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第1章 テンセズにて
第9話 希望
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「――!!」
次に彼女が目を覚ましたときは、もう正午を回っていた。
慌てて飛び起きる。
ようやく頭痛は無くなっていた。
昼の用意をしないと……!
と思い厨房に向かう。
しかし、そこには誰かが準備してくれたのか、テーブルの上にパンと冷たいお茶を置いてくれていた。
アティアス達はいない。
町の後始末のために外出しているのだろうか。
……そういえば後始末に数か月かかると仰っていたけれど、そのあとはどうなるのかな?
考えながら彼女は席に座り、一人パンを頬張る。
美味しいが、少し寂しい。
みんなと食べる方がいいなぁ……。
夕食はまた頑張って作ろう、笑顔で食べてほしい。そう思った。
◆
一人で食事を摂ったあと、洗濯や家の掃除などをやっているときアティアスが戻ってきた。
ノードはまだのようだが、アティアスの顔を見ると嬉しくて自然に笑顔になる。
「おかえりなさいませ」
頭を下げて迎える。
「ああ、ただいま。……もう大丈夫?」
「はい。もうすっきり元通りです。ご迷惑をおかけしてすみません」
「気にしなくていい。元気になってよかったよ」
彼の気遣いを嬉しく思う。
「ありがとうございます。今晩も腕によりをかけてお作りしますね。……あと……その、ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか……?」
「ん? なんだ?」
エミリスは一人で昼食を摂ったときから気になっていたことを思い切って聞いてみる。
「アティアス様は、この町が落ち着いたら……どうされるおつもりでしょうか……?」
彼女の問いに、アティアスは少し考え答えた。
「そうだな……今のところは一度ゼバーシュに帰ろうと思っている。しばらく戻っていないからな。そのあとはまた冒険者として国を旅するつもりだ」
つまり、今の生活はやはりあと数ヶ月ということか。不安に思いながらも更に質問する。
「……その旅に、私もご同行させて頂いても構わないでしょうか?」
「うーん……旅に出ると自分の身は自分で守らないといけない。俺はエミーを危険な目には遭わせたくない。だから……旅に連れて行くことはできないと思う。ゼバーシュなら安全だから、そこで待ってもらうのが良いかなとは思ってるけど……」
また少し考えて、アティアスは言いにくそうに話す。
ずっと彼の傍で仕えさせてほしいと思っていたが、彼の優しさも理解でき、口には出せなかった。
もし付いていくと自分が足手まといになるのは間違いない。
でも、彼が何カ月も旅に出ている間、ずっとひとりで待つことに我慢できると思えなかった。自分はこれからどうすればいいのだろうか。
「そうですか……承知しました」
そう返事をしたものの、傍目から見てもがっかりした様子で彼女は肩を落とした。
◆
「……あの子、今日は元気ないみたいだけど何かあったの? 昨日飲み過ぎたせい?」
今晩もナハト達を夕食に招待していた。料理はしっかりと準備されていたが、どうにも元気のなさそうなエミリスを見たミリーがアティアスに小声で耳うちした。彼は言いにくそうに答える。
「いや……今後のことを聞かれたんだ。旅に付いていきたいって言われたけど、危ないからダメだと。……そう伝えた」
「んー、なるほどね。でもそれ、あたしにもあの子の気持ち分かるわぁ……」
ミリーは納得した様子。
トーレスと組んで冒険者になったミリーだけに、なにか思うところがあるのかもしれない。
「それに昨日の彼女、覚えてるでしょ? 可哀想だと思わない?」
「それはそうだけど……だからと言って魔物とか野盗とかから、俺達だけで守るのは無理だと思う。一時的になら馬車を使えば良いが、旅は長いからな……」
「それもそうよねぇ……」
ミリーは答えには納得したようだが、腕を組んで何やら考えごとをしている。
「……よしっ! あたしが一肌脱いであげる」
突然そう言って、ミリーはエミリスを手招きする。怪訝そうな顔で近づいてきた彼女の肩を後ろから抱いて、ミリーはアティアスに言う。
「ようするに、この子が足手まといじゃなくて、自分で身を守れるのなら良いんでしょ?」
「……まぁ……それはその通りではあるけど……」
ミリーの意図がわかりかねるが、内容には同意できた。
「なら、まだこの町に何ヶ月か居るわけでしょ? その間、あたしがこの子を鍛えてあげる。どう?」
「ええっ?」
話についていけていないエミリスは困惑する。
「エミーはアティアスと一緒に行きたいんでしょ? あなたが自分で身を守れるくらいになったら連れて行ってもいいよと、アティアスはそう言ってるの。ダメ元でやってみない?」
エミリスはようやく理解し、真剣な顔で頷いた。
「は、はいっ! 私頑張ります!」
それを見ていたトーレスも言う。
「ミリーがそう言うなら、私も協力するよ。……3か月だとすると、戦力になるのは難しいだろうけど、ちょっとした護身術くらいならできるようになると思う」
「あ……ありがとうございます!」
エミリスは深々と頭を下げた。
「そうと決まったら、とりあえず乾杯だな!」
横で聞いていたナハトが無理やり彼女にグラスを渡し、お酒を注ぐ。
「明日から大変だぞ?」
「ちょ、ちょっと待って……私お酒はもう飲まないって決めてますから……」
今朝の誓いを思い出したが、断ることはできなさそうだった。
意を決して彼女はグラスの中身を飲み干した。
◆
「うう……頭が痛いです……」
またしても気が付いたら朝だった……。
飲み始める前の記憶がうっすらと残っているだけで、その後のことはわからなかった。
またやってしまったようだった。
確か、今日からミリーさんと練習をすることになってたはず。
早く起きないと……。
ズキズキする頭を抱えてベッドから這い出る。足元に注意しつつ、階段を降りる。
あ……そういえばお風呂に入ってない気がする……。
あれ? よく考えたら昨日も……?
慌てて自分の臭いを確認するが、今はまだ寒い時期なのが幸いしてか、お酒の匂いがするだけだった。
とりあえずは安堵する。
後でお風呂に入ることにして、まずは食堂へ向かう。
「おはよう。よく寝られたみたいね。……でもその感じだと、すぐ練習するのは無理そうかな?」
アティアス、ノードと談笑していたミリーは、エミリスに顔を向けて声をかけた。
「おはようございます……。すみません……またお恥ずかしいところを……」
せっかく朝から来てくれているのに申し訳なく思う。
「気にしないで。……面白いものも見られたし……ね?」
ミリーが笑ってアティアスに目配せする。彼は苦笑いを浮かべているだけだった。
……もしかして、昨晩も何か……?
さーっと顔が青ざめる。
「ちょ、ちょっと待ってください……。私……昨日何をしたんですか……?」
エミリスの問いにミリーが答える。
「ふふふっ、それは秘密よ」
お茶を濁すミリーを見て、余程のことをやらかしたのだと確信した。
「ああぁ……」
両手で顔を覆い、がっくりと膝をついた。
◆
「練習はともかく、せっかく来たからね……あ、そうだ! エミーって魔力検査なんてしたことないでしょ? ギルドでできるからやってみない?」
思いついたようにミリーが言うと、ノードも同意する。
「そうだな、戦いは剣だけじゃないし、もし魔法が使えると便利だからな」
それに対して、エミリスが疑問を投げかける。
「魔力検査……ですか。どんなことをするんですか?」
「検査用の紙があって、それに少し血をつけるだけでどのくらいの魔力適性かわかるんだ。魔力は遺伝だからね」
代わってアティアスが答える。
「なるほど……。はい、受けてみようと思います」
自分に何ができるかまだわからないが、少しでも役に立てるかもしれないなら。
「……でも、その前にお風呂に入りたいです……」
さすがにお酒の匂いをぷんぷんさせた状態で出かけるのは、恥ずかしすぎる。
「そうだな。じゃお湯を沸かしておくから、着替えとか準備をしておいで」
「ありがとうございます」
エミリスはアティアスにお礼を言って部屋に戻った。
◆
「はー、気持ちいい……」
エミリスは身体を綺麗に洗ってから、ゆっくりと湯船に浸かった。
自然に声が出る。そういえばシオスンの屋敷にいた頃は、時間も限られていてお風呂を楽しんだりもできなかった。
がらがらがら……。
突然お風呂の戸が開けられ、エミリスは驚く。
「やっほー、お湯加減はどう?」
ミリーだった。
安堵したエミリスは答える。
「あっ、はい。ちょうどいいです」
「よかったー。一緒に入ってもいい?」
エミリスの答えを聞く前に、ミリーはもう入ってきていた。
「前から思ってたけど……エミーの肌すごく綺麗よねー? 痣がまだ少し残ってるけど。……あたしより年上って、絶対嘘でしょ?」
エミリスの背中に指を這わせながら、ミリーは聞いてみる。
「ひゃあっ! やめてください……そんなことまで私話したんですか……? いえ、嘘じゃないですよ……」
ぞわっとする感触に身悶えながらエミリスが答えた。
歳のことを話した記憶はないのだが、彼女が知っているということは自分が話したのだろう。
「そう? どっちにしても羨ましいわー。この身体で迫ったら彼だってすぐ落とせるわよ。男はみんな若い子が好きなんだから……」
はー、とため息を吐きながらミリーが言う。
「そ……そんなこと……私できませんよぅ……」
エミリスは赤くなった顔を隠すように湯船に深く浸かり、ぼそっと返す。
「はー、可愛いわねー。お酒飲んでるときはあんなに大胆なのに……」
ミリーは揶揄う。
昨日の私は何をしたんだろうか……?
考えてみたが、やはり思い出せない。
「昨日のこと、教えてはくれないんですか……?」
駄目元で聞いてみたが、ミリーは笑いながら、秘密!と答えた。
次に彼女が目を覚ましたときは、もう正午を回っていた。
慌てて飛び起きる。
ようやく頭痛は無くなっていた。
昼の用意をしないと……!
と思い厨房に向かう。
しかし、そこには誰かが準備してくれたのか、テーブルの上にパンと冷たいお茶を置いてくれていた。
アティアス達はいない。
町の後始末のために外出しているのだろうか。
……そういえば後始末に数か月かかると仰っていたけれど、そのあとはどうなるのかな?
考えながら彼女は席に座り、一人パンを頬張る。
美味しいが、少し寂しい。
みんなと食べる方がいいなぁ……。
夕食はまた頑張って作ろう、笑顔で食べてほしい。そう思った。
◆
一人で食事を摂ったあと、洗濯や家の掃除などをやっているときアティアスが戻ってきた。
ノードはまだのようだが、アティアスの顔を見ると嬉しくて自然に笑顔になる。
「おかえりなさいませ」
頭を下げて迎える。
「ああ、ただいま。……もう大丈夫?」
「はい。もうすっきり元通りです。ご迷惑をおかけしてすみません」
「気にしなくていい。元気になってよかったよ」
彼の気遣いを嬉しく思う。
「ありがとうございます。今晩も腕によりをかけてお作りしますね。……あと……その、ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか……?」
「ん? なんだ?」
エミリスは一人で昼食を摂ったときから気になっていたことを思い切って聞いてみる。
「アティアス様は、この町が落ち着いたら……どうされるおつもりでしょうか……?」
彼女の問いに、アティアスは少し考え答えた。
「そうだな……今のところは一度ゼバーシュに帰ろうと思っている。しばらく戻っていないからな。そのあとはまた冒険者として国を旅するつもりだ」
つまり、今の生活はやはりあと数ヶ月ということか。不安に思いながらも更に質問する。
「……その旅に、私もご同行させて頂いても構わないでしょうか?」
「うーん……旅に出ると自分の身は自分で守らないといけない。俺はエミーを危険な目には遭わせたくない。だから……旅に連れて行くことはできないと思う。ゼバーシュなら安全だから、そこで待ってもらうのが良いかなとは思ってるけど……」
また少し考えて、アティアスは言いにくそうに話す。
ずっと彼の傍で仕えさせてほしいと思っていたが、彼の優しさも理解でき、口には出せなかった。
もし付いていくと自分が足手まといになるのは間違いない。
でも、彼が何カ月も旅に出ている間、ずっとひとりで待つことに我慢できると思えなかった。自分はこれからどうすればいいのだろうか。
「そうですか……承知しました」
そう返事をしたものの、傍目から見てもがっかりした様子で彼女は肩を落とした。
◆
「……あの子、今日は元気ないみたいだけど何かあったの? 昨日飲み過ぎたせい?」
今晩もナハト達を夕食に招待していた。料理はしっかりと準備されていたが、どうにも元気のなさそうなエミリスを見たミリーがアティアスに小声で耳うちした。彼は言いにくそうに答える。
「いや……今後のことを聞かれたんだ。旅に付いていきたいって言われたけど、危ないからダメだと。……そう伝えた」
「んー、なるほどね。でもそれ、あたしにもあの子の気持ち分かるわぁ……」
ミリーは納得した様子。
トーレスと組んで冒険者になったミリーだけに、なにか思うところがあるのかもしれない。
「それに昨日の彼女、覚えてるでしょ? 可哀想だと思わない?」
「それはそうだけど……だからと言って魔物とか野盗とかから、俺達だけで守るのは無理だと思う。一時的になら馬車を使えば良いが、旅は長いからな……」
「それもそうよねぇ……」
ミリーは答えには納得したようだが、腕を組んで何やら考えごとをしている。
「……よしっ! あたしが一肌脱いであげる」
突然そう言って、ミリーはエミリスを手招きする。怪訝そうな顔で近づいてきた彼女の肩を後ろから抱いて、ミリーはアティアスに言う。
「ようするに、この子が足手まといじゃなくて、自分で身を守れるのなら良いんでしょ?」
「……まぁ……それはその通りではあるけど……」
ミリーの意図がわかりかねるが、内容には同意できた。
「なら、まだこの町に何ヶ月か居るわけでしょ? その間、あたしがこの子を鍛えてあげる。どう?」
「ええっ?」
話についていけていないエミリスは困惑する。
「エミーはアティアスと一緒に行きたいんでしょ? あなたが自分で身を守れるくらいになったら連れて行ってもいいよと、アティアスはそう言ってるの。ダメ元でやってみない?」
エミリスはようやく理解し、真剣な顔で頷いた。
「は、はいっ! 私頑張ります!」
それを見ていたトーレスも言う。
「ミリーがそう言うなら、私も協力するよ。……3か月だとすると、戦力になるのは難しいだろうけど、ちょっとした護身術くらいならできるようになると思う」
「あ……ありがとうございます!」
エミリスは深々と頭を下げた。
「そうと決まったら、とりあえず乾杯だな!」
横で聞いていたナハトが無理やり彼女にグラスを渡し、お酒を注ぐ。
「明日から大変だぞ?」
「ちょ、ちょっと待って……私お酒はもう飲まないって決めてますから……」
今朝の誓いを思い出したが、断ることはできなさそうだった。
意を決して彼女はグラスの中身を飲み干した。
◆
「うう……頭が痛いです……」
またしても気が付いたら朝だった……。
飲み始める前の記憶がうっすらと残っているだけで、その後のことはわからなかった。
またやってしまったようだった。
確か、今日からミリーさんと練習をすることになってたはず。
早く起きないと……。
ズキズキする頭を抱えてベッドから這い出る。足元に注意しつつ、階段を降りる。
あ……そういえばお風呂に入ってない気がする……。
あれ? よく考えたら昨日も……?
慌てて自分の臭いを確認するが、今はまだ寒い時期なのが幸いしてか、お酒の匂いがするだけだった。
とりあえずは安堵する。
後でお風呂に入ることにして、まずは食堂へ向かう。
「おはよう。よく寝られたみたいね。……でもその感じだと、すぐ練習するのは無理そうかな?」
アティアス、ノードと談笑していたミリーは、エミリスに顔を向けて声をかけた。
「おはようございます……。すみません……またお恥ずかしいところを……」
せっかく朝から来てくれているのに申し訳なく思う。
「気にしないで。……面白いものも見られたし……ね?」
ミリーが笑ってアティアスに目配せする。彼は苦笑いを浮かべているだけだった。
……もしかして、昨晩も何か……?
さーっと顔が青ざめる。
「ちょ、ちょっと待ってください……。私……昨日何をしたんですか……?」
エミリスの問いにミリーが答える。
「ふふふっ、それは秘密よ」
お茶を濁すミリーを見て、余程のことをやらかしたのだと確信した。
「ああぁ……」
両手で顔を覆い、がっくりと膝をついた。
◆
「練習はともかく、せっかく来たからね……あ、そうだ! エミーって魔力検査なんてしたことないでしょ? ギルドでできるからやってみない?」
思いついたようにミリーが言うと、ノードも同意する。
「そうだな、戦いは剣だけじゃないし、もし魔法が使えると便利だからな」
それに対して、エミリスが疑問を投げかける。
「魔力検査……ですか。どんなことをするんですか?」
「検査用の紙があって、それに少し血をつけるだけでどのくらいの魔力適性かわかるんだ。魔力は遺伝だからね」
代わってアティアスが答える。
「なるほど……。はい、受けてみようと思います」
自分に何ができるかまだわからないが、少しでも役に立てるかもしれないなら。
「……でも、その前にお風呂に入りたいです……」
さすがにお酒の匂いをぷんぷんさせた状態で出かけるのは、恥ずかしすぎる。
「そうだな。じゃお湯を沸かしておくから、着替えとか準備をしておいで」
「ありがとうございます」
エミリスはアティアスにお礼を言って部屋に戻った。
◆
「はー、気持ちいい……」
エミリスは身体を綺麗に洗ってから、ゆっくりと湯船に浸かった。
自然に声が出る。そういえばシオスンの屋敷にいた頃は、時間も限られていてお風呂を楽しんだりもできなかった。
がらがらがら……。
突然お風呂の戸が開けられ、エミリスは驚く。
「やっほー、お湯加減はどう?」
ミリーだった。
安堵したエミリスは答える。
「あっ、はい。ちょうどいいです」
「よかったー。一緒に入ってもいい?」
エミリスの答えを聞く前に、ミリーはもう入ってきていた。
「前から思ってたけど……エミーの肌すごく綺麗よねー? 痣がまだ少し残ってるけど。……あたしより年上って、絶対嘘でしょ?」
エミリスの背中に指を這わせながら、ミリーは聞いてみる。
「ひゃあっ! やめてください……そんなことまで私話したんですか……? いえ、嘘じゃないですよ……」
ぞわっとする感触に身悶えながらエミリスが答えた。
歳のことを話した記憶はないのだが、彼女が知っているということは自分が話したのだろう。
「そう? どっちにしても羨ましいわー。この身体で迫ったら彼だってすぐ落とせるわよ。男はみんな若い子が好きなんだから……」
はー、とため息を吐きながらミリーが言う。
「そ……そんなこと……私できませんよぅ……」
エミリスは赤くなった顔を隠すように湯船に深く浸かり、ぼそっと返す。
「はー、可愛いわねー。お酒飲んでるときはあんなに大胆なのに……」
ミリーは揶揄う。
昨日の私は何をしたんだろうか……?
考えてみたが、やはり思い出せない。
「昨日のこと、教えてはくれないんですか……?」
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