ねぇ…私じゃダメですか?

アイネ

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聞きたくて聞けなかった話

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「リョウー、一緒に帰ろ」


放課後


玄関で佇む俺に声をかけたのはユミだった

ユミは小さく微笑み、俺に駆け寄ってくる


「おう、早くしないと置いてくぞ」

「あ、ちょ、待ってよ」


ユミは俺の前では色んな顔をする

教室ではずっと暗い顔してるくせに


でも、俺にだけは笑ったり泣いたり、色んな顔をするんだ

それが俺は嬉しかった


俺はアイツの笑顔がすごく

すごく好きだった


でも…

今はもう、その笑顔は俺だけのものじゃない


「……」

「リョウ…?」

「あ、ごめん、ぼーっとしてたや」

「…そう?疲れてるなら無理しちゃダメだよ」


俺は「無理なんかしてないよ」って笑った

俺はユミとは違って作り笑顔が上手い


だから誤魔化せる

「好き」って気持ちさえも、俺は誤魔化せるんだ

ずっと、ずっと、誤魔化してきたから



「あ、そうだ、前にさ、新しく友達が出来たって言ったじゃん」

「あー…イズミ?」

「うん」



でも…

今は誤魔化すことがすごく辛い



「今日ね、イズミくんがさ」

「そういえばイズミくんがね」

「イズミくんってね」



あぁ、頭が痛くなる


胸が痛くなる



またその名前か


ウンザリする




「お前さ…イズミの話ばっかりだな」


「そうかな…?」


「うん」


「ずっと」


「ずっとイズミの話してる」


「そりゃ……初めて出来た友達だもん」




じゃあ俺は…?


俺はお前の何なの?




「ユミ…」


「ん?」




「お前さ」




「イズミのこと、好きなの?」




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