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冬
頬を伝うは涙雨
しおりを挟む「…あれ」
「どうして…っ」
頬を流れる雫
それは涙だった
「…っ」
涙はポロポロとこぼれ落ちて止まらない
なんで?
なんで?
親友に恋人が出来たんだよ?
二人は今、幸せなんだよ?
嬉しいことなんだよ?
祝福しなきゃ、いけないんだよ?
「……いやだ」
僕は心から喜べなかった
これから幸せになっていく二人を見たくなかった
「いやだ、いやだよ……」
ユミさんが僕から離れていってしまうのも
ユミさんが僕ではない誰かのものになってしまうのも
すごく嫌だった
これは独占欲なのか…?
それとも…
「……わからない」
生まれて初めての感情だった
「こんなの、わからないよ…」
これは恋じゃない…
恋じゃない、はず…
だって
だって…
僕の知っている恋はもっと楽しくて…
その人の顔を見るだけで悩みとか嫌なことなんてすぐ忘れちゃって…
ほんと、毎日が幸せで…
「………っ」
僕はユミさんといる時のことを思い浮かべてまた泣いた
ユミさんと一緒にいるとすごく楽しいんだ
幸せなんだ
落ち着くんだ
安心するんだ
でも、でもね?
すごく、すごく辛いんだ
だってほら、今だってこんなに胸が痛い
呼吸ができないほど苦しい
離れると寂しい
泣きたくなる
涙が止まらなくなる
僕は思わずスマートフォンをぎゅっと握りしめた
寂しくて、胸が痛くて、思わずキミに電話をかけた
そして、一人、名前のない感情に涙した
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