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「エルフを妊娠させたり、オークに妊娠させられたりしている描写のいきつく先にあるもの」について妄想した 2018.10.08

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 小説「姫騎士エリザベート: 名誉戦争」( https://amzn.to/2IKPHvJ )では、人類とエルフ、オークは交配可能という設定にしている。私は意識的にそうしたのだけど、孕ませたり、孕んだりできるってことは、人類とエルフとオークは同じ種ってことだ。白人、黒人、黄色人種ぐらいにしか違ってはいないということ。けっこう姿形違うじゃん、って覆うかもしれませんが、交配可能にした瞬間から、同種ってことになったんだ。仕方ないだろ。あきらめろ。

 ちなみに、アニメ化もされた小説「ゴブリンスレイヤー」のゴブリンはオスしかおらず、そのへんのメスを妊娠させられる能力があるが、生まれてくるのは純然たるゴブリンなんだそうだ。これは人類と同種とはいえない。


 話を戻す。交配可能なエルフ、人類、オークの話だ。それらはいがみ合ったりするかもしれないけれど、人種による紛争だ。

 エルフは高貴で、人間は真ん中で、オークは下等な種族とかいうのは人種差別だ。

 いつか、オークの牧師が「私には夢があります」と演説をしたり、オーク出身の大統領が誕生したりするかもしれない。

 エルフとオークと人間が同種だとしたら、混血によって照らし出される問題は、人種差別だけではない。
寿命とそれをベースにした人生設計、社会設計の問題も出てくるであろう。

 エルフは1000年を生きる。そして、エルフは森に隠れて暮らしている。なぜ?

 エルフの長寿は遺伝によるものだが、おそらくその遺伝は潜性(劣勢)なのだ。なので長寿なエルフ同士で生殖しないと、メンデルの法則に基づいて、短命な者が3、長寿のものが1の割合で発生する。

 人族との子だとすると人生50年が3、人生1000年が1の割合になる。同じ家族で寿命が20倍違うと、あまりに文化的に不安定だ。

 1000年生きるエルフ的には人間が50年や100年で死ぬのは「病的」なものにみえるのではないだろうか。姉が1000年生きるのに、自分は50年で死ぬ。その事実を受け入れるのはなかなか難しいだろう。


 金髪の遺伝がそうであるように、両親ともが長命な遺伝子を持っていないかぎり、長命が発現しないということも考えられる。この場合は、混血によって長命は失われていく。

「かつてエルフは1000年を生きた。今は普通じゃ。長くて100年。耳が長いだけじゃな」とか古老が語るようになろう。


 醜いとされるオークの申し子を宿した人間やエルフは普通に生むだろうか。堕胎を試みたり、出産後に周囲の人間が子殺しをしたりはしないだろうか。

 エルフを妊娠させたり、オークに妊娠させられたりしている描写のいきつく先にあるのは、苦しみに満ちた世界なのである。

 ネットで流布しているエルフさんとオークさんの感じからすると同種だなと思っていたので、私の小説「姫騎士エリザベート: 名誉戦争」( https://amzn.to/2RcDYJo  )ではそういう設定にしたのだ。

 あとで知ったのだが、トルーキン先生の小説世界では、エルフを堕落させるとオークになるそうだ。

 そんなのなんて本のどこに書いてあるの、と思って調べたところ、評論社よりでている『新版 シルマリルの物語』の「第三章 エルフたちの到来と虜囚となったメルコールのこと」(ハードカバーのp101)にあった。

 神格であるヴァラールの一人、メルコール(後にモルゴスの名で呼ばれる)によって地下で堕落させら奴隷化されたエルフがオークになってしまうようだ。オークは繁殖する。また、エルフに嫌われてるのだという。

 トルーキン先生の世界ではエルフやオークは永遠の存在で、人間は死すべき存在。

 エルフやオークは互換性あっても、彼らと人間との互換性はないようだ。別種なのであろう。

 オークさんを忌み嫌いながらもオークに発情するエルフさんとかネット小説やマンガであるようだが、イメージの厳選はやっぱりトルーキンさんの作なのかもしれない(トルーキンさんが明示的にそう書いてるわけじゃないが)。

 アニメ「ベルセルク」に登場する獣鬼《トロール》もアニメ「ゴブリンスレイヤー」のゴブリン同様に、人間の女性を使って一方的に繁殖してそうな描写があった。「ベルセルク」は精神世界と現実世界が重合した世界を描いた作品なので、遺伝的に云々するのは無意味であろうが書き添えておく。

 目の前にいる孕ませモンスターは霊的存在かもしれないという描き方は拙著「姫騎士と呼ばれた少女が町を滅ぼした話」( https://www.alphapolis.co.jp/novel/634416562/310182130 )でしていたりもする。これについてもメンデルの法則的にどうなのとか問われると困る。雰囲気でいろいろあるんじゃないかな、続編を所望されたときに考えますがという感じだ。

「望まない妊娠」というのは恐怖の対象である。女性にとっては言うまでもないし、たとえあなたが産む性でないにしろ、家族や親しい人が望まない妊娠をしてしまったら、やっぱり、ドンと大きな石でも飲まされたような憂鬱な気分にはなるだろう。

 ホラーなどで気持ち悪く描かれるにもってこいの普遍性がある。生理的なものなので古典化しても意味がわからなくなったりしないのだ。

 望まない妊娠のうち、邪悪なものを生みだしてしまうかもしれないのはさらに先鋭的な恐怖である。悪魔の申し子を産むとかいう類のもの。「マナティティホラー」などという名前で呼ばれているジャンルだ。女の身としては観るのがツライジャンルというか、気持ち悪い。

 映画「ローズマリーの赤ちゃん」や映画「デモンズ・ベイビー 猛鬼食人胎」はそのものズバリだろう。背中に宿ってしまう映画「マニトウ」などもある。霊的なものに限らず、ミュータントを産んでしまう系のものも多々ある。

 映画「エイリアン」も体内に寄生されていたのが飛び出してくるのは出産のメタファーであろう。ギーガーによるあんな性的デザインなのだから。

あまりに気持ち悪いので、今後、ポリコレ的な流れから表現規制されていきそうな気もするが、

 2000年以上昔に神の子を処女懐妊して、長じてのち過激さゆえに処刑された新興宗教の開祖を産んでしまったマリアという女のエピソードだけは歴史から抹殺されそうにはない。あれも、キリスト者でないと、けっこう気持ち悪い系の話だと思ってしまうのだが…。

 などととりとめもなく考えていた。後で小説の役に立つのだろうか?
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