〜幸運の愛ガチャ〜

古波蔵くう

文字の大きさ
上 下
6 / 7

〈6〉その後

しおりを挟む
 夕陽荘。俺ら運賀家は運が無くなった。一戸建ての豪邸から安値のボロアパートに引っ越しした。病んだ俺が今更、学校に行けるはずがない。制服は今、制服屋が作ってもらっているが。あのニュースで『貧乏人』と言われるのが、目に見えてしまう。ちなみに、俺の我が家と彼女を火にかけた犯人火野福多ひのふくたは、現住建造物等放火罪げんじゅうけんぞうぶつとうほうかざいで逮捕された。俺の彼女も殺したんだ。重過失致死罪じゅうかしつしちしざいも加えて死刑になればいい。
『随分、落ち込んでいるみたいだね』
機械音声の女声の声が聞こえた。後ろを向くと、ラブポンのガチャポンがいた。
「どこから入った?」
俺は気の抜けた声でに言った。
『RomanceLab(株)が倒産して、彷徨っていたら……あなたを見つけたんだ』
ラブポンは、職を失って行く宛てを探している途中に俺を見かけたみたいだ。
「俺に何の用?」
俺はラブポンに聞く。
『彼女、お亡くなりになりましたよね? もう1回引けますよ? 新硬貨の500円玉を入れてくれればですけど』
「新硬貨どころか、500円すら持ってねぇよ」
俺は財布の中身を見せる。
『持っていないと思いまして……下段のガチャポンをご覧ください』
ラブポンの電子看板が下の矢印を映し出す。
「そういや、ラブポンは上段にあったな」
俺はしゃがみ、下段のガチャポンを見る。
「『硬貨ガチャ 
~1円から500円まで~ 1回100円』安いな……新硬貨が入っているのか?」
俺はラブポンに聞く。
『ちゃんと目を凝らしてご覧になって?』
俺は硬貨ガチャの表紙を隅々まで見ると
『※新硬貨もあり』
と書いてあった。俺は財布から100円硬貨を取り出し、入れてガチャポンハンドルを回す。すると、オレンジ色のカプセルが出てきた。中には新硬貨の500円玉が入っていた。俺は新硬貨の500円玉を入れようとすると
『ちょっと待って』
ラブポンが喋る。
「何?」
俺は首を傾げる。
『このガチャでラストチャンスですよ』
ラブポンは続けて
『私は、このあとスクラップ工場に行って生涯を終えます……しゃちょーも未成年を人身売買していたとして捕まったので』
ラブポンは哲平社長が捕まったことも話した。哲平元社長は未成年の女子高生を拐って、俺のような彼女の出来ない高校生をターゲットにラブポンを使用させていたみたいだ。俺はラブポンに新硬貨の500円玉を入れる。
『あと、私にはもう一つ秘密があってですね』
ラブポンは続けて
『私がラブポンになる前に、前置かれていた場所で事件がありまして亡くなった人の霊魂が宿ったのです……その亡くなった人の願いが「たくさんの人を幸せにする」だったので……』
ラブポンは、哲平元社長が作ったロボットガチャポンではなくて霊魂が宿った喋るガチャポンだった。俺はラブポンのガチャポンハンドルを回す。すると、黒いカプセルが出てくる。
『あなたが、最期のお客様です……唯一無二の彼女とお幸せに』
ラブポンはキャスターを走らせて、後ろへ下がっていく。
『永遠に、さようなら』
ラブポンは、体当たりで扉を開けて出て行った。
「最期に、彼女を引かせてくれてありがとう」
俺は翌日に向かう。そして商品を確認する。商品は藤原結衣だった。
ー完ー
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

熱い風の果てへ

朝陽ゆりね
ライト文芸
沙良は母が遺した絵を求めてエジプトにやってきた。 カルナック神殿で一服中に池に落ちてしまう。 必死で泳いで這い上がるが、なんだか周囲の様子がおかしい。 そこで出会った青年は自らの名をラムセスと名乗る。 まさか―― そのまさかは的中する。 ここは第18王朝末期の古代エジプトだった。 ※本作はすでに販売終了した作品を改稿したものです。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

マキノのカフェ開業奮闘記 ~Café Le Repos~

Repos
ライト文芸
カフェ開業を夢見たマキノが、田舎の古民家を改装して開業する物語。 おいしいご飯がたくさん出てきます。 いろんな人に出会って、気づきがあったり、迷ったり、泣いたり。 助けられたり、恋をしたり。 愛とやさしさののあふれるお話です。 なろうにも投降中

処理中です...