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4.美咲の家族との再会:『特別な約束』
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桜井家。
ーーピンポーン♪
インターホンがなる。
「どちら様ですか?」
女性の声が聞こえてきた。美咲の母親だろうか。俺は美咲に身体を委ねた。
「お母さん……この声に聞き覚えある?」
美咲がそう語りかけると、すぐに扉が開いた。俺は今、姿も美咲になっている。
「美咲! 今までどこにいたの!」
美咲の母親は、身体が俺だと知らずに抱き締める。
「おかえりなさい……美咲、入って」
美咲に身体を貸している俺は、家に上がった。
「お父さん! 美咲が帰ってきたよ!」
美咲の母親が、父親を呼ぶ。
「美咲! いつぶりだ? 数年ぶりか?」
父親も俺だと知らずに抱きしめる。
桜井家、リビング。
「美咲……交通事故に遭って亡くなったって知ってショックだったわー」
母親は、目から鱗みたいに涙が出ている。
「うん……でも亡くなったのは、ホントだよ」
美咲がそう言うと、母親も父親も目を丸くした。
「え? どういうことだい?」
美咲の父親が聞く。
「実は、私が今こうして姿見えているのも仮の人格に憑依しているから……今は、健太さんの身体を借りて話しているの」
美咲は父親と母親に、説明した。
「じゃあ、ちょっと健太さんとお話ししたいから身体を返してもらえる?」
母親が提案する。
「分かった……」
美咲は俺に身体を返す。俺は目を覚ます。
「え? ここは……」
俺が美咲だった頃の記憶はない。
「初めまして、健太さん……私は美咲の母親です」
美咲の母親が俺に挨拶する。
「同じく、美咲の父親です」
父親も挨拶する。
「あ、はい! 本日はお話があって足を運びにきました」
俺は父親と母親に会釈する。
「お話しとは?」
母親が尋ねる。
「実は、美咲さん? が、成仏できなくて困っていましてね……そして話したところ、家族の約束を果たさないと成仏できないということで隣町からわざわざ訪れてきました」
俺は事の経緯を説明した。
「確かに、この約束はその日……行う予定だった」
父親の表情が険しくなる。
「だが、それは他所の人が参加させるわけには行かない」
父親が言う。確かに、赤の他人である俺に憑依しても。となる。
「では、俺は目隠しと耳栓をして沈黙しときます……そして身体を美咲にお貸しします……それでよろしいですか?」
俺は提案した。
「美咲と身体から離すことはできないのですか?」
母親が問いかける。
「可能ですけど、ぬいぐるみとか手足のあるものだったら憑依させることは可能だと思いますけど」
俺が答えを出すが、難しいところだ。ちゃんと人間の形をしたものじゃないといけない気がする。
「人形もぬいぐるみも無いし、仕方がない……では、健太さん目隠しと耳栓と沈黙をお願いします」
父親がアイマスクと耳栓を用意してくれた。
「ありがとうございます」
俺はアイマスクで目を覆い、耳栓で音が聞こえなくした。そして口を閉ざす。そして、身体を美咲に貸した。
「じゃあ、始めるか」
美咲の父親と母親はリビングを後にする。美咲も部屋を出る。
古びた時計台。
「この時計台には、ある指定の時間になるとベルがなる……そのベルと同時にここに集まって、家族の絆を再認識することが美咲との約束だ」
美咲の父親は、俺に説明しているのだが俺にはその声は到底聞こえない。
「お父さん……健太さんに説明しても今、耳栓しているから聞こえないと思うよ?」
美咲が指摘してくれた。いい娘に育ったなと親が思うだろう。
「もうそろそろ、指定の時間だな……みんな自室に行こう」
どうやら、自室からこの時計台の前まで走るっぽい。
指定の時間。
ーーゴーン、ゴーン、ゴーン
とても低いベルの音だ。すると、ダダダッ!と言う走る音が微かに聞こえた。
「みんな同じ時間に到着! 家族の絆を再認識できた!」
父親が母親と身体を貸した美咲を抱き上げる。俺は思ってしまう。
《この約束は、必要か?》
と。まあ、赤の他人である俺が口出しする権利なんてないと思う。
ーーピンポーン♪
インターホンがなる。
「どちら様ですか?」
女性の声が聞こえてきた。美咲の母親だろうか。俺は美咲に身体を委ねた。
「お母さん……この声に聞き覚えある?」
美咲がそう語りかけると、すぐに扉が開いた。俺は今、姿も美咲になっている。
「美咲! 今までどこにいたの!」
美咲の母親は、身体が俺だと知らずに抱き締める。
「おかえりなさい……美咲、入って」
美咲に身体を貸している俺は、家に上がった。
「お父さん! 美咲が帰ってきたよ!」
美咲の母親が、父親を呼ぶ。
「美咲! いつぶりだ? 数年ぶりか?」
父親も俺だと知らずに抱きしめる。
桜井家、リビング。
「美咲……交通事故に遭って亡くなったって知ってショックだったわー」
母親は、目から鱗みたいに涙が出ている。
「うん……でも亡くなったのは、ホントだよ」
美咲がそう言うと、母親も父親も目を丸くした。
「え? どういうことだい?」
美咲の父親が聞く。
「実は、私が今こうして姿見えているのも仮の人格に憑依しているから……今は、健太さんの身体を借りて話しているの」
美咲は父親と母親に、説明した。
「じゃあ、ちょっと健太さんとお話ししたいから身体を返してもらえる?」
母親が提案する。
「分かった……」
美咲は俺に身体を返す。俺は目を覚ます。
「え? ここは……」
俺が美咲だった頃の記憶はない。
「初めまして、健太さん……私は美咲の母親です」
美咲の母親が俺に挨拶する。
「同じく、美咲の父親です」
父親も挨拶する。
「あ、はい! 本日はお話があって足を運びにきました」
俺は父親と母親に会釈する。
「お話しとは?」
母親が尋ねる。
「実は、美咲さん? が、成仏できなくて困っていましてね……そして話したところ、家族の約束を果たさないと成仏できないということで隣町からわざわざ訪れてきました」
俺は事の経緯を説明した。
「確かに、この約束はその日……行う予定だった」
父親の表情が険しくなる。
「だが、それは他所の人が参加させるわけには行かない」
父親が言う。確かに、赤の他人である俺に憑依しても。となる。
「では、俺は目隠しと耳栓をして沈黙しときます……そして身体を美咲にお貸しします……それでよろしいですか?」
俺は提案した。
「美咲と身体から離すことはできないのですか?」
母親が問いかける。
「可能ですけど、ぬいぐるみとか手足のあるものだったら憑依させることは可能だと思いますけど」
俺が答えを出すが、難しいところだ。ちゃんと人間の形をしたものじゃないといけない気がする。
「人形もぬいぐるみも無いし、仕方がない……では、健太さん目隠しと耳栓と沈黙をお願いします」
父親がアイマスクと耳栓を用意してくれた。
「ありがとうございます」
俺はアイマスクで目を覆い、耳栓で音が聞こえなくした。そして口を閉ざす。そして、身体を美咲に貸した。
「じゃあ、始めるか」
美咲の父親と母親はリビングを後にする。美咲も部屋を出る。
古びた時計台。
「この時計台には、ある指定の時間になるとベルがなる……そのベルと同時にここに集まって、家族の絆を再認識することが美咲との約束だ」
美咲の父親は、俺に説明しているのだが俺にはその声は到底聞こえない。
「お父さん……健太さんに説明しても今、耳栓しているから聞こえないと思うよ?」
美咲が指摘してくれた。いい娘に育ったなと親が思うだろう。
「もうそろそろ、指定の時間だな……みんな自室に行こう」
どうやら、自室からこの時計台の前まで走るっぽい。
指定の時間。
ーーゴーン、ゴーン、ゴーン
とても低いベルの音だ。すると、ダダダッ!と言う走る音が微かに聞こえた。
「みんな同じ時間に到着! 家族の絆を再認識できた!」
父親が母親と身体を貸した美咲を抱き上げる。俺は思ってしまう。
《この約束は、必要か?》
と。まあ、赤の他人である俺が口出しする権利なんてないと思う。
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