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夏
俺の唯一の親友の話
しおりを挟む季節は巡り夏
まぁ、夏の割には風もあってそこそこ涼しい
しかも
隣には好きな人…
あぁ…なんて最高のサボり日和だ…
なんて思いつつ、俺は隣にいる「親友」を見てそっと微笑んだ
もう夏休みになるので、しばらくコイツにも会えないんだなぁと思うと、少し、ほんの少しだけ寂しい気もした
「なぁなぁ」
「んー?」
「最近どーよ」
俺は紙パックのジュースを吸ってるコイツにそう尋ねる
「んー…まぁ…なかなか楽しいよ」
「へぇー」
「なんかいい事でもあったの?」
「……うん」
そういってユミは嬉しそうに微笑む
確かに、最近のユミは楽しそうだ
作り笑顔常習犯のコイツが、作ってない笑顔をたくさんするくらいだもんな…
数ヶ月前まであんな死んだ魚みたいな目をしてたのに何があったって言うんだ…
まさか…
「お前、××と寄り戻したのか?」
「………」
あ、死んだ魚の目になった
「リョウー…それはまだ禁句だよー…」
「わ、わりぃ」
ユミは一途だ
高一で付き合って、高二で別れて…今高三
付き合って一年目の記念日に彼氏の浮気が原因で別れる
という…なんとも辛すぎる別れ方をしている
まぁ、俺的にはそんなやつ別れて正解だって思うけど…
コイツは別れてそこそこ経ってた今も、未だに立ち直っていないみたいだった
まぁ、死んだ魚の目をしなくなっただけよかったかな…
「…」
じゃあ一体何があったんだ?
××と寄り戻したわけじゃないのなら…
「あ、わかった!お前、好きな人が出来たんだろっ」
俺はドヤ顔でそう言うと、ユミは「なわけないじゃん」と小さく笑った
…
まぁ、それもそうか…
あんなトラウマレベルの初恋&失恋したら、恋なんてしたくなくなるもんな…
「好きな人じゃなくてね、私、友達できた」
「おっ!よかったじゃん!どんな子?誰?俺の知ってる子?」
俺は、普通に女友達ができたのだと思った
祝福してやろうと思った
でも…
「イズミくん」
聞きなれない名前と
「くん」付けの名前…
少しだけ、モヤモヤした
…気がした
「ふぅん、ユミにもついに俺以外の男の友達が出来たんだな」
「ん…自分でもびっくりしてる」
「男友達は今までもこれからもリョウだけって思ってたから…なんだか不思議な感じ」
「ふぅん」
俺だけのままならよかったのに
なんて思ったけど、言わない
「嬉しいこと言ってくれるじゃん」
「だってリョウは一番の友達だもん」
友達…か
「ばーか、友達じゃなくて親友だろ」
そう言って俺はユミの頭をわしゃわしゃと撫で回す
「うん!!」
ユミはボサボサになった髪で、照れくさそうにはにかんだ
俺にしか見せない笑顔
この顔が見れるのは俺だけの特権だ
「ねぇ、リョウ」
「ん?」
「これからも親友でいてね?」
「……あったりまえだろ」
そう言うとユミはまた満面の笑みを浮かべた
コイツが笑顔でいられるのなら、これからも親友でいい
お前の唯一になれるならそれでいい
ずっとずっと、そう思ってた
でも…
「………親友……か…」
俺は、いつまで親友を演じればいいんだろうな
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