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第14章 羨望
第205話 ……泣いて懇願すると思いますよ?
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レギウスの話にアティアスが尋ねる。
「それはどんな研究をしてるんだ?」
「いや、俺も知らないんだ。魔導士隊のことはトリックスに任せてるからな」
「そうか……」
ますます、行ってみないとわからない。
エミリスはひとり分かっているのだろうが。
「気になるな。……なぁ、教えてくれよ、エミー」
「えー。……でも、ヒントくらいなら良いですかねぇ。ポチと関係があります」
「ポチ?」
エミリスが出した名前に、アティアスは首を傾げた。
ポチと関係がありそうで、尚且つすぐに思い当たるのは、昨晩の仔犬のことだ。
ということは、その研究をしている者がいる、とでもいうのだろうか。
「……以前、ワイルドウルフとかの研究していた者……ってことか?」
「ふふ、そーですね。アティアス様も一度会ったこと、ありますよ。……覚えてないと思いますけど」
エミリスは腰に手を当てて、小ぶりな胸を張った。
「エミーが爆破したときの奴らか? ……ただ、もっと若かったと思うけど」
「いえ、その人達じゃないです。まぁ、顔見たら思い出すんじゃないですか?」
「そうか。……兄さん、立ち会ってくれるか?」
アティアスがレギウスに話を振ると、「仕方ないな」という素振りで頷いた。
「その男が、なにか関係あるのなら、確認は必要だが……。間違いないんだな?」
「はい。絶対に、間違いないです。……もし間違えていたら、3日間甘いもの我慢しますよ」
「……たった3日かよ」
アティアスが呆れたように言うが、エミリスは気にした素振りはなかった。
「はは。まぁ良いだろう。行くぞ」
◆
エミリスが指し示す場所は、城の奥の別棟で、元々は倉庫として使われていた場所だ。
離れていて使い勝手が悪いということで、新しく大きな倉庫を建てた頃から使われなくなって久しい。
アティアスも子供の頃、ノードに遊んでもらい、何度か立ち寄ったことがあった。
「ここか……。中に居るのか?」
「はい。……いるのは人だけじゃないですけどね」
「……それ大丈夫なのか?」
エミリスは軽く言うが、アティアスには不安が募る。とはいえ、彼女がいれば何が来ても大丈夫なのだろうが。
ウィルセアは、先ほどからほとんど言葉を出さず、アティアスの後ろに隠れていた。
「もちろん。ポチのほうがよっぽど強いですから」
アティアスはレギウスに目配せをしたあと、その錆びた扉に手をかけ――ゆっくりと開いた。
何か飛び出してきたりすることも考えて、緊張していたが、そんなことはなく。
ただ、中には背中を向けて座るひとりの男と、大きな檻が10個ほどだろうか。そこには、大小様々な種類の犬が入れられていた。
「ちょっとすまないが、話を聞かせてもらえるか?」
アティアスが声をかけると、ゆっくりとその男が顔を向ける。
「…………!」
そして、アティアスの顔を見て、明らかに顔色を変えるのが見て取れた。
アティアスはその顔に薄っすら見覚えがあったが、はっきりとは思い出せなかった。
その代わりに、アティアスの後ろにいたエミリスが口を開く。
「お久しぶりです。……と言っても、名前は存じ上げておりませんが。ファモスさんのところに居たあなたが、今はこんなところにいらっしゃるとは、変わり身の早いことですね」
アティアスは薄々わかってはいたが、レギウスはその名前を聞いて眉を顰めた。
「ファモス……ということは……」
「ええ。この方は以前、ファモスさんがテンセズに攻めてこられたときに、一緒におられた方ですよ。……ですよね?」
そこまで聞いて、アティアスも記憶が明るくなってきた。
――そうだ。
エミリスとふたりで、ファモスの陣地へと夜に乗り込んだとき、一緒にいた男――かなり影が薄かったが――によく似ている。
「……なぜ、お前たちがここに……!」
苦々しい顔をしながら、その男はようやく口を開く。
「ふふふ。……昨晩のお礼をしに来ただけですよ。私はアティアス様に危害を加えようとする人を、見逃したりしませんからね。……絶対に」
エミリスがそれに答えながらアティアスの前に一歩足を踏み出した。
同時に男が一歩後ずさる。
「ちっ……! なぜここが……」
以前、エミリスの力を嫌というほど見せつけられていた男は、逃げられないことを悟って舌打ちする。
「簡単です。私の記憶にある魔力を虱潰しに当たったら、たまたま見つかっちゃっただけですよ。あなたが魔導士じゃなければ分からなかったでしょうけどね。……一応、名前を聞いてあげましょうか?」
「……カノーザだ。……私をどうするつもりだ?」
その問いに、エミリスは首を傾げた。
「んんー、どうしましょうかねぇ? とりあえず、すぐに死んでいただくようなつもりはないですけど。話してもらわないといけないこと、いーっぱいありますから……」
「ふん、私が話すと思うか……?」
「ええ、もちろん♪ ……簡単に仕える人を変えるような人が、私の尋問に耐えられるワケないじゃないですか。……泣いて懇願すると思いますよ? きっと……」
何故か嬉しそうに話すエミリスだが、その目だけはじっと男――カノーザを見つめていた。
「それはどんな研究をしてるんだ?」
「いや、俺も知らないんだ。魔導士隊のことはトリックスに任せてるからな」
「そうか……」
ますます、行ってみないとわからない。
エミリスはひとり分かっているのだろうが。
「気になるな。……なぁ、教えてくれよ、エミー」
「えー。……でも、ヒントくらいなら良いですかねぇ。ポチと関係があります」
「ポチ?」
エミリスが出した名前に、アティアスは首を傾げた。
ポチと関係がありそうで、尚且つすぐに思い当たるのは、昨晩の仔犬のことだ。
ということは、その研究をしている者がいる、とでもいうのだろうか。
「……以前、ワイルドウルフとかの研究していた者……ってことか?」
「ふふ、そーですね。アティアス様も一度会ったこと、ありますよ。……覚えてないと思いますけど」
エミリスは腰に手を当てて、小ぶりな胸を張った。
「エミーが爆破したときの奴らか? ……ただ、もっと若かったと思うけど」
「いえ、その人達じゃないです。まぁ、顔見たら思い出すんじゃないですか?」
「そうか。……兄さん、立ち会ってくれるか?」
アティアスがレギウスに話を振ると、「仕方ないな」という素振りで頷いた。
「その男が、なにか関係あるのなら、確認は必要だが……。間違いないんだな?」
「はい。絶対に、間違いないです。……もし間違えていたら、3日間甘いもの我慢しますよ」
「……たった3日かよ」
アティアスが呆れたように言うが、エミリスは気にした素振りはなかった。
「はは。まぁ良いだろう。行くぞ」
◆
エミリスが指し示す場所は、城の奥の別棟で、元々は倉庫として使われていた場所だ。
離れていて使い勝手が悪いということで、新しく大きな倉庫を建てた頃から使われなくなって久しい。
アティアスも子供の頃、ノードに遊んでもらい、何度か立ち寄ったことがあった。
「ここか……。中に居るのか?」
「はい。……いるのは人だけじゃないですけどね」
「……それ大丈夫なのか?」
エミリスは軽く言うが、アティアスには不安が募る。とはいえ、彼女がいれば何が来ても大丈夫なのだろうが。
ウィルセアは、先ほどからほとんど言葉を出さず、アティアスの後ろに隠れていた。
「もちろん。ポチのほうがよっぽど強いですから」
アティアスはレギウスに目配せをしたあと、その錆びた扉に手をかけ――ゆっくりと開いた。
何か飛び出してきたりすることも考えて、緊張していたが、そんなことはなく。
ただ、中には背中を向けて座るひとりの男と、大きな檻が10個ほどだろうか。そこには、大小様々な種類の犬が入れられていた。
「ちょっとすまないが、話を聞かせてもらえるか?」
アティアスが声をかけると、ゆっくりとその男が顔を向ける。
「…………!」
そして、アティアスの顔を見て、明らかに顔色を変えるのが見て取れた。
アティアスはその顔に薄っすら見覚えがあったが、はっきりとは思い出せなかった。
その代わりに、アティアスの後ろにいたエミリスが口を開く。
「お久しぶりです。……と言っても、名前は存じ上げておりませんが。ファモスさんのところに居たあなたが、今はこんなところにいらっしゃるとは、変わり身の早いことですね」
アティアスは薄々わかってはいたが、レギウスはその名前を聞いて眉を顰めた。
「ファモス……ということは……」
「ええ。この方は以前、ファモスさんがテンセズに攻めてこられたときに、一緒におられた方ですよ。……ですよね?」
そこまで聞いて、アティアスも記憶が明るくなってきた。
――そうだ。
エミリスとふたりで、ファモスの陣地へと夜に乗り込んだとき、一緒にいた男――かなり影が薄かったが――によく似ている。
「……なぜ、お前たちがここに……!」
苦々しい顔をしながら、その男はようやく口を開く。
「ふふふ。……昨晩のお礼をしに来ただけですよ。私はアティアス様に危害を加えようとする人を、見逃したりしませんからね。……絶対に」
エミリスがそれに答えながらアティアスの前に一歩足を踏み出した。
同時に男が一歩後ずさる。
「ちっ……! なぜここが……」
以前、エミリスの力を嫌というほど見せつけられていた男は、逃げられないことを悟って舌打ちする。
「簡単です。私の記憶にある魔力を虱潰しに当たったら、たまたま見つかっちゃっただけですよ。あなたが魔導士じゃなければ分からなかったでしょうけどね。……一応、名前を聞いてあげましょうか?」
「……カノーザだ。……私をどうするつもりだ?」
その問いに、エミリスは首を傾げた。
「んんー、どうしましょうかねぇ? とりあえず、すぐに死んでいただくようなつもりはないですけど。話してもらわないといけないこと、いーっぱいありますから……」
「ふん、私が話すと思うか……?」
「ええ、もちろん♪ ……簡単に仕える人を変えるような人が、私の尋問に耐えられるワケないじゃないですか。……泣いて懇願すると思いますよ? きっと……」
何故か嬉しそうに話すエミリスだが、その目だけはじっと男――カノーザを見つめていた。
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