怪異退治はアクマでゴリ押し

染西 乱

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「私がもう少し早く駆けつけられればよかったんだが……」

コヨミ様は、思い出したのか早都子ねぇさまに言うが、その表情は特にいつもと変わりのないものだ。

「いえ……そんな……コヨミ様には感謝してます……すぐに助けに来てくださったおかげで……私はたすかつたんです」

早都子ねぇさまの顔には、自分も助からなくてもよかった、とでもいいたそうなものになっていたが、助けてくれたコヨミ様の手前、取り繕うようにコヨミさまに礼を言っている。

私はなにもいうべき言葉が見つからずに黙って目の前のドーナツを貪る。

悪魔から早都子ねぇさまを庇って旦那さまは亡くなってしまったらしい。
と言うことは目の前で、ということだろう。

へたな慰めは逆効果になりうる。

無くしたものの大きさは本人にしかわからない。

サイリの周りにも、色んな要因で大切な人をなくした人は何人かいる。結局は本人がどうにかして踏ん切りをつけるしかなく、1番効くものは時間経過だ。

早都子ねぇさまの瞳はわずかに潤んでいるが、それよりも強い復讐心が見てとれた。

早都子ほどの器量良しが、こんな危険な仕事をしているのはなぜだろうと思っていたサイリは、深く納得した。

これから早都子の前では、そういった話題はそれとなく避けるようにしなければと思う。あぁ、でもあからさまに避けてまくると逆にいやらしいかな。

しかしサイリにとっては恋愛要素を持った話題など日頃からあまり口に上らないのだし気をつけてしまえば未来永劫話題にならない可能性すらある。

サイリは父母が決めてきた縁談とか、お見合いとかそのようなもので伴侶を決めるだろうと思っている。
今まで吐きそうなほど好きとか毎日会いたいとか、そういった感情を未だ感じたことがない。
縁があって結婚すればきっと相手のことを好きになるだろうだとか楽観的に考えている。

ドーナツとコーヒーを上品に食べ終わったコヨミ様は置いてあったお手拭きで一度丹念に手を拭ってから、こちらにはお構いなしに「神田川からの報告書は読んだか?」と早都子ねぇさまに聞く。

神田川というのは、厳ついおじさん隊員のことだ。
顔に似合わず優しいおじさんだ。

サイリは内心、え、もう旦那さんの話とかそういうしんみりした空気は終わりでいいのか? と思ったが、口を出すべきではないと口をつぐんだまま、口内の砂糖に塗れたドーナツを咀嚼する。

「はい……こちらも神田川さんと同じような状況です」

「そうか」

コヨミ様は考えるように片眉をあげた。
報告書など読まないサイリには全くわからないので、サイリはまだ黙っている。


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