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第11章 その後
第164話 完
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アティアスの叙爵から2ヶ月ほど経った初夏の日――。
「よお、様子を見に来たぞ」
そう言ってウメーユの執務室に入ってきたのは、王都の宮廷魔導士ワイヤードだった。
部屋には執務中のアティアスの他、傍らにはそれをサポートするウィルセア。そして……エミリスは壁際に置かれたソファで、ドーナツを食べながら寝転がっているところだった。
「ワイヤードさん、ようこそウメーユに」
アティアスが立ち上がって小さく礼をする。
近々来るということは聞いていたが、詳細な日程はわからなかった。
なにしろ王都から遠いのだ。いくらワイヤードでも、そう簡単には来ることができないのはわかっていた。
「ああ。田舎だが良いところだな。……ところで、お前は何をサボってるんだ?」
「えっと、その……。お腹が空いたので……えへへ」
急に振られたエミリスはバツの悪そうな顔でとぼけた。
「まぁいい。……ついでに今日はもう1人連れてきたよ。……入っていいぞ」
ワイヤードが促すと、開いていた執務室の扉から、1人の女性――30代くらいだろうか――が入ってきた。
黒い髪で、顔立ちはエミリスを大人にしたような、そういう雰囲気があった。
「うふふ、久しぶりね。2人とも」
そう言って笑う姿に、アティアスは見覚えがあった。
まさかとは思いながら、声をかける。
「まさか……もしかして……エレナ女王……?」
彼に名前を呼ばれて、エレナはにやりと笑った。
「ご名答。さすがね」
それにはエミリスも驚いた声を出した。
「えっ、ええー⁉︎ お、お母さん? なんで……」
「あらエミリス、それはどういう意味かしら? 私がここにいること? それとも……」
エレナはエミリスの座っているソファの隣に腰をかけて、驚く彼女の顔を見た。
「両方ですよっ! なんで急に若くなってるんですかっ!」
エレナはそう聞くエミリスを、ぎゅっと抱きしめながら言った。
「ふふ、いつもの姿だと目立つから、ワイヤードにお願いしてちょっとね」
「ええっ、そんなことも?」
「貴女も教えてもらいなさいね。便利よ?」
ワイヤードの魔法は他人の外見まで変えられるのかと、エミリスは驚く。
しかし、今のエレナの外見は、明らかに彼女が若かった頃のものに違いないと思えた。
「私が貴女を産んだ頃はもっと若かったかしら。……でも、似てるでしょ?」
それにはアティアスも同意する。
「はい……。私とそっくりです」
エミリスはしみじみと呟いた。
「さ、お忍びとはいえ女王が来られたんだ。……どうする?」
ワイヤードがニヤリと笑う。
アティアスは小声でウィルセアに耳打ちした。
「……今日決裁しないといけないものは、あとどれくらいだ?」
「もう多くありませんよ。私が代わりにやりましょう」
「頼んだ。俺たちは家にエレナ女王を招待するから、終わったら後はオースチンとノードに任せて、ウィルセアも戻ってこい。今晩はエミーに腕を奮ってもらうから、手伝ってやってくれ」
「承知しました」
彼の依頼に、ウィルセアはしっかりと頷いた。
ウィルセアは家ではエミリスに家事を習い、執務ではアティアスの補助をしていた。
尖ったところはないが、なんでもそつなくやり遂げるところは、エミリスとはまた違う意味で有能と言えた。
「それじゃ、今日は切り上げてうちでパーティにしよう。エミー、料理を頼む」
「はーい、お任せください」
◆
「ここがあなたたちのお家?」
「はい。……とはいえ、まだ借家ですが。いずれ新しく建てようとは思っています」
アティアス達の家を見て、エレナが聞く。
早く建てたいとは思うのだが、先にしなければならないことが多く、まだ手がつけられていなかった。
「ふふ、まぁ領地の運営が先よね。ゆっくりやりなさい」
「そうですね。今のところ、ここで不自由はしていませんので。……どうぞ」
アティアスが答えて、皆を招き入れる。
広めのダイニングに入ったエレナは呟く。
「エミリスは料理上手そうね。良い匂いがこびりついてるわ」
「匂いでわかるんですか?」
エミリスが聞くと、エレナは頷く。
「ええ、私の鼻はよく効くの。スパイスも複雑だし、ちゃんと使いこなしてないと、こうはいかないわね。……今晩は期待できそうね」
そう言ってエレナは微笑む。
エミリスの鼻が犬並みなのは、もしかして女王譲りだったのかと、アティアスは思った。
「それじゃ、お茶淹れますから、しばらくお待ちくださいね」
「ええ、よろしくね」
エミリスが厨房に入っていくと、ワイヤードが椅子に腰掛けながら話す。
「とりあえずは順調みたいだな。さっきの……マッキンゼ子爵の娘だったか。まだ子供なのに、なかなか優秀そうだったな」
「ああ。思ってた以上になんでもやってくれるから、助かってる。しっかり教育してくれてたヴィゴール殿には、感謝しないといけないな」
「良い人材を見つけてくるのも大事な仕事だからな、まぁがんばれ」
ワイヤードが頷く。
「良い人の周りには良い人が集まるわ。……それだけアティアスさん、あなたが素晴らしい人だってこと。娘が慕ってるのもよくわかるわ」
「ありがとうございます。……俺はできることを精一杯やるだけです」
「ふふ。よろしくね」
アティアスを見ながら、エレナも微笑む。
エミリスと似てはいるが、大人びたその表情につい引き込まれそうになる。
成長の遅いエミリスが、こういう大人の魅力を身につける頃には、自分はもうだいぶ歳を重ねた頃だろうかと、ふと思った。
「お茶入りましたよー」
ちょうどそのとき、エミリスが目の前にカップをふわふわと浮かせて、厨房から出てきた。
今日は手ぶらだ。
「そういう芸当は俺より上手いな」
ワイヤードが感嘆するなか、複数のカップを軽やかにテーブルに滑らせた。
「ふふ、得意なのは壊すだけじゃないですから。ねっ、アティアス様」
「あ、ああ……。そうだな……」
王都の式典の際に『ぶっ壊すのが得意』と言われたのを根に持っているのか、それからというもの、エミリスはことあるごとに他にもできるんですアピールをしていた。
「ところで、今日の宿は決めてますか?」
アティアスが聞くと、エレナは首を振った。
「なら、部屋もありますから、泊まっていってください。狭いですが……」
「ワイヤード、どうする? 娘夫婦の家に泊まるのも良いかしら?」
「俺は構わんが……」
そのやりとりに、エミリスが笑顔を見せる。
「是非泊まっていってください。いっぱい話がしたいです」
「おいおい、その前に夕食でワイン飲んで寝るんじゃないだろうな、エミーは……」
「むむー」
アティアスの軽口に、エミリスは口を尖らせた。
◆
「これは素晴らしいわね。……王都の料理人にも勝ってるわよ」
ウィルセアが帰ってきて、エミリスと2人で夕食の料理を作り、出来上がった料理を口にしたエレナが驚く。
その様子を見て、エミリスはほっとしたと同時に、嬉しくて笑顔を見せた。
「ありがとうございます」
「アティアスさん、毎日こんなの食べてるの?」
エレナがアティアスに聞く。
「ええ。エミーの料理を食べ慣れると、舌が肥えていけませんね」
「ふふ、羨ましいわ。高い材料じゃないのにね。相当な腕だわ。ずっとひとりで覚えたのね。……私は何も娘に教えてあげられなくて……ごめんなさいね」
不意にエレナがエミリスに謝り、そして一粒、涙を溢した。
「お母さん……。気にしないでください。もう、絶対に会えないと思ってた、お父さんとお母さんに、こうして会えただけで私は十分です。これ以上の幸せはありません」
その涙に当てられたのか、エミリスも目を潤ませた。
「そうね。私も娘に会えるとは思っていなくて……だからこうして手料理が食べられるなんて、想像もしていなかったわ。それも、王都に娘を連れてきてくれたアティアスさんのおかげね」
「はい。アティアス様は、私の……本当に私を救ってくれた方です。これからも……私の全てをかけて愛し抜きますから」
エミリスはそう宣言して……隣に座る彼の腕を手に取って、その肩に頬擦りした。
―― 第3幕 完 ――
◆◆◆
【第11章 あとがき】
「ようやく第3幕もこれで終わりですねっ!」
エミリスは小ぶりな胸を張って、鼻息を荒くした。
「長かったな。ここまで大体49万文字くらいか?」
「ですね。50万字行かなかったのは、流石に作者もだいぶ疲れたらしいですよ?」
「そりゃ、な。だいたい1時間で2000文字くらい書くとして、245時間だぞ?」
「――え? たったそれだけですか? 200時間くらい、1本のゲームで使う人もいますよね? ちょっと軟弱じゃないです? 寝ずに書いたら10日ちょっとで書けるってことでしょう?」
エミリスの辛辣な言葉に、近くで聞いていたウィルセアが冷静に突っ込んだ。
「いえ、それは無理ですわ。作者は名前の通り、寝るのが大好きみたいですから。せめて20日はあげて欲しいところです」
「なるほど……。でも、そういうことならプロット考える時間を考えても、この規模のお話を毎月1作出せますねっ!」
「ですねー。それに、私の出番がもう少し欲しいところですわ」
ウィルセアが眉をひそめて言った。
「そうだな。ウィルセアが活躍するのが本当に最後だけだからな。この続きに期待かな」
「はい。微妙に回収されてない伏線もありますし、このあと作者がどう回収するつもりなのか、それとも放置するのか、気になりますねぇ……」
エミリスがしみじみと言う。
「ははは……」
「……まぁそれはそれとして。私のお母さん、結構胸ありましたよね? ――ってことは私もまだまだ成長する可能性があるってことですねっ!」
ペタペタと自分の胸を触りながら、エミリスは自信満々に言った。
「それが遺伝するかは……わからないな。まぁ、胸が小さくても俺は気にしないから、心配するな」
「そう言っていただけると嬉しいですけど……。ウィルセアさんに負けそうで怖いです。スタイル良いですし、メイド服も似合ってるし……」
肩を落とすエミリスに、ウィルセアが言う。
「大丈夫ですわ。エミリスさんを敵に回したりしませんから、ご安心ください」
「だと良いのですけど……」
「死ぬ覚悟が要りますから。私まだ死にたくないです……」
エミリスが横目でちらっと見ると、ウィルセアは顔をひきつらせた。
「なんにせよ、そろそろ終わるか」
「ですねー。引き続き、次章をお楽しみください」
【作者注】
終わる詐欺をしつつ、まだ続きます(笑)
「よお、様子を見に来たぞ」
そう言ってウメーユの執務室に入ってきたのは、王都の宮廷魔導士ワイヤードだった。
部屋には執務中のアティアスの他、傍らにはそれをサポートするウィルセア。そして……エミリスは壁際に置かれたソファで、ドーナツを食べながら寝転がっているところだった。
「ワイヤードさん、ようこそウメーユに」
アティアスが立ち上がって小さく礼をする。
近々来るということは聞いていたが、詳細な日程はわからなかった。
なにしろ王都から遠いのだ。いくらワイヤードでも、そう簡単には来ることができないのはわかっていた。
「ああ。田舎だが良いところだな。……ところで、お前は何をサボってるんだ?」
「えっと、その……。お腹が空いたので……えへへ」
急に振られたエミリスはバツの悪そうな顔でとぼけた。
「まぁいい。……ついでに今日はもう1人連れてきたよ。……入っていいぞ」
ワイヤードが促すと、開いていた執務室の扉から、1人の女性――30代くらいだろうか――が入ってきた。
黒い髪で、顔立ちはエミリスを大人にしたような、そういう雰囲気があった。
「うふふ、久しぶりね。2人とも」
そう言って笑う姿に、アティアスは見覚えがあった。
まさかとは思いながら、声をかける。
「まさか……もしかして……エレナ女王……?」
彼に名前を呼ばれて、エレナはにやりと笑った。
「ご名答。さすがね」
それにはエミリスも驚いた声を出した。
「えっ、ええー⁉︎ お、お母さん? なんで……」
「あらエミリス、それはどういう意味かしら? 私がここにいること? それとも……」
エレナはエミリスの座っているソファの隣に腰をかけて、驚く彼女の顔を見た。
「両方ですよっ! なんで急に若くなってるんですかっ!」
エレナはそう聞くエミリスを、ぎゅっと抱きしめながら言った。
「ふふ、いつもの姿だと目立つから、ワイヤードにお願いしてちょっとね」
「ええっ、そんなことも?」
「貴女も教えてもらいなさいね。便利よ?」
ワイヤードの魔法は他人の外見まで変えられるのかと、エミリスは驚く。
しかし、今のエレナの外見は、明らかに彼女が若かった頃のものに違いないと思えた。
「私が貴女を産んだ頃はもっと若かったかしら。……でも、似てるでしょ?」
それにはアティアスも同意する。
「はい……。私とそっくりです」
エミリスはしみじみと呟いた。
「さ、お忍びとはいえ女王が来られたんだ。……どうする?」
ワイヤードがニヤリと笑う。
アティアスは小声でウィルセアに耳打ちした。
「……今日決裁しないといけないものは、あとどれくらいだ?」
「もう多くありませんよ。私が代わりにやりましょう」
「頼んだ。俺たちは家にエレナ女王を招待するから、終わったら後はオースチンとノードに任せて、ウィルセアも戻ってこい。今晩はエミーに腕を奮ってもらうから、手伝ってやってくれ」
「承知しました」
彼の依頼に、ウィルセアはしっかりと頷いた。
ウィルセアは家ではエミリスに家事を習い、執務ではアティアスの補助をしていた。
尖ったところはないが、なんでもそつなくやり遂げるところは、エミリスとはまた違う意味で有能と言えた。
「それじゃ、今日は切り上げてうちでパーティにしよう。エミー、料理を頼む」
「はーい、お任せください」
◆
「ここがあなたたちのお家?」
「はい。……とはいえ、まだ借家ですが。いずれ新しく建てようとは思っています」
アティアス達の家を見て、エレナが聞く。
早く建てたいとは思うのだが、先にしなければならないことが多く、まだ手がつけられていなかった。
「ふふ、まぁ領地の運営が先よね。ゆっくりやりなさい」
「そうですね。今のところ、ここで不自由はしていませんので。……どうぞ」
アティアスが答えて、皆を招き入れる。
広めのダイニングに入ったエレナは呟く。
「エミリスは料理上手そうね。良い匂いがこびりついてるわ」
「匂いでわかるんですか?」
エミリスが聞くと、エレナは頷く。
「ええ、私の鼻はよく効くの。スパイスも複雑だし、ちゃんと使いこなしてないと、こうはいかないわね。……今晩は期待できそうね」
そう言ってエレナは微笑む。
エミリスの鼻が犬並みなのは、もしかして女王譲りだったのかと、アティアスは思った。
「それじゃ、お茶淹れますから、しばらくお待ちくださいね」
「ええ、よろしくね」
エミリスが厨房に入っていくと、ワイヤードが椅子に腰掛けながら話す。
「とりあえずは順調みたいだな。さっきの……マッキンゼ子爵の娘だったか。まだ子供なのに、なかなか優秀そうだったな」
「ああ。思ってた以上になんでもやってくれるから、助かってる。しっかり教育してくれてたヴィゴール殿には、感謝しないといけないな」
「良い人材を見つけてくるのも大事な仕事だからな、まぁがんばれ」
ワイヤードが頷く。
「良い人の周りには良い人が集まるわ。……それだけアティアスさん、あなたが素晴らしい人だってこと。娘が慕ってるのもよくわかるわ」
「ありがとうございます。……俺はできることを精一杯やるだけです」
「ふふ。よろしくね」
アティアスを見ながら、エレナも微笑む。
エミリスと似てはいるが、大人びたその表情につい引き込まれそうになる。
成長の遅いエミリスが、こういう大人の魅力を身につける頃には、自分はもうだいぶ歳を重ねた頃だろうかと、ふと思った。
「お茶入りましたよー」
ちょうどそのとき、エミリスが目の前にカップをふわふわと浮かせて、厨房から出てきた。
今日は手ぶらだ。
「そういう芸当は俺より上手いな」
ワイヤードが感嘆するなか、複数のカップを軽やかにテーブルに滑らせた。
「ふふ、得意なのは壊すだけじゃないですから。ねっ、アティアス様」
「あ、ああ……。そうだな……」
王都の式典の際に『ぶっ壊すのが得意』と言われたのを根に持っているのか、それからというもの、エミリスはことあるごとに他にもできるんですアピールをしていた。
「ところで、今日の宿は決めてますか?」
アティアスが聞くと、エレナは首を振った。
「なら、部屋もありますから、泊まっていってください。狭いですが……」
「ワイヤード、どうする? 娘夫婦の家に泊まるのも良いかしら?」
「俺は構わんが……」
そのやりとりに、エミリスが笑顔を見せる。
「是非泊まっていってください。いっぱい話がしたいです」
「おいおい、その前に夕食でワイン飲んで寝るんじゃないだろうな、エミーは……」
「むむー」
アティアスの軽口に、エミリスは口を尖らせた。
◆
「これは素晴らしいわね。……王都の料理人にも勝ってるわよ」
ウィルセアが帰ってきて、エミリスと2人で夕食の料理を作り、出来上がった料理を口にしたエレナが驚く。
その様子を見て、エミリスはほっとしたと同時に、嬉しくて笑顔を見せた。
「ありがとうございます」
「アティアスさん、毎日こんなの食べてるの?」
エレナがアティアスに聞く。
「ええ。エミーの料理を食べ慣れると、舌が肥えていけませんね」
「ふふ、羨ましいわ。高い材料じゃないのにね。相当な腕だわ。ずっとひとりで覚えたのね。……私は何も娘に教えてあげられなくて……ごめんなさいね」
不意にエレナがエミリスに謝り、そして一粒、涙を溢した。
「お母さん……。気にしないでください。もう、絶対に会えないと思ってた、お父さんとお母さんに、こうして会えただけで私は十分です。これ以上の幸せはありません」
その涙に当てられたのか、エミリスも目を潤ませた。
「そうね。私も娘に会えるとは思っていなくて……だからこうして手料理が食べられるなんて、想像もしていなかったわ。それも、王都に娘を連れてきてくれたアティアスさんのおかげね」
「はい。アティアス様は、私の……本当に私を救ってくれた方です。これからも……私の全てをかけて愛し抜きますから」
エミリスはそう宣言して……隣に座る彼の腕を手に取って、その肩に頬擦りした。
―― 第3幕 完 ――
◆◆◆
【第11章 あとがき】
「ようやく第3幕もこれで終わりですねっ!」
エミリスは小ぶりな胸を張って、鼻息を荒くした。
「長かったな。ここまで大体49万文字くらいか?」
「ですね。50万字行かなかったのは、流石に作者もだいぶ疲れたらしいですよ?」
「そりゃ、な。だいたい1時間で2000文字くらい書くとして、245時間だぞ?」
「――え? たったそれだけですか? 200時間くらい、1本のゲームで使う人もいますよね? ちょっと軟弱じゃないです? 寝ずに書いたら10日ちょっとで書けるってことでしょう?」
エミリスの辛辣な言葉に、近くで聞いていたウィルセアが冷静に突っ込んだ。
「いえ、それは無理ですわ。作者は名前の通り、寝るのが大好きみたいですから。せめて20日はあげて欲しいところです」
「なるほど……。でも、そういうことならプロット考える時間を考えても、この規模のお話を毎月1作出せますねっ!」
「ですねー。それに、私の出番がもう少し欲しいところですわ」
ウィルセアが眉をひそめて言った。
「そうだな。ウィルセアが活躍するのが本当に最後だけだからな。この続きに期待かな」
「はい。微妙に回収されてない伏線もありますし、このあと作者がどう回収するつもりなのか、それとも放置するのか、気になりますねぇ……」
エミリスがしみじみと言う。
「ははは……」
「……まぁそれはそれとして。私のお母さん、結構胸ありましたよね? ――ってことは私もまだまだ成長する可能性があるってことですねっ!」
ペタペタと自分の胸を触りながら、エミリスは自信満々に言った。
「それが遺伝するかは……わからないな。まぁ、胸が小さくても俺は気にしないから、心配するな」
「そう言っていただけると嬉しいですけど……。ウィルセアさんに負けそうで怖いです。スタイル良いですし、メイド服も似合ってるし……」
肩を落とすエミリスに、ウィルセアが言う。
「大丈夫ですわ。エミリスさんを敵に回したりしませんから、ご安心ください」
「だと良いのですけど……」
「死ぬ覚悟が要りますから。私まだ死にたくないです……」
エミリスが横目でちらっと見ると、ウィルセアは顔をひきつらせた。
「なんにせよ、そろそろ終わるか」
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