性はあっても魔力不足で出力が足りないなど、数多くの志望者たちが面接を受けては落ちてを繰り返していた。
「店長さーん! 次の方いらっしゃいましたー!」
入口方面からアオイの声がすると、店長は大きなため息をつき、面倒くさそうに出迎えに行くのであった。
***
「得意な魔法は?」
「肉を鉄のように固くする魔法です!」
「……不採用」
***
「得意な魔法は?」
「物を浮かす魔法です!」
「……浮かせられる重量は?」
「箸より重いものはちょっと……」
「………………不採用で」
***
「得意な魔法は?」
「塩を青酸カリに変える魔法です!」
「不採用。あとお前は出禁な」
***
「……やっと終わった」
面接用の席の上では、店長が真っ白に燃え尽きていた。
「結局採用はゼロでしたね……。お疲れ様です……。あはは……」
苦笑いを浮かべたアオイが、真っ白な抜け殻へと労いの言葉をかける。
「結局私たちだけで頑張るしかないってことね……」
悲しい現実を目の当たりにし、カリンは諦観のため息をつく。
「そういえば店長さんも魔法使えるんですよね? 何かパフォーマンスとかされないんですか?」
アオイがふとした疑問を投げかける。
「あー、私のはそういうのには向かないんだよな……。まあ見てみるか?」
そう言うと店長は、誰だったかの履歴書をおもむろに宙へと舞わせ、小さく手刀のような動きを取った。
すると、その履歴書が空中でスパッと二つに裂けた。
「おーっ!」っとアオイが思わず小さな拍手をする。
「何よ、いいの持ってるじゃない? 何かやらないの?」
それを見たカリンが疑問をぶつける。
「そもそも切れ味がカッターナイフのそれくらいだしな……。薄い紙とか布しか切れない」
「あー……」っとアオイは察して苦笑いをする。
「あとは……」
「あとは……?」
無駄に勿体ぶって店長は続ける。
「カッター程度とはいえ一応刃物だからな。客が怪我する」
「まあ確かにそれは危ないわね……。でも店長? 厨房でもそれ使ってないわよね? 厨房なら便利なんじゃないの?」
がっくりと肩を落としながらも、カリンは素朴な疑問を投げかけた。
「お前……。それ、本気で言ってるのか?」
片付け中のノアが、何かを察したような表情をしていたが、カリンにはどういうことだか全くわからなかった。
「カッターレベルだって言ったろ? 包丁で切った方が速いに決まってんだろうが」
「まあ確かに……。そりゃそうよね……」
至極当たり前の指摘に納得するとともに、カリンは全身の力が抜けていくのを感じたのだった……。
テーブルに置かれた履歴書に頬杖をつきながら、気だるげに質問する店長。
「小石を飛ばす魔法です!」
「不採用」
***
スタッフ募集を再会したあの日。ノアの予想に反して、応募数自体は何十件にも及んだ。
しかし残念ながら、結果は見ての通りだ。
「お疲れ様……。これで面接何件目?」
やつれた様子の店長を見かね、カリンが労いの言葉をかける。
「44件目だ……。だから嫌だったんだ……」
頭をボリボリかきながら店長がぼやく。
「お前やアオイなんかはもう即決。ノアはまあ際どかったが、選り好みできる状況になかったから採用したんだっけな……。でも、まあ……基本はこんなもんだ……」
昔のことを振り返り、店長は遠い目をしていた。
誰でも発展した科学の恩恵を受けられるようになったことで、わざわざ魔法に頼る機会も少なくなり、その流れに従って自ずと魔法使いたちの力も落ちていった現代社会。そんな中で「コルボ」でのパフォーマンスに使えるような都合のいい魔法を使える人材に出会える確率は限りなく低いものであった。
得意な魔法がそもそも飲食店向きでないもの、パフォーマンスとして地味すぎるもの、適性はあっても魔力不足で出力が足りないなど、数多くの志望者たちが面接を受けては落ちてを繰り返していた。
「店長さーん! 次の方いらっしゃいましたー!」
入口方面からアオイの声がすると、店長は大きなため息をつき、面倒くさそうに出迎えに行くのであった。
***
「得意な魔法は?」
「肉を鉄のように固くする魔法です!」
「……不採用」
***
「得意な魔法は?」
「物を浮かす魔法です!」
「……浮かせられる重量は?」
「箸より重いものはちょっと……」
「………………不採用で」
***
「得意な魔法は?」
「塩を青酸カリに変える魔法です!」
「不採用。あとお前は出禁な」
***
「……やっと終わった」
面接用の席の上では、店長が真っ白に燃え尽きていた。
「結局採用はゼロでしたね……。お疲れ様です……。あはは……」
苦笑いを浮かべたアオイが、真っ白な抜け殻へと労いの言葉をかける。
「結局私たちだけで頑張るしかないってことね……」
悲しい現実を目の当たりにし、カリンは諦観のため息をつく。
「そういえば店長さんも魔法使えるんですよね? 何かパフォーマンスとかされないんですか?」
アオイがふとした疑問を投げかける。
「あー、私のはそういうのには向かないんだよな……。まあ見てみるか?」
そう言うと店長は、誰だったかの履歴書をおもむろに宙へと舞わせ、小さく手刀のような動きを取った。
すると、その履歴書が空中でスパッと二つに裂けた。
「おーっ!」っとアオイが思わず小さな拍手をする。
「何よ、いいの持ってるじゃない? 何かやらないの?」
それを見たカリンが疑問をぶつける。
「そもそも切れ味がカッターナイフのそれくらいだしな……。薄い紙とか布しか切れない」
「あー……」っとアオイは察して苦笑いをする。
「あとは……」
「あとは……?」
無駄に勿体ぶって店長は続ける。
「カッター程度とはいえ一応刃物だからな。客が怪我する」
「まあ確かにそれは危ないわね……。でも店長? 厨房でもそれ使ってないわよね? 厨房なら便利なんじゃないの?」
がっくりと肩を落としながらも、カリンは素朴な疑問を投げかけた。
「お前……。それ、本気で言ってるのか?」
片付け中のノアが、何かを察したような表情をしていたが、カリンにはどういうことだか全くわからなかった。
「カッターレベルだって言ったろ? 包丁で切った方が速いに決まってんだろうが」
「まあ確かに……。そりゃそうよね……」
至極当たり前の指摘に納得するとともに、カリンは全身の力が抜けていくのを感じたのだった……。
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