〜Years Of Love〜

古波蔵くう

文字の大きさ
上 下
7 / 13
Episode.2

ペンション

しおりを挟む
 秋休み終了まで残り3日。今日は、1組限定でペンションの前日だ。クラスメイトの親睦を深めるために担任が企画してくれた。私は遠足の時と同じ人に、新しい人を加えて班を組みなぜだかリーダーに任命された。班を組んだら、買い出しをし……リーダーである私が食材を管理する。ちなみに、1組のペンションには携帯やスマホは持ち込み可。私達は今、買い出し中。
「えーっと、焼きそば用の麺とレタスと……玉ねぎと後1つなんだっけ?」
慶子がリストの1食材を忘れたらしい。
「まぁ、友希なら知ってるんじゃない?」
泰絵が私の肩を叩く。
「ねぇ? 友希、教えてよ」
慶子が聞く。
《えーっと、何だっけ……あ! あれだ!》
私は肉コーナーを指差す。
「ソーセージだよ!」
私は慶子に答える。
「そうだよね!」
泰絵は食材が分かった瞬間、店内を走る。
「泰絵! 店内は走らないで!」
私は泰絵に忠告したが、聞く耳は持っていなかった。後、ソーセージは食材のリストには入ってなかった。
 10数分後。
「4点、合計で3800円になります」
私はお金(担任の自腹)を出すと同時に
「領収書をお願いします」
と言った。担任から領収書を取るよう、指示されたから。
「お名前を聞いても、宜しいでしょうか?」
店員がボールペンを持つ。
「松本友希です。友希は友情の『友』に希望の『希』です」
私は名前と漢字を店員に伝えた。私は領収書を貰うと
「「「じゃあ、食材管理よろしくね!」」」
4人は、私にそう伝え帰って行った。
《重い……乙女にはハードだよ……》
私は登下校路を何回か休んで家に着いた。
 翌日。私はリュックに必要最低限の物(iPad、ガラケーを含む)を入れて私服で中学校へ向かった。学校車のマイクロバスには、既に何人かのクラスメイトが乗車していた。私は大型の学校車に乗車する。数分後、香澄と慶子が来て……2人で新型のカードゲームをしていた。私は、ガラケーをWi-Fiにデザリングして、iPadの動画配信視聴アプリで……2.5次元の動画クリエイターが投稿している動画を鑑賞していた。
 数十分後。学校車が動き出した。私は窓側の席で、隣には泰絵が座った。どうやら、私は泰絵の保護者扱いになっていた。私は学校車で走行中、動画鑑賞していたが目が疲れて寝てしまった。再び目を覚ますと、後数分で宿泊先に着く所だった。何時間寝てたんだろうか。学校車ではまだ明るかった。1組全員が小売店の建物の前で待機した。今回の宿泊先はフリーWi-Fiが使えるみたいだ。私の通う中学校は男子より女子が数人多く、女子は3部屋が繋がったワンルームで1泊する。男子は1部屋だけで足りたみたい。
 深夜。私はBBQや焼きそばを食べて、入浴して寝る時間だった。男子は数人が騒いでいる。私達の女子も静かだがオールしている。私は隣の部屋から小さなボールを投げる優莉と冬夏にイライラして、部屋から飛び出した。何回も私にぶつけやがって。私は水位の変わる湖に行って星空を眺めていた。
《もし、私にボーイフレンドが居たら、1段と綺麗に見えたんだろうなぁ》
などと、思っていた。すると、思わぬ人が私のところに来ていた。
「イテッ!」
突然、男子の声がした。だが、その声は聞き覚えのあった。親の声よりも聞いた声だ。私は懐中電灯の光で照らすと、岡本くんだった。
「岡本くん!」
私は吃驚した。岡本くんがこんな時間になんで私のところに来たんだ。
「あ? 誰だ?」
岡本くんは、スマホのライトを私に向けた。
「松本か……」
岡本くんは、私の隣に座る。私は岡本くんが、左手の手首を抑えているのに気付く。
「左手、どうかした?」
私は岡本くんに聞いてみた。私はまだ岡本くんを友達以上恋人未満の関係だった。
「滑って怪我した……」
岡本くんは私の方を見ずに答えた。
「怪我! 大丈夫?」
私は怪我した彼が心配だった。
「大した傷じゃない……」
私は岡本くんの左手にライトをあてる。すると、止血はしていたが出血していた。
「出血してるじゃん!」
私は吃驚して、偶々持っていた天然水をかけようとすると、
「いいよ! こんな傷、唾つければ治る」
岡本くんは、すごく痛そうな顔をしている。
「絆創膏とか持ってない?」
岡本くんは、傷が風に触れて痛みが伝わるのが耐えられなかった。私が初めて、岡本くんの弱さを知った。
私は岡本くんの左手首に絆創膏を貼った。念の為に持っていた。
「これで終わり……」
私が言うと
「まだだ……」
岡本くんは、私に顔を近付けて唇を重ね合わせた。
「……」
私は一瞬、何が起こったのか分からず沈黙していた。
《この感覚って……あの運動会の……》
岡本くんは、私の意識が戻ったのを確認して
「郁江とは別れた」
と言った。
「くだらないかもだけど、話すよ」
《運動会終了後。
「どうした? 郁江……」
郁江は、岡本くんに話があったみたいだった。
「私達……別れましょう」
郁江は岡本くんに別れを告げる。
「あっそう!」
岡本くんは易々と別れることを了承した。
「私、2組のアンカーと付き合う!」
郁江は次の相手を岡本くんに告げた。
「あっそう!」
岡本くんは『あっそう!』しか答えてなかった》
 現在。
「そんな感じで、別れた……郁江、俺の誕生日すら覚えてくれなかった」
岡本くんは続けて
「俺の誕生日を祝ってくれない彼女なんて、彼女じゃない」
と。言った。私は返す言葉が見つからず、ただ沈黙していた。嫌なことは吐き出した方がスッキリする。私はその話を聞き役でも良かったのかもしれない。
「でさ、松本……」
岡本くんが話題を変える。
「何? 岡本くん……」
私は岡本くんにライトをあてる。彼は今、耳が赤くなっている。
「俺の誕生日の日……つまり中間考査1日目に告ったろ? あの返事OKだ……」
私は『告ったろ?』の後の言葉が聞こえなかった。
「え?」
私は首を傾げる。すると、岡本くんは私の両肩を掴み顔を下に向け
「まつも……いや、友希! 俺と付き合ってくれ!」
と。告白された。
「お、岡本くん? なんでいきなり告白なんて……」
私が問いかけると
「友希だって、俺のこと何も知らずに告ったじゃん……おあいこさ……」
私も2年前に同じことをした。
「俺さ……郁江と別れたことはそれほどショックじゃなかった……でも、孤独感があったんだ……それで、小学校の頃思い出したら松本とちゃんと話したことなかったなと思って……特に、友希が楽しそうに笑う笑顔が可愛い」
岡本くんは、私を好きになったということは伝わった。ただそれを言語化するのが難しいのだと分かる。
「だから、俺と付き合ってくれ!」
岡本くんは、頭から蒸気が出るほど赤面していた。
「OKだけど、一つ聞いていい?」
私は岡本くんにキスされた感触が似た日があったことを聞こうとした。
「な、なんだよ……」
岡本くんが返答する。
「岡本くんって……さっき以外に私にキスしたことある?」
私が聞いてみると
「あぁ……あるよ、運動会の組体操の後な」
岡本くんは白状する。
「なんで、私にキスしたの!?」
私が吃驚し怒鳴ってしまった。
「友希が、目開けたまま寝てると思ってたし……郁江と別れたつもりだったから」
岡本くんは続けて
「あと、郁江今ごろ……苦労してるんじゃね? 2組のアンカー……束縛体質だから」
岡本くんは元カノの現状も把握済みらしい。
「あとさぁ、友希は俺の事『岡本くん』じゃなくて『みっつー』と呼んでくれない?」
彼は私にあだ名を教えてくれた。
「じゃあ、私の名前も呼びやすくしてよ……みっつー」
私はみっつーと呼んだ。
「友希だから……『ゆっきー』は?」
みっつーは私にゆっきーというあだ名を付けてくれた。
「じゃあ、これから宜しくな! ゆっきー!」
みっつーが手を差し伸べる。
「こちらこそ、宜しくね! みっつー!」
こうして、私は岡本くんことみっつーと付き合うことができた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん
恋愛
 こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非! *らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。

如月さんは なびかない。~クラスで一番の美少女に、何故か告白された件~

八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」  ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。  蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。  これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。  一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

会社の後輩が諦めてくれません

碧井夢夏
恋愛
満員電車で助けた就活生が会社まで追いかけてきた。 彼女、赤堀結は恩返しをするために入社した鶴だと言った。 亀じゃなくて良かったな・・ と思ったのは、松味食品の営業部エース、茶谷吾郎。 結は吾郎が何度振っても諦めない。 むしろ、変に条件を出してくる。 誰に対しても失礼な男と、彼のことが大好きな彼女のラブコメディ。

傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。

石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。 そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。 新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。 初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、別サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...