〜輝く絆〜

古波蔵くう

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chapter.4"告白と拒絶"

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 ゴールデンウィークが終わって、一気に6月下旬になった。今日は、大翔はテスト勉強をするため図書室に籠っていた。俺は家の中が集中できるため、帰宅する。
「期末試験まで、後3日……」
俺は期末試験までの日をカウントしていた。試験範囲は確認済み。後は、暗記と5回ぐらい解き直す。
 期末試験から5日後。今日は待ちに待った期末試験の返却日。返却される前、男子生徒はある作戦を立てていた。
「結城より、成績高いやつ告れ!」
と。そして、
「あぁ、成績低いやつは隣のクラスにいる高橋たかはしに告れな!」
という、作戦。高橋とは隣のクラスにいる大人しい高橋美緒たかはしみお。美咲とよく間違わられるため、男子生徒たちは高橋と呼んでいる。そして、その作戦に大翔は巻き込まれた。
 試験返却時。
「田中……」
担任が俺を呼ぶ。俺は席を立ち、点数を確認する。
「78点……かなり良い点だ!」
俺は小声で喜んだ。すると、後ろから男子生徒が俺の答案用紙を奪う。
「結城78点だぜ?」
男子生徒が大々的に点数を発表する。
「78! 俺負けたわー」

「くそ! 後1点だったのに!」
と。騒いでいる。だが、大翔だけは騒いでいなかった。
「大翔は何点なの?」
俺は騒いでいる動物化の男子生徒たちに言った。
「大翔36点だぜ? 大翔は後で美緒に告れな!」
大翔は返答しなかった。
「おい! 78同じく取ったやつ居ねぇのか?」
男子生徒が叫ぶ。すると、隣のクラスでも試験返却だったみたい。しかも、同じ科目。
「海斗! 86点! スゲェ!」
海斗の得点が聞こえた。
「海斗は後で、結城に告れな!」
隣のクラスの男子生徒も同じ計画を企んでいた。
《この学校の男子生徒は馬鹿しか居ねぇのか?》
俺は男子という生物が分からなくなった。
 放課後。俺は海斗と共に、外階段の踊り場に追い出された。
「告白するまで、ここから動くな!」
と。忠告された。大翔と美緒は、空き教室で告白するらしい。
「あの……海斗?」
俺は海斗の顔を見るが、海斗は口を開かない。俺がしばらく海斗を見ていると
「結城……」
海斗が口を開いた。俺は首を傾げる。
「ごめんな……こんな馬鹿な遊びに巻き込まれて」
海斗が一歩一歩近づく。
「な、なんで近付いて来るの?」
俺は海斗が謝っているのが分かるが、なぜ近付いて来るのか分からない。
「俺、結城を異性として見れないんだ」
海斗は俺の制服のネクタイを掴み、無理矢理顔を近付ける。
「だから、結城と付き合う事はできない……ごめんな」
海斗は再び謝る、
「だ、大丈夫だよ……俺は気にしてないし……あと、俺……心は男だし」
俺はもう自分の事を話すことにした。自分のジェンダー・アイデンティティを。
「それって……どういう……」
海斗は分かってないみたいだ。俺は海斗に人差し指を口に当てる。これは『静かにして』という意味だ。
「俺、実はトランスジェンダーなんだ」
俺は海斗にトランスジェンダーだとバラした。
「そうだったの⁉︎」
海斗は驚いた。
「そう……大翔も俺の性別を逆にしたようなものだよ」
俺は海斗にそう言うと
「まぁ、結城は入学当初から男っぽい口調で一人称俺だったし……大翔も一人称私で、女っぽい口調だったしな」
海斗も薄々おかしいと思っていたらしい。
「でも、トランスジェンダーと知っても決して俺や大翔のことを嫌いにならないで欲しい……それは本当のこと」
俺が海斗に言うと
「嫌いになったりしないさ……そんなことしたら、差別じゃん」
海斗はこれからも友達で居てくれることになった。
「あと、結城……」
海斗が何か言いたげだった。
「何?」
俺は首を傾げる。
「俺、今……美緒が好きなんだ……」
海斗は今、大翔に告白されている美緒に恋をしていた。その一方、大翔達は
「大翔くん? いきなり連れて来られたけど何か用なの?」
美緒が首を傾げる。
「うん……美緒、私と付き合ってください!」
大翔は手を差し出す。もちろん、そんな言葉言いたくないから耳の方まで頬が赤くなっている。
「えっと……どう返事すれば良いのかな?」
美緒は返事に悩んでいる。
《『はい』か『いいえ』か早く答えてよ! 顔を上げれないよ!》
大翔は後頭部から水蒸気のような煙が出始めていた。
「あの……大翔くん? 1回顔あげてくれないかな?」
美緒が提案する。大翔は顔を上げる。顔は真っ赤っかだ。
「まず、大翔くんのジェンダー・アイデンティティを教えてくれるかな?」
美緒は大翔がLGBTQのどれに該当するのか知りたいみたいだ。その時、俺と海斗は隠れて、2人の会話を聞いていた。
「私、トランスジェンダーです」
大翔は答えた。美緒の回答は
「そんなんだ……実は、私なの!」
美緒は自分はバイセクシャルだとバラした。つまり、大翔の身体的性でも性自認どちらでも良いわけだ。
「まぁ……大翔くんの事あまりよく分かってないから付き合うのはまだ先になるかもだけど……」
美緒は頭をかく。
「でも、私と付き合っても明るい未来は見えないかもしれないよ……私だって、この学校に入ってからはイジメは減ったけど……幼少期からイジメは受けて来た……もし、社会に出ても私の事を『変だ』『女みてぇ』とか差別する人がいるかもしれない……美緒に同じ苦しみを味わえさせたくないんだ」
大翔は俺と小学校を卒業後もイジメに遭っていたんだ。
「でも、君なら男性でも女性でも良い人に巡り会えるよ……私は応援する……」
大翔は美緒の未来を応援してくれる。こんな良い人は多分大翔以外は居ないと思う。
「その良い人なら、すぐそばに居るよ……」
俺が海斗と共に、教室に入り海斗の背中を押す。
「え……それって……」
美緒が海斗を見つめる。
「そう……海斗、今思いを伝えなくちゃ!」
海斗はビクビクしている。そして重い口を開く。
「美緒……まだ君の事はよく知らないし俺の事もよく知らないかもしれない……だけど、これからお互いの事を知っていきたいから……友達から始めてくれませんか? 付き合ってください!」
海斗は手を差し出す。美緒はその手を両手で握ってくれた。
「はい! 海斗くん、よろしくね!」
美緒はOKしてくれた。
「マジ! やったぁ!」
海斗は大喜びしていた。これから、幸せの日々を迎える2人を支えていこうと思う。
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