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第6章 ミニーブルにて
第89話 重責
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彼女はアティアスの頼みなら、余程のことがなければ断ったりしない。そして、できることは常人に比べて圧倒的に多い。
それだけの力が、自分の判断に委ねられていることの重さを、彼は時折感じることがある。
逆に彼女も、それだけ彼のことを信頼して委ねている、ということでもあった。
「……重いな」
アティアスは呟く。
自分たちがやらなければ、マッキンゼ卿は自分たちで何とかするだろう。
自身の領地内の問題であり、手を出す話ではないともいえる。
しかし、その場合どうしても解決に時間がかかる。それにもしマッキンゼ卿側が敗れるようなことになると、ゼバーシュにも危険が及ぶかもしれない。
「できれば話し合いで解決したいものだが……」
「私もその方が望ましいです。自分の領地で内輪揉めはしたくありません。ただ……」
恐らくマッキンゼ卿は話し合いでの解決を模索して、すでに試みているのだろう。しかしそれが上手くいっていないから2人に頼んでいるのだ。
「……実際にエミリス殿の力を見ないとわからないでしょう。……あの魔法石は最近開発されたものです。元々の魔導士隊と合わせて、今のここの戦力は近隣を圧倒できるはず。それなのに、私がゼバーシュと友誼を結ぶという話を進めようとしているのか、それが理解できないのです」
マッキンゼ卿はひとつため息をつき、エミリスの方を見た。
彼の話も尤もだと理解した。大きな戦力を持っていると、どうしても過信してしまいがちになる。ただ、それはエミリスと共にいる自分にも言えることだと。過信しすぎないことを改めて心に留め置く。
「なるほど……わかりました。協力しましょう。ただ……条件があります」
アティアスはマッキンゼ卿の頼みを受け入れることにした。
「ありがとうございます。条件はなんでしょうか?」
「それは、私たちにマッキンゼ卿も同行していただくことです。……それと、解決したあとセリーナさんを解放させて欲しいと思います。……エミー、勝手に決めてかまわないか?」
「はい、私はかまいません」
2つの条件をマッキンゼ卿に投げかける。
力を見せたあと、スムーズに交渉するためにはマッキンゼ卿の力が必要になると考えた。
また、ファモスを説得できたとしても、セリーナを処罰すると禍根が残ることを懸念したのだ。それにもう、彼女がアティアスを襲うことはないだろう。
「いいでしょう。それは私も考えていました。……セリーナの方はアティアス殿の了解を得る必要があると思っていたのですが、そちらから仰って頂けて助かりました」
マッキンゼ卿は頷く。
「それでは、向こうが動く前に、早々に片付ける方がいいでしょう。アティアス殿はいつ動けますか?」
「2日くらい時間をください。ほぼ体調は戻っていますが、長く動いていなかったので、もう少し身体を慣らしたいのです」
「承知しました。では、明後日ダライに向かいましょう。馬車を手配します」
「よろしくお願いします。……同行者は少ない方がいいと思います」
「あなた方がいれば護衛は要らないのでしょうが、オースチンは連れて行こうと思います」
つまり馬車の御者を除くと、アティアスたち2人とマッキンゼ卿、加えてオースチンとなり、合計4人になる。
不安そうな顔のウィルセアに、エミリスが言う。
「ウィルセア嬢、ご安心ください。そのくらいの人数なら私の力で守れますので」
もちろんアティアスを最優先で守るだろうが、近くにさえいれば一緒に防御壁を張ることができる。
「父をよろしくお願いします。ぜひご無事で帰ってきてください。大きなケーキを準備しておきますから」
微笑みながら話したウィルセアの言葉に、エミリスは目を輝かせる。
なぜ甘いものに目がないことをウィルセアが知っているのかわからなかったが、それは些細なことだ。
「そ、それは魅力的ですね……。私がんばります」
「はい。誕生日ケーキが食べられなかったので、私も残念に思ってましたので」
場の空気を和やかにしてくれたウィルセアに感謝しつつ、アティアスたちはミニーブルの城を後にした。
◆
「特にやることもないけど、ダライに行くまでどうする?」
「そうですねー。私、街を回りたいです」
「良いぞ。エミーとなら安全だし、運動もしないといけないし。ブラブラするか」
「はいっ」
城から出た2人はそのまま街の中心部に向かう。
ゼバーシュほどではないが、かなり栄えていて、いろいろな店があった。
「美味しいお菓子ないかなぁ……」
エミリスはきょろきょろと周りを見渡して、なにか目新しいものがないか探していた。
――ふいに2人に声が掛けられた。
「お二方、ちょっと遊んでいかない?」
声の方を振り向くと、若い女性がいた。
「うち射的屋なんだけど、1回どう?」
笑顔で客引きをしていた女性は、手に小さな弓矢を持っていた。
「射的……ってなんですか?」
初めて聞く言葉だったので、エミリスは彼に聞く。
「ああ、おもちゃの弓で矢を的に当てる遊びだよ。当てた物が貰えるんだ。お菓子とかそんな物だけどな」
「へー、面白そうです。やってみたいですー」
彼女は興味津々で彼にねだる。
「別に構わないぞ? 俺とどっちが多く取れるか勝負するか?」
「ふふー、負けませんしっ」
2人は女性に案内されて近くの店に入った。
的は子供向けと大人向けで2種類あり、大人向けは意外と遠く見えた。
「何回ずつやりますか? 1回で矢は5本です」
「そうだな……とりあえず10本にするか」
アティアスはお金を払い、矢を受け取り、半分をエミリスに渡す。
「エミーは初めてだろ? とりあえず1回目は練習にして、その次の5本で多く当てた方が勝ちな」
「はい、わかりました」
最初にアティアスが手本とばかりに矢を射る。
1本目は惜しくも外れたが、2本目で小さなお菓子の箱に当てた。
「おおー」
エミリスが感嘆するなか、続けて全ての矢を射ると、合計で3つ的に当てることができた。
「ま、こんなものかな。それじゃ、エミーもやってみな」
「はいっ」
彼女が矢をつがえて放つと、見事に明後日の方向に飛んでいってしまった。
「…………あれ?」
不思議そうな顔をしつつも次の矢を放つが、今度は狙った所の反対に飛んでいく。
「むむー! なんかおかしいですっ」
彼女はしかめっつらをして悔しがる。
「弓は意外と難しいからな。すぐ慣れるけど」
結局5本全てかすりもせず、一度も的に当てることができなかった。
「うぐぐ……」
こんなに難しいとは思っていなかった彼女は唇を噛む。
「これは勝負にならないな。勝負はやめておくか?」
「むー、やりますよっ!」
「ははは、それじゃまた俺からやるぞ?」
「どーぞどーぞ」
アティアスは次の5本の矢を射る。
先ほどより感覚が合ってきたのか、5本中4本を当てることができた。
「まずまずだな。5本全部当てればエミーの勝ちだな」
先ほどまでの様子では負けはないだろうと、笑いながら彼女の番を待つ。
「ふふふ……負けませんからっ」
彼女は宣言して1本目の矢を放つ。
するとさっきまでが嘘のように、的の中心に当たったのだ。
「まず1個ですー」
その後も連続して当て続け、結局5本全て的に当ててしまった。
「ふふーん、私の勝ちですねっ!」
唖然とするアティアスに彼女は勝ち誇る。
彼の取った分と合わせてお菓子を大量に入手した彼女は、機嫌よく店を後にした。
「どーです? 本気出せばこんなものですよ」
歩きながら話すエミリスに、アティアスが呟いた。
「……エミー、魔力使ったろ? 反則じゃないか、それ」
「へぇっ? な、なんのこと……でしょうかね……?」
突然の指摘に驚き、しどろもどろに答えるエミリスを見て、確信を深める。
「やっぱりな。いくらなんでもそんな急に上手くはならないだろ」
「あ、あはは……ごめんなさい」
彼の目を誤魔化せなかった彼女は、素直に謝ることにした。
エミリスは矢を魔力で誘導して、的に当てていたのだ。
「ま、使ったらダメってルールでもないし、俺の負けで良いさ。……でも、そんなこともできるんだな。確実に狙った所に当てられるのは便利だな」
「あ、はい。石を撃つのに比べると、軌道を変えるだけなので簡単です。逆に、飛んできた矢を逸らすこともできますよ」
「そうか、もしそういう時は頼むな。無いにこしたことはないけど」
「ええ、おまかせを」
◆◆◆
【第6章 あとがき】
「お久しぶりですね!」
「ああ。思ったより長かったな」
宿に帰った二人は夕食を終え、デザートを食べながらゆっくりとしていた。
「ふふ、アティアス様がお亡くなりになって、話が終わっちゃうかとドキドキしましたよー」
「エミーがいなかったら死んでたよな。ありがとう」
彼女の頭を撫でると、嬉しそうに笑顔を見せた。
「ところで、アティアス様?」
「なんだ?」
余韻に浸りながら、エミリスはふと疑問を投げかける。
「読者さんからの感想とか全然ないんですけど、なんでですかね? もしかして、私嫌われてます?」
「あのなぁ……。反応なくてもしおりは動いてるんだから、読んでくれてるはずだぞ?」
「それはまぁ分かりますけど……」
「まぁ、確かにエミーの気持ちも分かるけどな」
「ですよねぇ……。あ、私デザートのお代わりが欲しいです」
話の途中でさっさとエミリスは席を立ち、追加のケーキを持ってくる。
「ふふー。秘蔵のケーキ美味しいです。アティアス様も一口どうです?」
その様子に呆れつつも、アティアスは続ける。
「いや、俺は良いよ」
「そうですか。なら、私が食べちゃいますよ?」
彼女はそう言いながら、フォークに刺した大きなケーキの塊を嬉しそうに口に含む。
満足そうに飲み込んだあと、口元をナプキンで拭いた。
「……それで、次話から第7章ですね。……これで一区切りになるようなので、もう少しお付き合いくださいね」
「と言っても、まだその先もあるみたいだけどな」
「作者もよくこんなに書きましたねぇ……。これ、処女作なんでしょ?」
「そう聞いてるぞ、俺は」
「ふふ、まぁそれに私たちを選んでくれてありがたいとは思いますけどね。無事に完結できることだけ、祈っておきますよ」
そう言ってエミリスは食後のお茶に手を付けた。
それだけの力が、自分の判断に委ねられていることの重さを、彼は時折感じることがある。
逆に彼女も、それだけ彼のことを信頼して委ねている、ということでもあった。
「……重いな」
アティアスは呟く。
自分たちがやらなければ、マッキンゼ卿は自分たちで何とかするだろう。
自身の領地内の問題であり、手を出す話ではないともいえる。
しかし、その場合どうしても解決に時間がかかる。それにもしマッキンゼ卿側が敗れるようなことになると、ゼバーシュにも危険が及ぶかもしれない。
「できれば話し合いで解決したいものだが……」
「私もその方が望ましいです。自分の領地で内輪揉めはしたくありません。ただ……」
恐らくマッキンゼ卿は話し合いでの解決を模索して、すでに試みているのだろう。しかしそれが上手くいっていないから2人に頼んでいるのだ。
「……実際にエミリス殿の力を見ないとわからないでしょう。……あの魔法石は最近開発されたものです。元々の魔導士隊と合わせて、今のここの戦力は近隣を圧倒できるはず。それなのに、私がゼバーシュと友誼を結ぶという話を進めようとしているのか、それが理解できないのです」
マッキンゼ卿はひとつため息をつき、エミリスの方を見た。
彼の話も尤もだと理解した。大きな戦力を持っていると、どうしても過信してしまいがちになる。ただ、それはエミリスと共にいる自分にも言えることだと。過信しすぎないことを改めて心に留め置く。
「なるほど……わかりました。協力しましょう。ただ……条件があります」
アティアスはマッキンゼ卿の頼みを受け入れることにした。
「ありがとうございます。条件はなんでしょうか?」
「それは、私たちにマッキンゼ卿も同行していただくことです。……それと、解決したあとセリーナさんを解放させて欲しいと思います。……エミー、勝手に決めてかまわないか?」
「はい、私はかまいません」
2つの条件をマッキンゼ卿に投げかける。
力を見せたあと、スムーズに交渉するためにはマッキンゼ卿の力が必要になると考えた。
また、ファモスを説得できたとしても、セリーナを処罰すると禍根が残ることを懸念したのだ。それにもう、彼女がアティアスを襲うことはないだろう。
「いいでしょう。それは私も考えていました。……セリーナの方はアティアス殿の了解を得る必要があると思っていたのですが、そちらから仰って頂けて助かりました」
マッキンゼ卿は頷く。
「それでは、向こうが動く前に、早々に片付ける方がいいでしょう。アティアス殿はいつ動けますか?」
「2日くらい時間をください。ほぼ体調は戻っていますが、長く動いていなかったので、もう少し身体を慣らしたいのです」
「承知しました。では、明後日ダライに向かいましょう。馬車を手配します」
「よろしくお願いします。……同行者は少ない方がいいと思います」
「あなた方がいれば護衛は要らないのでしょうが、オースチンは連れて行こうと思います」
つまり馬車の御者を除くと、アティアスたち2人とマッキンゼ卿、加えてオースチンとなり、合計4人になる。
不安そうな顔のウィルセアに、エミリスが言う。
「ウィルセア嬢、ご安心ください。そのくらいの人数なら私の力で守れますので」
もちろんアティアスを最優先で守るだろうが、近くにさえいれば一緒に防御壁を張ることができる。
「父をよろしくお願いします。ぜひご無事で帰ってきてください。大きなケーキを準備しておきますから」
微笑みながら話したウィルセアの言葉に、エミリスは目を輝かせる。
なぜ甘いものに目がないことをウィルセアが知っているのかわからなかったが、それは些細なことだ。
「そ、それは魅力的ですね……。私がんばります」
「はい。誕生日ケーキが食べられなかったので、私も残念に思ってましたので」
場の空気を和やかにしてくれたウィルセアに感謝しつつ、アティアスたちはミニーブルの城を後にした。
◆
「特にやることもないけど、ダライに行くまでどうする?」
「そうですねー。私、街を回りたいです」
「良いぞ。エミーとなら安全だし、運動もしないといけないし。ブラブラするか」
「はいっ」
城から出た2人はそのまま街の中心部に向かう。
ゼバーシュほどではないが、かなり栄えていて、いろいろな店があった。
「美味しいお菓子ないかなぁ……」
エミリスはきょろきょろと周りを見渡して、なにか目新しいものがないか探していた。
――ふいに2人に声が掛けられた。
「お二方、ちょっと遊んでいかない?」
声の方を振り向くと、若い女性がいた。
「うち射的屋なんだけど、1回どう?」
笑顔で客引きをしていた女性は、手に小さな弓矢を持っていた。
「射的……ってなんですか?」
初めて聞く言葉だったので、エミリスは彼に聞く。
「ああ、おもちゃの弓で矢を的に当てる遊びだよ。当てた物が貰えるんだ。お菓子とかそんな物だけどな」
「へー、面白そうです。やってみたいですー」
彼女は興味津々で彼にねだる。
「別に構わないぞ? 俺とどっちが多く取れるか勝負するか?」
「ふふー、負けませんしっ」
2人は女性に案内されて近くの店に入った。
的は子供向けと大人向けで2種類あり、大人向けは意外と遠く見えた。
「何回ずつやりますか? 1回で矢は5本です」
「そうだな……とりあえず10本にするか」
アティアスはお金を払い、矢を受け取り、半分をエミリスに渡す。
「エミーは初めてだろ? とりあえず1回目は練習にして、その次の5本で多く当てた方が勝ちな」
「はい、わかりました」
最初にアティアスが手本とばかりに矢を射る。
1本目は惜しくも外れたが、2本目で小さなお菓子の箱に当てた。
「おおー」
エミリスが感嘆するなか、続けて全ての矢を射ると、合計で3つ的に当てることができた。
「ま、こんなものかな。それじゃ、エミーもやってみな」
「はいっ」
彼女が矢をつがえて放つと、見事に明後日の方向に飛んでいってしまった。
「…………あれ?」
不思議そうな顔をしつつも次の矢を放つが、今度は狙った所の反対に飛んでいく。
「むむー! なんかおかしいですっ」
彼女はしかめっつらをして悔しがる。
「弓は意外と難しいからな。すぐ慣れるけど」
結局5本全てかすりもせず、一度も的に当てることができなかった。
「うぐぐ……」
こんなに難しいとは思っていなかった彼女は唇を噛む。
「これは勝負にならないな。勝負はやめておくか?」
「むー、やりますよっ!」
「ははは、それじゃまた俺からやるぞ?」
「どーぞどーぞ」
アティアスは次の5本の矢を射る。
先ほどより感覚が合ってきたのか、5本中4本を当てることができた。
「まずまずだな。5本全部当てればエミーの勝ちだな」
先ほどまでの様子では負けはないだろうと、笑いながら彼女の番を待つ。
「ふふふ……負けませんからっ」
彼女は宣言して1本目の矢を放つ。
するとさっきまでが嘘のように、的の中心に当たったのだ。
「まず1個ですー」
その後も連続して当て続け、結局5本全て的に当ててしまった。
「ふふーん、私の勝ちですねっ!」
唖然とするアティアスに彼女は勝ち誇る。
彼の取った分と合わせてお菓子を大量に入手した彼女は、機嫌よく店を後にした。
「どーです? 本気出せばこんなものですよ」
歩きながら話すエミリスに、アティアスが呟いた。
「……エミー、魔力使ったろ? 反則じゃないか、それ」
「へぇっ? な、なんのこと……でしょうかね……?」
突然の指摘に驚き、しどろもどろに答えるエミリスを見て、確信を深める。
「やっぱりな。いくらなんでもそんな急に上手くはならないだろ」
「あ、あはは……ごめんなさい」
彼の目を誤魔化せなかった彼女は、素直に謝ることにした。
エミリスは矢を魔力で誘導して、的に当てていたのだ。
「ま、使ったらダメってルールでもないし、俺の負けで良いさ。……でも、そんなこともできるんだな。確実に狙った所に当てられるのは便利だな」
「あ、はい。石を撃つのに比べると、軌道を変えるだけなので簡単です。逆に、飛んできた矢を逸らすこともできますよ」
「そうか、もしそういう時は頼むな。無いにこしたことはないけど」
「ええ、おまかせを」
◆◆◆
【第6章 あとがき】
「お久しぶりですね!」
「ああ。思ったより長かったな」
宿に帰った二人は夕食を終え、デザートを食べながらゆっくりとしていた。
「ふふ、アティアス様がお亡くなりになって、話が終わっちゃうかとドキドキしましたよー」
「エミーがいなかったら死んでたよな。ありがとう」
彼女の頭を撫でると、嬉しそうに笑顔を見せた。
「ところで、アティアス様?」
「なんだ?」
余韻に浸りながら、エミリスはふと疑問を投げかける。
「読者さんからの感想とか全然ないんですけど、なんでですかね? もしかして、私嫌われてます?」
「あのなぁ……。反応なくてもしおりは動いてるんだから、読んでくれてるはずだぞ?」
「それはまぁ分かりますけど……」
「まぁ、確かにエミーの気持ちも分かるけどな」
「ですよねぇ……。あ、私デザートのお代わりが欲しいです」
話の途中でさっさとエミリスは席を立ち、追加のケーキを持ってくる。
「ふふー。秘蔵のケーキ美味しいです。アティアス様も一口どうです?」
その様子に呆れつつも、アティアスは続ける。
「いや、俺は良いよ」
「そうですか。なら、私が食べちゃいますよ?」
彼女はそう言いながら、フォークに刺した大きなケーキの塊を嬉しそうに口に含む。
満足そうに飲み込んだあと、口元をナプキンで拭いた。
「……それで、次話から第7章ですね。……これで一区切りになるようなので、もう少しお付き合いくださいね」
「と言っても、まだその先もあるみたいだけどな」
「作者もよくこんなに書きましたねぇ……。これ、処女作なんでしょ?」
「そう聞いてるぞ、俺は」
「ふふ、まぁそれに私たちを選んでくれてありがたいとは思いますけどね。無事に完結できることだけ、祈っておきますよ」
そう言ってエミリスは食後のお茶に手を付けた。
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