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しおりを挟む授業で津島衛とあたった。
澄也は推薦で中途編入を許された衛のことを測ってやろうと思っていた。
周りだってそう思っていたのだろう。
鼻っ柱を折ってやるのも優しさのうちだ。
同じ年代の中で一番強いわけではないが、そこそこ強い。
それが澄也に対する周りの評価だ。
開始して一手目で、俺は津島の強さに愕然とした。
第一に速さが違う。早すぎる。身体が反応できない速さだ。
相手の隙を突くその正確さも、その隙のない構えも、どれをとってもいきなり士官学校にぶち込まれた男には見えない。
圧倒的な身体のキレの良さと天性のものだろう身体のバネ、神がかった動体視力の良さがそれを可能にしている。
次の一手など見透かしているとばかりの冷めた瞳が印象的で、澄也はその目が嫌だと思った。
はぁはぁとロクに動けもしなかったくせにやけに呼吸が乱れているのは相手の強さに圧倒されたからに他ならない。
二手分しか動いていないのに額からは汗がどばどばと溢れてきて、こめかみを流れ落ちていく。
澄也は目を見開いたまま、一ミリも感情を動かさない津島の顔を凝視する。
あまりに澄也が見つめるからか、津島は鬱陶しそうな表情に変わる。
その日澄也は初めてホンモノの「天才」を認識した。
一度だけ相手の攻撃を防御した、それだけでも行幸だろう。
二手目で澄也は負けた。
一撃目を防いだ剣を持っていた手はぶるぶると痺れ、みっともなく震えている。
そうっと広げた掌は両手とも真っ赤になっていた。
完膚なきまでにやられた。目で動きは追えたが身体は全く反応できなかった。
しかし澄也はそんなことでくじける「タマ」ではない。
見えるのならまだやることはある。
これまで通り地道に練習する、それだけが澄也の出来ることだ。
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