〜幸運の愛ガチャ〜

古波蔵くう

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〈3〉出会い

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 運賀家、ユニットバス。
「どれぐらい入れればいいんだ?」
俺は風呂桶にお湯を入れている。水を張ると言われてもどれぐらい注げばいいのか分からない。一応、水の温度は30度にしてある。
「開けにくい……」
俺はハート型のコルクを開けようとしたが、形が歪なだけあってうまく開かない。
「……コクル抜きって家にあったか?」
俺は台所の調理器具入れを漁る。すると、運良くコクル抜きがあった。
「そういや、名前書いてねえや」
俺は、表面の空白欄に『彼女に呼ばれたい名前』を書き忘れていた。俺は筆箱から黒ではない色の油性ペンを出し、名前を書く。
「俺は『まこと』と呼ぶから『マコくん』にするか」
俺は空白に『マコくん』と書く。そして、コクル抜きでハートのコクルを抜く。
「どんな可愛い彼女ができるのかな?」
俺は瓶を逆さまにして、ピンク色の液体を風呂桶に入れる。
「着せる服は、俺の中学頃のジャージでいいだろ……母の服を着せるわけにはいかねぇし」
俺は適当な箱を持ってきて、その上にジャージを置いた。俺はユニットバスを出て、ベッドに潜った。
 午前3時。俺は尿意を感じ、ユニットバスにある便座に腰を下ろす。丁度用を済ませると
ーーバッシャーン!
と。風呂桶の水が溢れる音がした。風呂桶のカーテンは閉めているため外へは溢れない。
「空き巣か? でも、ここに窓はねぇし……下水栓からは入れねぇし」
俺は護身用としてゴキジェットを持って、風呂桶のカーテンに手を掛ける。
「アキスゥ……カクゴシロォ……」
俺は恐怖心で声が震えていて、足も震えていた。もし、空き巣だったらゴキジェットを目を失明させてやる。俺はゴキジェットを構えて、カーテンを開けると全裸で長い髪の女の子が入っていた。俺はビックリして、ゴキジェットが手からずり落ちた。
「ここは、どこ?」
女の子が周囲を見渡す。
「記憶喪失?」
俺が声を発すると、女の子は俺と自分の姿を3度見ぐらいして察したのか……俺にあの未来の猫型ロボットが出てくるアニメの女の子みたいに大量の水をかけて出ていった。
「ゲホッ! ゲホッ! 不織布マスクを通り抜けるほどの水圧なんだけど?」
俺は全身びしょ濡れになった。2020年以降、マスクが必須になったため、マスクが無いと違和感を感じるようになった。その不織布マスクもびしょ濡れになった。
「一応、体を拭いて、髪を乾かして、着替えて、ウレタンマスクするか」
俺は今言ったことを実行に移した。これを有言実行という。俺はユニットバスを出るとき、箱にジャージが無いことに気付いた。
 寝室。水の足跡も玄関も開けられた形跡が無いのに、女の子の姿は無かった。俺はウレタンマスクをするために、引き出しを開けると、空の瓶を発見した。ハート型のコクルも。
「さっきの女の子は、このラブポンの商品だったの!」
俺はせっかく手に入れた彼女を見失ってしまった。俺は裏面のQRコードをスキャンして、あの女の子の生い立ちを見た。女の子の名は藤原結衣ふじわらゆいと言い、イルカが好きだと分かった。イルカの鳴き声があると、その場へ行けるらしい。
 翌日、放課後。緑葉りょくよう高等学校近くの自販機。俺は自販機で炭酸飲料を買おうと小銭を入れてボタンを押そうとすると
「あの……」
声を掛けられた。振り向くと、昨日リットル単位の水をかけた女の子がいた俺の名前の入ったジャージを着ている。泥や土でかなり汚れている。
ーーピッ!
俺はよそ見していて、炭酸飲料ではなくブラックコーヒーを買ってしまった。俺はそれを知らず、手に取ってしまう。
「昨日の?」
俺は確認する。
「昨日はごめんなさい!」
女の子は謝る。たぶん、リットル単位の水を掛けたことだろう。
「別に気にしていないよ」
俺は缶を開けて飲む。すると、すごく苦味を感じる。俺はそこでブラックコーヒーだと気付いた。俺はブラックコーヒーをゴミ箱近くに置いて、再び自販機で炭酸飲料を買う。
「名前は?」
俺は名前を聞いた。藤原なんだろうけど。
「藤原結衣です……」
案の定、ラブポンの商品だった女の子だ。藤原は、裸足で茶色に汚れた俺の名前の刺繍が入ったジャージ姿だ。たぶん今、ノーブラノーパンなんだろう。
「帰るところある?」
俺は缶の炭酸飲料を開けて、口直しをする。やはり、炭酸飲料は美味い。
「ない……」
藤原は『ない』と答える。
「俺の家に居候する?」
俺は藤原を居候するか提案する。
「住まわせて下さい……」
藤原はたぶん、賛成したのだろう。
「分かった」
 運賀家、裏口。俺は脚立を持ってきて、藤原を2階まで行かせた。そして、押し入れに布団なんかを敷く。親にバレたらやばいから。俺はガチャで引いた彼女、藤原半同棲する生活が始まった。
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