居酒屋店主の恋

メタボ戦士

文字の大きさ
上 下
5 / 13

第5話 来訪者

しおりを挟む
 出逢ってから1ヶ月が経過した。
 
 私と菊太郎は一緒に暮らして同じ店で働いているので、近所ではおしどり夫婦と噂されていた。

 ·····結婚はしてないのにね。

 私と菊太郎は恋人や夫婦の関係ではなく、お互いの利益のために一緒にいるだけの仕事の仲間?相棒?みたいなものだと互いにわかっている。
 
 だからこれからも発展することはない。

 互いに好みではないし、相手が出来るまでのつなぎだ。

 いつかお互いに相手が出来ればこの変な共同生活も終わる。
 
 ·····まぁそんなすぐではないだろうからそれまでは仲良く平和に暮らそう。

 しかしが私の家に来て穏やかな生活にヒビがはいる。

 それは暑い日だった。

 早朝営業が終わり家に帰ったら私の家の前に見覚えのある人がいた。
 
「お母さん、久しぶり。」

「お菊、葬式以来ね。あなたの旦那さんの。」

はもう聞きたくないから言わないで。今日は何で来たの?」

「あなたに見合い話を持ってきたのよ。あなた23の年増で良い相手を見つけるのに苦労したけどやっと私のお眼鏡に合う人を見つけたわ。あら、お隣にいる方は?」 

それがしはお菊さんのお店で用心棒をしている菊太郎と申す。?」

「用心棒?それだけならもう帰っているはず、どうして私の娘の家の前にいるのかしら。」

「お母さん、実はこの人と暮しているの。」

「えっなんで!」

「住む家がないらしくて、それに同情して一緒に暮らしているの。」

「あなたの旦那だった人はもう死んでいるからってホイホイと他の男性、それも素性のわからない人と暮らすなんて馬鹿なことをして。」

「お母さんには関係ないでしょ、私はもう生娘ではないし。」

「私はあなたのことを心配しているから言っているのよ。ほらこんな男追い出してさっさと見合い相手と再婚しなさい。」

「再婚は別にしても良かったけど、お母さんの言い方が気に入らないからしない。」
 
「幼稚なこと言ってもう!隣のあなたはどう思っているの菊太郎さん、さっきから黙っているけど。」

「お菊さんは雇い主なのでそれがしに言う権利はありません。お菊さんが家から追い出したいと言うなら出ていきます。」

「菊太郎がいなくなっては困るわ。今では家族みたいなものだから。菊太郎に相手が出来るまでは一緒にいてよ、寂しいじゃない。」

「お菊さん·····」

「あなた達、私を置いて自分達の世界に入らないでよ。わかったわもう!今回は断るわよ見合い話。それで文句はないわね。」

「お母さん···」

「でも菊太郎さんを認めたわけではないから。認める前に娘に手を出したら許さないわよ。」

「お母さん、私と菊太郎さんはそんな関係じゃないから大丈夫よ。ね、菊太郎。」

「うむ。それだけは否定されてもらいます。」

「まぁいいわ、私はもう帰るから。」

「もう帰るの?まだいたらいいのに。」

「見合い話のために来たのに断るんだからここにいてもしょうがないでしょ。」

「さようなら元気で…」

「さようなら、またいい見合い話を持って来るわ。」

 お母さんが帰って行った。

 2人だけになると静かになった。

 ····気まずい、さっき恥ずかしいこと言ったから。

 この空気に耐えられないので今日の給金渡して「この金でたまには遊郭にでも遊びに行って」と追い出した。

 何か私に聞きたそうな顔をしていたが私が無視したら諦めて金を握りしめて出て行った。

 その後私は家でのんびり過ごした。

 夜になった。

 菊太郎が戻って来なかったので1人で夕餉ゆうげを食べて寝た。  

 それから翌朝。

 菊太郎は朝起きたときには戻っていなかった。

 菊太郎も男だからしょうがないと諦めて朝餉あさげを作った。

 それを食べている途中、聞き取れないけど外から声が聞こえた。

 ·····菊太郎やっと帰ってきたか。

 食べるのを中断して外に出た。

 ·····えっ?
 
 菊太郎が知らない女性と肩を抱いて家の前にいた。

 



 



 

 

 
 


 
 




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

江戸の櫛

春想亭 桜木春緒
歴史・時代
奥村仁一郎は、殺された父の仇を討つこととなった。目指す仇は幼なじみの高野孝輔。孝輔の妻は、密かに想いを寄せていた静代だった。(舞台は架空の土地)短編。完結済。第8回歴史・時代小説大賞奨励賞。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ようこそ安蜜屋へ

歴史・時代
 妻に先立たれた半次郎は、ひょんなことから勘助と出会う。勘助は捨て子で、半次郎の家で暮らすようになった。  勘助は目があまり見えず、それが原因で捨てられたらしい。一方半次郎も栄養失調から舌の調子が悪く、飲食を生業としているのに廃業の危機に陥っていた。勘助が半次郎の舌に、半次郎が勘助の目になることで二人で一人の共同生活が始まる。

四本目の矢

南雲遊火
歴史・時代
戦国大名、毛利元就。 中国地方を統一し、後に「謀神」とさえ言われた彼は、 彼の時代としては珍しく、大変な愛妻家としての一面を持ち、 また、彼同様歴史に名を遺す、優秀な三人の息子たちがいた。 しかし。 これは、素直になれないお年頃の「四人目の息子たち」の物語。   ◆◇◆ ※:2020/06/12 一部キャラクターの呼び方、名乗り方を変更しました

習作 恨み屋蒔田雨露亮

井田いづ
歴史・時代
「その恨み、この爺に売れ」 江戸の町には、晴らせぬ恨みを募らせる人の目の前に現れる老人がいる。名を、蒔田雨露亮(まきた・うろすけ)──人の恨みを我がものとし、夜な夜な見も知らぬ人の仇を討つ『恨み屋』である。今宵もまた、新たな恨みを晴らしに老人は動く。 目には目を、歯には歯を、悪人には悪人を。 (不定期更新です。諸々の表現等の練習用。全体的にあまり温かくも明るくもスッキリな話でもないので、お気をつけください……)

華日録〜攫われ姫君の城内観察記〜

神崎みゆ
歴史・時代
時は江戸時代、 五代将軍徳川綱吉の治世。 江戸城のお膝元で、 南町奉行所の下っ端同心を父に持つ、 お転婆な町娘のおはな。 ある日、いきなり怪しげな 男たちに攫われてしまい、 次に目にしたのは、絢爛豪華な 江戸城大奥で…!? なんと、将軍の愛娘…鶴姫の 身代わりをすることに…! 仰天するおはなだったが、 せっかく江戸城にいるんだし…と 城内を観察することに! 鶴姫として暮らす江戸城内で おはなの目に映ったものとは…?

処理中です...