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20.生徒会室①
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「―――…」
伊沢はぽかんと口を開け大樹を見返す。
正体を告げられ、さらに告白までされるという事態に、頭が混乱しているようだ。
伊沢は左手で額を抑えた。
「え? ちょっと待て……。意味が分からない。何を言ってるんだ」
思っていた反応と違う。
てっきり、あんなことをしておいてふざけるなと、怒られることも覚悟していたのに。
「あんたが好きです。好きになりました。できたら付き合って欲しいです」
お世辞にも、少女漫画のようなときめくような場面ではなかった。数多くの告白シーンを読んできたはずなのに、まったく参考になっていない。
人生初の告白に緊張したのと照れ隠しで、少しぶっきらぼうにさえなってしまった。
「………」
伊沢は穴が開きそうなほど大樹を見つめていたが、脱力したようにぽすんとパイプ椅子に座り大樹を見上げた。
「お前、変な奴だな……」
意味が分からず、今度は大樹の方が首を傾げる番だ。
「俺のあんなとんでもない姿を見てるくせに、よくそんなこと思うな。おかしな奴だ」
「……変だのおかしいだの、あんたに言われなくないんですけど」
大樹が文句を言うと、伊沢は自嘲するような笑みを浮かべた。
「確かにな」
自分がおかしいという自覚はあるらしい。
返事を待って座る伊沢を見下ろしていると、ドアがノックされる音がした。
ここは関係者以外は立ち入り禁止だ。大樹は咄嗟に長机の陰にしゃがんだ。
「おう。お疲れさん」
「先生」
ドアを開けた教師に、伊沢がパイプ椅子から立ち上がる。
「さっき帰る奴らと会ってな。まだ伊沢が残ってると聞いたから」
「あ、はい。もう少し」
さっきまでの伊沢と違い、引き締まった雰囲気になる。
大樹が最初にときめいた、カッコ良くて優秀な生徒会長の姿だ。
こんな至近距離で見られるなんてラッキーだ。隣にしゃがみながら、大樹は胸をときめかせた。
コの字型に折りたたみ式の長机が配置されている為、近くまで来られなければ大樹の姿は見えないはずだが、教師が近付いてきた時の為に大樹は伊沢が使っている机の下へと移動した。しゃがみながら伊沢の正面の位置に移動する。
「頑張るのもほどほどにな。まだ時間かかりそうか?」
「いえ。あと三十分もすれば帰る…なっ」
突然変な語尾のついた伊沢に教師が変な顔をしたのか、何でもありませんと伊沢が慌てる。
伊沢が変な声を出したのは、大樹が伊沢のズボンのベルトに手をかけたからだ。
何となく目の前にあったので、触り慣れた股間を触ろうと考えてしまった。パソコンのモニターがあるため教師からは見えないだろうと、ベルトまで外し始める。
「あと三十分もすれば、帰ります…」
伊沢が教師に言い直した。動揺がうっすら声に出ているが、教師は気付いていない。
「そうか。週明けでも大丈夫なものなら、来週に回せよ」
「はい。そうします」
教師がこちらには近付いてこなさそうなので、調子に乗って大樹は伊沢のズボンを膝まで下ろしていく。阻止するように伊沢の膝が内側に寄せられる。抵抗されるのを楽しむように、大樹は太腿に舌を這わせた。
下着の上からゆるゆると指先で触り伊沢自身にいたずらを仕掛けると、教師に気付かれるかもしれないという緊張感のせいか、反応が早く現れ下着の中でそれが形を変える。
「それにしても、梅雨とはいえ今日は一日中雨だな。本降りになる前に早く帰るんだぞ」
「はい…。分かりました」
むしろ教師に早く帰って欲しいところだろうが、伊沢は顔に出さずに終始丁寧な受け答えをした。
教師が生徒会室を出て行った途端、伊沢は長机から飛びのいた。伊沢が当たったせいで、パイプ椅子がガタンと派手な音を立てる。
伊沢は長机の下を覗き込み、大樹を睨む。
「な、なんてことをするんだっ。ここをどこだと思ってる!」
「つい、いつもの癖で」
「先生に見つかってたらどう言い訳するつもりだ。馬鹿っ」
教師に見つからなかったことに心底ほっとしたように、伊沢が大きく息を吐く。
「会長のココがこんな状態な言い訳?」
大樹は長机の下から頭を出し、しゃがんだままで伊沢の下着をつんと人差し指で突いた。
自分の状況を目にして、伊沢の顔が赤くなる。下着越しでも十分にその状況が分かる。
そして、飛びのいたせいで膝に引っ掛かっていた伊沢のズボンは、足首まで落ちてしまっていた。
しゃがんだ大樹がさらに伊沢に近づくと、伊沢は後ずさりすぐ後ろの窓に背中をつけて止まる。大樹は口を開き、ぱくりと下着越しに伊沢のものを唇で甘噛みした。伊沢の膝がびくりと震える。
「おい、何考えてる…」
「下着が唾液と精液でべとべとになるのと、下着が汚れないの、どっちがいいです?」
両方とも伊沢にとっては、結果として嫌な選択肢だ。
伊沢が答えかねて黙っているので、大樹はそっと下着に手を掛けた。
「おい…っ」
伊沢の手が阻止する前に、下着から伊沢自身が飛び出した。
すでに十分な反応を見せていて、その様子に伊沢が恥じ入るように俯いた。
「み、見るな…。トイレに行かせてくれ……」
しゃがんだまま見上げる大樹の視界を遮るように、伊沢の手が大樹の目元を隠す。
もうすでに何度も見られているのだから、今更恥ずかしがらずともいいのに。
「その状態でトイレ行くつもりですか? 誰かと会ったらどうするんです? 会長のことだからきっと誰かに声掛けられて、話し込んでるうちに下着が擦れて人前でイっちゃうという、とんでもなく恥ずかしい思いをしちゃいますよ?」
伊沢の手を退かして顔を見ると、眉間に深い皺を作って唇をきゅっと噛んでいた。
「こうさせてしまった俺に、責任取らせて下さい」
大樹は囁いて、伊沢自身に口付けた。
伊沢はぽかんと口を開け大樹を見返す。
正体を告げられ、さらに告白までされるという事態に、頭が混乱しているようだ。
伊沢は左手で額を抑えた。
「え? ちょっと待て……。意味が分からない。何を言ってるんだ」
思っていた反応と違う。
てっきり、あんなことをしておいてふざけるなと、怒られることも覚悟していたのに。
「あんたが好きです。好きになりました。できたら付き合って欲しいです」
お世辞にも、少女漫画のようなときめくような場面ではなかった。数多くの告白シーンを読んできたはずなのに、まったく参考になっていない。
人生初の告白に緊張したのと照れ隠しで、少しぶっきらぼうにさえなってしまった。
「………」
伊沢は穴が開きそうなほど大樹を見つめていたが、脱力したようにぽすんとパイプ椅子に座り大樹を見上げた。
「お前、変な奴だな……」
意味が分からず、今度は大樹の方が首を傾げる番だ。
「俺のあんなとんでもない姿を見てるくせに、よくそんなこと思うな。おかしな奴だ」
「……変だのおかしいだの、あんたに言われなくないんですけど」
大樹が文句を言うと、伊沢は自嘲するような笑みを浮かべた。
「確かにな」
自分がおかしいという自覚はあるらしい。
返事を待って座る伊沢を見下ろしていると、ドアがノックされる音がした。
ここは関係者以外は立ち入り禁止だ。大樹は咄嗟に長机の陰にしゃがんだ。
「おう。お疲れさん」
「先生」
ドアを開けた教師に、伊沢がパイプ椅子から立ち上がる。
「さっき帰る奴らと会ってな。まだ伊沢が残ってると聞いたから」
「あ、はい。もう少し」
さっきまでの伊沢と違い、引き締まった雰囲気になる。
大樹が最初にときめいた、カッコ良くて優秀な生徒会長の姿だ。
こんな至近距離で見られるなんてラッキーだ。隣にしゃがみながら、大樹は胸をときめかせた。
コの字型に折りたたみ式の長机が配置されている為、近くまで来られなければ大樹の姿は見えないはずだが、教師が近付いてきた時の為に大樹は伊沢が使っている机の下へと移動した。しゃがみながら伊沢の正面の位置に移動する。
「頑張るのもほどほどにな。まだ時間かかりそうか?」
「いえ。あと三十分もすれば帰る…なっ」
突然変な語尾のついた伊沢に教師が変な顔をしたのか、何でもありませんと伊沢が慌てる。
伊沢が変な声を出したのは、大樹が伊沢のズボンのベルトに手をかけたからだ。
何となく目の前にあったので、触り慣れた股間を触ろうと考えてしまった。パソコンのモニターがあるため教師からは見えないだろうと、ベルトまで外し始める。
「あと三十分もすれば、帰ります…」
伊沢が教師に言い直した。動揺がうっすら声に出ているが、教師は気付いていない。
「そうか。週明けでも大丈夫なものなら、来週に回せよ」
「はい。そうします」
教師がこちらには近付いてこなさそうなので、調子に乗って大樹は伊沢のズボンを膝まで下ろしていく。阻止するように伊沢の膝が内側に寄せられる。抵抗されるのを楽しむように、大樹は太腿に舌を這わせた。
下着の上からゆるゆると指先で触り伊沢自身にいたずらを仕掛けると、教師に気付かれるかもしれないという緊張感のせいか、反応が早く現れ下着の中でそれが形を変える。
「それにしても、梅雨とはいえ今日は一日中雨だな。本降りになる前に早く帰るんだぞ」
「はい…。分かりました」
むしろ教師に早く帰って欲しいところだろうが、伊沢は顔に出さずに終始丁寧な受け答えをした。
教師が生徒会室を出て行った途端、伊沢は長机から飛びのいた。伊沢が当たったせいで、パイプ椅子がガタンと派手な音を立てる。
伊沢は長机の下を覗き込み、大樹を睨む。
「な、なんてことをするんだっ。ここをどこだと思ってる!」
「つい、いつもの癖で」
「先生に見つかってたらどう言い訳するつもりだ。馬鹿っ」
教師に見つからなかったことに心底ほっとしたように、伊沢が大きく息を吐く。
「会長のココがこんな状態な言い訳?」
大樹は長机の下から頭を出し、しゃがんだままで伊沢の下着をつんと人差し指で突いた。
自分の状況を目にして、伊沢の顔が赤くなる。下着越しでも十分にその状況が分かる。
そして、飛びのいたせいで膝に引っ掛かっていた伊沢のズボンは、足首まで落ちてしまっていた。
しゃがんだ大樹がさらに伊沢に近づくと、伊沢は後ずさりすぐ後ろの窓に背中をつけて止まる。大樹は口を開き、ぱくりと下着越しに伊沢のものを唇で甘噛みした。伊沢の膝がびくりと震える。
「おい、何考えてる…」
「下着が唾液と精液でべとべとになるのと、下着が汚れないの、どっちがいいです?」
両方とも伊沢にとっては、結果として嫌な選択肢だ。
伊沢が答えかねて黙っているので、大樹はそっと下着に手を掛けた。
「おい…っ」
伊沢の手が阻止する前に、下着から伊沢自身が飛び出した。
すでに十分な反応を見せていて、その様子に伊沢が恥じ入るように俯いた。
「み、見るな…。トイレに行かせてくれ……」
しゃがんだまま見上げる大樹の視界を遮るように、伊沢の手が大樹の目元を隠す。
もうすでに何度も見られているのだから、今更恥ずかしがらずともいいのに。
「その状態でトイレ行くつもりですか? 誰かと会ったらどうするんです? 会長のことだからきっと誰かに声掛けられて、話し込んでるうちに下着が擦れて人前でイっちゃうという、とんでもなく恥ずかしい思いをしちゃいますよ?」
伊沢の手を退かして顔を見ると、眉間に深い皺を作って唇をきゅっと噛んでいた。
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