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ケモノはシーツの上で啼く Ⅱ

11.欲情

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 どれほど激しくしても、斎賀は決して嬌声を上げはしなかった。

 快楽に溺れればインバスに屈したと考えているのか、決して声を出すものかと頑なに両手で口を塞ぎ続けた。

 それでも時折漏れてくる淫らな吐息と声は、たまらなくいやらしかった。

 呼吸がしづらく息も絶え絶えな様子で、時折息を乱す。そんな頑固な様子は、強がっているようでいじらしく、余計にそそられた。
 それは、弱った獲物を前にした時の、ハンターの高揚感にも似ていた。

 いつも冷静な斎賀が、こんなにも体を火照らせるなんて知らなかった。
 落ち着き払った姿しか見せないのに、こんなに乱れるなんて知らなかった。
 普段の凛とした佇まいと、こんなにも違いがあるなんて思いもしなかった。

「……くっ、ん……っん」
 柴尾を締め付け、斎賀が達した。

「斎賀様……っ」
 自身を引き抜くと、柴尾は斎賀の体を裏返した。
 無理矢理体を曲げる慣れない体勢では、斎賀も辛い。今度は後ろから攻めることにした。

 斎賀は息を乱しながら、くったりと身を崩す。もう何度も達しているせいで、見るからに体力を消耗している。
 シーツに身を委ねてしまいそうな斎賀の腰を掴み持ち上げると、腰を高く掲げた状態で柴尾は再び斎賀の奥へと穿った。双丘を隠す銀の尾は、手触りを確かめるように撫でた。

「……っ」
 体の位置が変わったことで、突かれる場所も変化する。斎賀はシーツに顔を埋め、声を押し殺した。

 長い銀の髪が肩から落ち、斎賀の顔を隠す。
 顔を見たくて、柴尾は手を伸ばし斎賀の髪を横に流した。首筋をすっと指が掠める。

 斎賀は少し振り向くと、まるで悔しそうに強い視線を向けた。
「……っ。んっ……」

 耐えるように細い肩を震わせる斎賀を見ると、湧き上がる愛欲を抑えられない。

 普段気丈な姿しか見ていないせいで、こんなふうに弱々しく体を震わせる斎賀を見ると、大事にしたいという愛しさと、貪りたいという男としての欲望が込み上げてくる。

「も……、いい……っ」

 シーツに顔を埋めていた斎賀が、少し顔を上げて柴尾を振り返った。柴尾は動きを止めた。

「インバスは……治まった……っ。もう、終われ……っ」
 息を乱しながら、斎賀は言い切る。

 柴尾は斎賀の中に自身を埋めたまま、その綺麗な背中に口付けた。

「そんなわけないでしょう。まだ熱くて仕方がないくせに。ここまでしたんだから、出し切りましょう」

 優しく諭した。
 だが、何度も達している斎賀にはさぞかし酷な話だ。

 斎賀は落胆したような表情を浮かべると、背中を震わせた。

「柴…尾……」

 切なく名を呼ばれ、体が疼いた。
 後ろから貫きながら前を愛撫すると、斎賀はぽたぽたと柴尾の指を濡らした。それはまるで、快楽に疲れ果て流した涙のようでもあった。

 そして、斎賀は結局最後まで、快楽に溺れることなく、声を上げないという意思を貫いた。
 こんな状況であっても快楽に溺れ切らず自我を保つ精神力は、さすが斎賀だと思った。
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