ねぇ…私じゃダメですか?

アイネ

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イズミくんの話

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「あ、イズミくん」

「あ、ユミさん」


イズミくんは私を見つけると小さく手を振って私に駆け寄る


「また来たんだね」

「ユミさんこそ」

「私はキミと出会う前からいつも来てたよ」

「そっか、じゃあ、今まで出会わなかったのが不思議ですね」


二人して小さく笑い合う



何となく、初めて会ったあの日から、屋上で過ごすことが増えた気がする

お互いに



「ユミさん、今日のお昼ご飯はなんですか?」


そういってイズミくんは私の隣に腰かける


「んー…パン、かなぁ」

「え、ちゃんと食べなきゃですよ?」

「食欲ないんだもん」


私がそう言って頬を膨らますと、イズミくんは私のおでこに軽くデコピンした


「…!?」

「ちゃんと食べないと体に悪いです」


私は思わずおでこを抑えた

痛みはなかった

でも、私は少しだけびっくりした

男の子にこんな風に触れられたことなんて、初めてだった


「はい、これ、僕のお弁当のおかずでよかったら…どうぞ」


そう言って私の口の前に卵焼きを差し出す


「…!」

(こ、これは…いわゆる「あーん」と言うやつでは…)


私が少し躊躇しているとイズミくんが意地悪そうに笑う


「食べないんですか?」

「…食べる」


私は少し照れながらも卵焼きを頬ばった


「ん…おいひい」

「えへへ、よかったです」


そう言ってイズミくんは笑った

きっと、イズミくんにとってこの行為にはなんの意味もなくて、他の友達にもこんな風に接しているんだろうな

なんて思ったりした



…イズミくんは私と違って、普通に友達がいるから



「…あ、そういえばさ、イズミくんはお昼ご飯、今までは教室だったんだよね?」

「え、あ、はい」

「あの、その…いいの?みんなで食べなくて…」

「あー…いいんです」


イズミくんはそういって口篭る

そして下手くそな作り笑顔を私に向けた


「ほらっ、たまには屋上で食べたい気分になりません?」

「…うん、そだね」



私は深くは聞かなかった

自分によく似た作り笑顔に何も言えなかったんだ





きっと、イズミくんにも、何か教室にいずらい理由でもあるのだろう



「…」



でも、触れない

触れちゃいけない



そんな気がした

    
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