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第7球「白組ミーティング」
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「揃ったみたいだな。では、白組のミーティングを始める」
周太たちがBグラに着いたころには、2年の原田文哉《ふみや》を中心としてすでに輪ができていた。三人はそれぞれ間に入れてもらい、原田の話を待つ。
「今回俺たちは白組ということになったが、来週の試合の結果や内容次第では、ベンチ入りやレギュラー奪取の可能性も十二分にありえる。みんな、気合いをいれていこう!」
「「「オー!!!」」」
原田の呼びかけに呼応し、一部を除いたメンバーが掛け声をあげる。
2年でありながら白組に振られたことで、原田自身も思うところはあるのだろう。この試合にかける気迫のようなものは、周太たちにも伝わってきていた。
ただ、彼にとってはその限りではないようだった。
「うるさ……。いいから、そういうの……」
2年生ピッチャーの岩田傑《すぐる》。彼は心底うっとおしいと言わんばかりにため息をつくと、早々に輪を離れようと歩き出す。
「待て、打順はどうするんだ?」
原田が呼び止めようとする。
「別に九番でいいでしょ?……あと、梅宮くんだっけ?後でサインだけ教えるから、よろしく」
「梅田な……。チームメイトの名前くらい覚えろ……。って待て!……ったく、アイツは……」
原田の呼び止めも聞こえていないかのように、岩田はAグラウンドの方へと消える。視界の端には梅田が引きつった表情を浮かべているのが写る。
岩田の姿が完全に見えなくなると、ひとつため息をついてから、原田は続きを話し始めた。
「気を取り直して打順を決めるか。スムーズに進めるためにベースは作ってきたから、何か意見があれば教えてくれ」
原田はその辺の石を手に取り、考えてきたのであろう打順をグラウンドに書き始めた。
一番 レフト 今田
二番 センター 越谷
三番 ライト 前田
四番 サード 原田
五番 ファースト 金子
六番 キャッチャー 梅田
七番 セカンド 斎藤
八番 ショート 尾形
九番 ピッチャー 岩田
「どうだろう?1年生についてはまだ実戦で見てはいないし、バッティング練習でのイメージや、足の速さなんかにはなるんだが……?」
確認をとるような口調に反し、内心では会心の出来と思っているであろうことは、原田の表情からそれとなく伝わってきた。
「いいんでないかい?ちゃっかり自分を四番にしてること以外は」
岩田が去り、原田以外に残った唯一の2年である前田右近《うこん》が茶々を入れる。
「そこ、うるさい」
前田の発言は司会者権限により棄却されたようだ。
「はいはいっと。で、1年ズは何かないかい? 『四番はコイツじゃなくて俺だろ~』とかさ?」
「そこ、しつこいぞ」
1年も発言しやすいように、前田が茶化しを入れてくれているのに乗じ、周太は口を開く。
「いや~、ないっすかね~。最近のトレンドは『二番最強打者理論』っすから!」
「お、言うねぇ~。ま、頼りにしてるぜ。最強打者サン」
そう言って前田は素敵な笑みを浮かべると、原田の方に向き直る。
「ま、実際問題これでいいんじゃない? そもそも紅白戦なんて、打線の繋がりってより、個々人の内容重視なんだしよ」
「それもそうだな。よし、これで行こう! みんなあと他に何かないか?」
原田が最後の確認に入る。
「本番は来週土曜日だ! 各々ベストを尽くせるよう、二週間それぞれ調整に励んでくれ! バッテリーはサイン、内野陣は守備連携だけは確認しておけよ! 以上! 解散!」
周太たちがBグラに着いたころには、2年の原田文哉《ふみや》を中心としてすでに輪ができていた。三人はそれぞれ間に入れてもらい、原田の話を待つ。
「今回俺たちは白組ということになったが、来週の試合の結果や内容次第では、ベンチ入りやレギュラー奪取の可能性も十二分にありえる。みんな、気合いをいれていこう!」
「「「オー!!!」」」
原田の呼びかけに呼応し、一部を除いたメンバーが掛け声をあげる。
2年でありながら白組に振られたことで、原田自身も思うところはあるのだろう。この試合にかける気迫のようなものは、周太たちにも伝わってきていた。
ただ、彼にとってはその限りではないようだった。
「うるさ……。いいから、そういうの……」
2年生ピッチャーの岩田傑《すぐる》。彼は心底うっとおしいと言わんばかりにため息をつくと、早々に輪を離れようと歩き出す。
「待て、打順はどうするんだ?」
原田が呼び止めようとする。
「別に九番でいいでしょ?……あと、梅宮くんだっけ?後でサインだけ教えるから、よろしく」
「梅田な……。チームメイトの名前くらい覚えろ……。って待て!……ったく、アイツは……」
原田の呼び止めも聞こえていないかのように、岩田はAグラウンドの方へと消える。視界の端には梅田が引きつった表情を浮かべているのが写る。
岩田の姿が完全に見えなくなると、ひとつため息をついてから、原田は続きを話し始めた。
「気を取り直して打順を決めるか。スムーズに進めるためにベースは作ってきたから、何か意見があれば教えてくれ」
原田はその辺の石を手に取り、考えてきたのであろう打順をグラウンドに書き始めた。
一番 レフト 今田
二番 センター 越谷
三番 ライト 前田
四番 サード 原田
五番 ファースト 金子
六番 キャッチャー 梅田
七番 セカンド 斎藤
八番 ショート 尾形
九番 ピッチャー 岩田
「どうだろう?1年生についてはまだ実戦で見てはいないし、バッティング練習でのイメージや、足の速さなんかにはなるんだが……?」
確認をとるような口調に反し、内心では会心の出来と思っているであろうことは、原田の表情からそれとなく伝わってきた。
「いいんでないかい?ちゃっかり自分を四番にしてること以外は」
岩田が去り、原田以外に残った唯一の2年である前田右近《うこん》が茶々を入れる。
「そこ、うるさい」
前田の発言は司会者権限により棄却されたようだ。
「はいはいっと。で、1年ズは何かないかい? 『四番はコイツじゃなくて俺だろ~』とかさ?」
「そこ、しつこいぞ」
1年も発言しやすいように、前田が茶化しを入れてくれているのに乗じ、周太は口を開く。
「いや~、ないっすかね~。最近のトレンドは『二番最強打者理論』っすから!」
「お、言うねぇ~。ま、頼りにしてるぜ。最強打者サン」
そう言って前田は素敵な笑みを浮かべると、原田の方に向き直る。
「ま、実際問題これでいいんじゃない? そもそも紅白戦なんて、打線の繋がりってより、個々人の内容重視なんだしよ」
「それもそうだな。よし、これで行こう! みんなあと他に何かないか?」
原田が最後の確認に入る。
「本番は来週土曜日だ! 各々ベストを尽くせるよう、二週間それぞれ調整に励んでくれ! バッテリーはサイン、内野陣は守備連携だけは確認しておけよ! 以上! 解散!」
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