40 / 53
39
しおりを挟む
「ぁぁ……どこかって……? 馴染みのある場所だとは思うがな」
すたすたと歩いて行く様子には全く迷いがない。
「歩きってことはここから近いんですね」
先ほどの喫茶は大通りに面していた。
まだ仕事の終わる時間には早いが、そこそこの人通りがある。
やけに足の長いコヨミ様は歩くのも早い。
サイリは小走りになりながら、背筋の伸びたコヨミ様の後ろをついていく。
歩いているだけなのに妙に育ちの良さが透けてみえるのは不思議だ。普通の歩き方とどこが違うんだろうか。
「うっ、はぁ、……ぁ゛ー、も、もう少し歩く速度を……!」
サイリはあまり運動は得意ではない。
短距離走や、走り高跳びなど一瞬で終わるようなものは割と得意ではあるが、その他のいわゆる【持久力】が問われるものはことごとく苦手だ。
息を切らしたサイリは、遠くなってしまったコヨミ様の背に向かって精一杯叫んだ。
コヨミ様はようやくサイリを置いて言っていることに気づき、足を止めてくれた。
「……軟弱だな……」
肩で息をするサイリがへろへろとコヨミ様のところまで歩くと、コヨミ様は呆れたといいたげな顔をしてサイリを見ている。
コヨミ様は見た目の線の細さとは違い、体力がありそうだった。
「あと二分ほどで着くんだが」
「あっ、はい……ちょっとだけ休んでから……お願いします……」
次の現場ではサイリが場を収める手筈だったはずだ。
せめて呼吸がいつも通りに落ち着くまでは休みたい。
「お前は少し痩せすぎだからな、きちんと食事を取れ」
コヨミ様だけには言われたくない言葉だ。
「食べてますよ。むしろ他の人よりも食べる方です。よく食べるねっていつも驚かれるぐらいです」
サイリの身体は燃費が悪い。
人の二倍ほどのご飯を食べてもすぐにお腹が空いてしまう。
コヨミ様のように一食抜こうものなら、貧血と空腹で目が回り倒れること必至だ。
コヨミ様は、興味深そうにサイリを見ている。
「そうか……それはおもしろい」
コヨミ様はつるりとした人形めいた顔にやや微笑みを浮かべている。しかしその顔は美しいためさらに人形めいてみえる。
「そろそろ行くぞ」
すたすたと歩いて行く様子には全く迷いがない。
「歩きってことはここから近いんですね」
先ほどの喫茶は大通りに面していた。
まだ仕事の終わる時間には早いが、そこそこの人通りがある。
やけに足の長いコヨミ様は歩くのも早い。
サイリは小走りになりながら、背筋の伸びたコヨミ様の後ろをついていく。
歩いているだけなのに妙に育ちの良さが透けてみえるのは不思議だ。普通の歩き方とどこが違うんだろうか。
「うっ、はぁ、……ぁ゛ー、も、もう少し歩く速度を……!」
サイリはあまり運動は得意ではない。
短距離走や、走り高跳びなど一瞬で終わるようなものは割と得意ではあるが、その他のいわゆる【持久力】が問われるものはことごとく苦手だ。
息を切らしたサイリは、遠くなってしまったコヨミ様の背に向かって精一杯叫んだ。
コヨミ様はようやくサイリを置いて言っていることに気づき、足を止めてくれた。
「……軟弱だな……」
肩で息をするサイリがへろへろとコヨミ様のところまで歩くと、コヨミ様は呆れたといいたげな顔をしてサイリを見ている。
コヨミ様は見た目の線の細さとは違い、体力がありそうだった。
「あと二分ほどで着くんだが」
「あっ、はい……ちょっとだけ休んでから……お願いします……」
次の現場ではサイリが場を収める手筈だったはずだ。
せめて呼吸がいつも通りに落ち着くまでは休みたい。
「お前は少し痩せすぎだからな、きちんと食事を取れ」
コヨミ様だけには言われたくない言葉だ。
「食べてますよ。むしろ他の人よりも食べる方です。よく食べるねっていつも驚かれるぐらいです」
サイリの身体は燃費が悪い。
人の二倍ほどのご飯を食べてもすぐにお腹が空いてしまう。
コヨミ様のように一食抜こうものなら、貧血と空腹で目が回り倒れること必至だ。
コヨミ様は、興味深そうにサイリを見ている。
「そうか……それはおもしろい」
コヨミ様はつるりとした人形めいた顔にやや微笑みを浮かべている。しかしその顔は美しいためさらに人形めいてみえる。
「そろそろ行くぞ」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる