35 / 53
34
しおりを挟む
なぜか昼ごはんを共にする約束をしてしまったサイリは、今日も昼ごはんを食べていないとなどというコヨミに呆れ返り、外回りとやらにいく前に食堂でなにかたべましょうよと提案する。
「……それは無理だな。もう食堂は閉まっている時間だ」
「そこはコヨミ様の力でどうにかなんないんですか?」
「ならないな」
「はぁー」
サイリはもう行くぞとばかりに立ち上がって上着を着たコヨミを見上げて、ため息をついた。
コヨミとサイリの服は完全にお揃いだ。
いや、逆に完全にお揃いすぎてめちゃくちゃ組織っぽいから痛い恋人同士には見えないのが不幸中の幸いと言える。
「今日どの辺りに行く予定なんですか?」
「いろいろだな」
すでにコヨミの空腹は向こう側とやらに行ってしまったらしい。
事前に教えてもらえないのは、信頼がないからかと思ったけれど、それは違った。
近くの噴水のある大きな広場から始まった【外回り】は、墓場や、寺社、神社といったいかにもな場所や、帝国劇場、博物館や学芸館、図書館といった知識層が好きそうな場所、若者が多数あつまる学校や人気のお店など多岐にわたる。
悪魔が出没しやすい場所というのがあるのだという。
それは大抵の場合は人通りの多い場所にあり、甚大な被害を産む前に定期的に見回りしていると言うことらしい。
まだイタズラぐらいしかできない下等悪魔に何度か遭遇した。
放置しておくと、出没する悪魔が変化して段々と強い悪魔が現れるようになるのだという。
サイリにとって1番身近だったのは学校だった。
それもサイリの通う学校まではかなり近い。
うちの学生も帰り道に通っているような大通りから一般入っただけのなんの変哲もない場所だった。
コヨミやサイリからすれば脆弱な悪魔でしかないが、対抗手段を持たない人たちからすれば脅威に違いない。
サイリは地味な仕事を淡々とこなすコヨミを少し見直した。
「……あの、疲れました…ちょっと休憩を……」
歩き疲れたサイリの前には、クリームソーダなるメニューの写真がある。
それにケーキセットに、プリンアラモード……
心の高鳴るものばかりが並んでいる。
「ほら、コヨミ様も! お昼食べてないんですよね⁉︎ サンドイッチとか! ホットドッグとかありますよ!」
ガラス張りの小洒落た喫茶店の店の前にしてサイリはいくぶん元気を取り戻している。
「……まぁいいが……」
「えっ、ほんとですか? もう口がクリームソーダの口になってたんですよ~ コヨミ様はサンドイッチですか? それともがっつりカレーとか?」
うきうきと店に入ったサイリは店員にふたりです!と元気よく伝える。
案内された席は四人掛けのソファ席で、窓に面していて外を歩く人々が見えている。
机の上に置かれたメニューをコヨミ様の方に差し出したサイリは店員が持ってきたお冷をごくごくと勢いよく飲み干した。
思っていたよりも喉が渇いていたらしい。
あっという間になくなってしまったお冷のグラスを置いて、熱々のおしぼりで手を拭く。
熱が手を包み込んで、血液が元気に巡る。
「決まりました?」
コヨミはメニューをぺらぺらと何度もめくり、数度往復している。
「……それは無理だな。もう食堂は閉まっている時間だ」
「そこはコヨミ様の力でどうにかなんないんですか?」
「ならないな」
「はぁー」
サイリはもう行くぞとばかりに立ち上がって上着を着たコヨミを見上げて、ため息をついた。
コヨミとサイリの服は完全にお揃いだ。
いや、逆に完全にお揃いすぎてめちゃくちゃ組織っぽいから痛い恋人同士には見えないのが不幸中の幸いと言える。
「今日どの辺りに行く予定なんですか?」
「いろいろだな」
すでにコヨミの空腹は向こう側とやらに行ってしまったらしい。
事前に教えてもらえないのは、信頼がないからかと思ったけれど、それは違った。
近くの噴水のある大きな広場から始まった【外回り】は、墓場や、寺社、神社といったいかにもな場所や、帝国劇場、博物館や学芸館、図書館といった知識層が好きそうな場所、若者が多数あつまる学校や人気のお店など多岐にわたる。
悪魔が出没しやすい場所というのがあるのだという。
それは大抵の場合は人通りの多い場所にあり、甚大な被害を産む前に定期的に見回りしていると言うことらしい。
まだイタズラぐらいしかできない下等悪魔に何度か遭遇した。
放置しておくと、出没する悪魔が変化して段々と強い悪魔が現れるようになるのだという。
サイリにとって1番身近だったのは学校だった。
それもサイリの通う学校まではかなり近い。
うちの学生も帰り道に通っているような大通りから一般入っただけのなんの変哲もない場所だった。
コヨミやサイリからすれば脆弱な悪魔でしかないが、対抗手段を持たない人たちからすれば脅威に違いない。
サイリは地味な仕事を淡々とこなすコヨミを少し見直した。
「……あの、疲れました…ちょっと休憩を……」
歩き疲れたサイリの前には、クリームソーダなるメニューの写真がある。
それにケーキセットに、プリンアラモード……
心の高鳴るものばかりが並んでいる。
「ほら、コヨミ様も! お昼食べてないんですよね⁉︎ サンドイッチとか! ホットドッグとかありますよ!」
ガラス張りの小洒落た喫茶店の店の前にしてサイリはいくぶん元気を取り戻している。
「……まぁいいが……」
「えっ、ほんとですか? もう口がクリームソーダの口になってたんですよ~ コヨミ様はサンドイッチですか? それともがっつりカレーとか?」
うきうきと店に入ったサイリは店員にふたりです!と元気よく伝える。
案内された席は四人掛けのソファ席で、窓に面していて外を歩く人々が見えている。
机の上に置かれたメニューをコヨミ様の方に差し出したサイリは店員が持ってきたお冷をごくごくと勢いよく飲み干した。
思っていたよりも喉が渇いていたらしい。
あっという間になくなってしまったお冷のグラスを置いて、熱々のおしぼりで手を拭く。
熱が手を包み込んで、血液が元気に巡る。
「決まりました?」
コヨミはメニューをぺらぺらと何度もめくり、数度往復している。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる