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初めての朝
しおりを挟む「ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ!」
うるさい目覚ましのベルを止めようとレオンは音のしている方角に手を伸ばす。いつもと違って目覚ましはベッドのなかにあるようだ。寝ぼけて転がしちゃったかなとレオンは思う。そして、伸ばした指先が柔らかなものの先にある突起に触れた。それを押し込むとベルの音は止まった。しかし、この風変りな目覚めし時計はなんだ!? 眠気の靄がかかっていた頭が急に澄みわたる。
「これは!?」
レオンは毛布をはがす。そこにいたのは、全裸の美少女だった。いや、正確には、美少女の姿をした幼馴染のロボット、ファブの子機だった。
ファブからは花のようないい匂いがしていた。レオンの指は美少女の乳首を乳房に押し込んでいた。慌ててレオンは指をひっこめる。
「ん。あ、おはよう、レオン」
ファブは眠そうな声で言った。
「なんで、裸!? 昨日は黒っぽい戦闘服着てたよね。あれ、どうしたの?」
「捨てた」
「なんで!?」
「レオンは新品の車のシートにかかった透明シートを剥がさずに使うタイプか? あんなもの要らないんだよ。剥がして使うように作られている。本体だけあればいい。だから捨てた」
「服は包装紙とかシュリンクみたいなもんじゃないよ。服は着て。PXで売ってるのか、再支給願いをかけるのか知らないけど、手続きをしよう。なんなら僕が――」
「ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ!」
レオンとの会話を無視してファブの口から目覚まし時計のアラーム音が発せられた。ファブは苦しそうな表情で自分の胸を指さす。
「なに、これ。スヌーズなの? 停止ボタン押しにくいから別の場所にして」
レオンは言う。
「ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ!」
今度は頭を差し出すファブ。
「アタマ叩けって? それも嫌だよ」
「ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ! ピピピ!」
ファブは掌を差し出した。
レオンはファブの掌を自分の掌で叩く。パチンといい音がして、ファブの口から発せられていたアラームが止まった。
「目覚ましは今日限りにしてよ。目覚まし時計ならもう持ってるんだ」
「小さいころは、ずっと私が起こしてた」
ボールのように丸く、表面に布が貼られたロボットだったころ、ファブは内蔵の目覚まし時計でレオンを起こすのが日課だった。どこかを叩くとアラームは止まる。しばらくするとスヌーズタイマーが鳴り、二度寝を防ぐ。
「ファブの調子が悪くなってからは、時計で起きるようになったんだ。今日まで、ずっとそうしてきた」
「また起こしてやる。だって私は、もう故障していないから」
きらきらと輝く瞳で美少女戦闘アンドロイドであるファブがレオンをじっと見つめる。
「じゃあ、また、起こして、もらおうかな」
レオンは言った。なんとなく照れ臭かった。
「よし。スキルが起動していないが、ドキュメントによれば、慰安モードの起こし方もあるようだ。男子が朝になると膨張している部分を刺激して――」
「そういう二一世紀のエロ漫画みたいな展開は要らん! 普通に起こしてくれ」
「ちぇ、慰安モード、起動させてみたいのに」
「要らん。そういうのは人間とやるから。それよりコーヒーでも淹れてくれてくれ」
「このボディはコーヒーメーカーと連動はしていない」
ドタバタと迎えた初めての朝。また、ファブとの生活が戻ってきた。レオンはしみじみと嬉しさを噛みしめていた。
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