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第1章:過去の影

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 私の名前は星崎輝ほしざきひかり。私はADHDという発達障碍を持っている。なぜ、私が発達障碍を持ったのか。それは、私の記憶にない父親が原因だった。
 輝が生まれる1ヶ月前。私の母愛子あいこが妊娠9ヶ月だった頃、父親はDVをしていた。
「こんな飯食えるか!」
と言い、ちゃぶ台をひっくり返したり
「テメェ見てたら酒が不味くなる!」
と言って、愛子(母)の頭にビールを掛けたり。窓ガラスを拳で割ったりした。挙げ句の果てに
「動けねぇなら、痩せろ! このデブ!」
と。妊娠していることさえ、分かっていなかった。そして、そのまま家から出て行き帰ってこなかった。それで、私は父親を見たことがない。
 幼稚園。私が発達障碍を持っているのを知ったのは、6歳の頃。
「愛子さん……」
医者が母親を呼ぶ。
「愛子さん……お宅の娘さんですが……ADHD、注意欠如・多動性障碍を持っています」
医者が母親に告げる。私はこの日、検診を受けていた。
「健康な子どもが欲しかったのに……」
母親の表情が曇る。
「娘さんを進学させる際には、特別支援学級を勧めます」
医者は、そう言って診断書を渡した。
 星崎家。私と母親は家に帰った。すると、母親は私に冷たい表情で見て
「全てお前のせいだ。私のストレスは全部お前のせいだ」
と。罵倒した。
「私だって普通の子ーー」
私が喋り出すと
「うるさい!」
と。また罵倒する。この日を境に、母親は毒親化していった。私が声を発するだけで
「うるさい!」
と。言う。どれだけ小さい声でも
 小学校特別支援学級。私の通う特別支援学級には教室の隅に畳場があり、透明な箱に玩具がある。そして国語と算数以外は基本、通常学級と同じ授業を受ける。特別支援学級には田中真理子たなかまりこ先生が担任をしていた。真理子先生は、とても優しくて私含め一人一人に勉強のサポートをしていた。私は
《真理子先生が母親だったら……》
と。考えるようになった。
 星崎家。私が家に帰ると、母親が怖い表情で体操着の袋を持っていた。
「アンタ、今日体育あったでしょう……なのに、なんで体操着忘れるの!?」
と。怒鳴る。私は発言権がないため喋れない。
「次忘れ物したらランドセルにGPSつけるから!」
と。言われた。ADHDの障碍は忘れ物やケアレスミスが多い。けど、努力して治るようなものでもない。家は私にとって地獄のような場所だった。生きている心地がしない。けど、逃げれる場所なんて無かった。ランドセルにはGPSやICレコーダーまで付けられた。24時間365日母親に監視され続けられた。これは過保護ではなく束縛だ。私は母親の監視下に耐えながら小学校時代を終えた。
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