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なぜか昼ごはんを共にする約束をしてしまったサイリは、今日も昼ごはんを食べていないとなどというコヨミに呆れ返り、外回りとやらにいく前に食堂でなにかたべましょうよと提案する。
「……それは無理だな。もう食堂は閉まっている時間だ」
「そこはコヨミ様の力でどうにかなんないんですか?」
「ならないな」
「はぁー」
サイリはもう行くぞとばかりに立ち上がって上着を着たコヨミを見上げて、ため息をついた。
コヨミとサイリの服は完全にお揃いだ。
いや、逆に完全にお揃いすぎてめちゃくちゃ組織っぽいから痛い恋人同士には見えないのが不幸中の幸いと言える。
「今日どの辺りに行く予定なんですか?」
「いろいろだな」
すでにコヨミの空腹は向こう側とやらに行ってしまったらしい。
事前に教えてもらえないのは、信頼がないからかと思ったけれど、それは違った。
近くの噴水のある大きな広場から始まった【外回り】は、墓場や、寺社、神社といったいかにもな場所や、帝国劇場、博物館や学芸館、図書館といった知識層が好きそうな場所、若者が多数あつまる学校や人気のお店など多岐にわたる。
悪魔が出没しやすい場所というのがあるのだという。
それは大抵の場合は人通りの多い場所にあり、甚大な被害を産む前に定期的に見回りしていると言うことらしい。
まだイタズラぐらいしかできない下等悪魔に何度か遭遇した。
放置しておくと、出没する悪魔が変化して段々と強い悪魔が現れるようになるのだという。
サイリにとって1番身近だったのは学校だった。
それもサイリの通う学校まではかなり近い。
うちの学生も帰り道に通っているような大通りから一般入っただけのなんの変哲もない場所だった。
コヨミやサイリからすれば脆弱な悪魔でしかないが、対抗手段を持たない人たちからすれば脅威に違いない。
サイリは地味な仕事を淡々とこなすコヨミを少し見直した。
「……あの、疲れました…ちょっと休憩を……」
歩き疲れたサイリの前には、クリームソーダなるメニューの写真がある。
それにケーキセットに、プリンアラモード……
心の高鳴るものばかりが並んでいる。
「ほら、コヨミ様も! お昼食べてないんですよね⁉︎ サンドイッチとか! ホットドッグとかありますよ!」
ガラス張りの小洒落た喫茶店の店の前にしてサイリはいくぶん元気を取り戻している。
「……まぁいいが……」
「えっ、ほんとですか? もう口がクリームソーダの口になってたんですよ~ コヨミ様はサンドイッチですか? それともがっつりカレーとか?」
うきうきと店に入ったサイリは店員にふたりです!と元気よく伝える。
案内された席は四人掛けのソファ席で、窓に面していて外を歩く人々が見えている。
机の上に置かれたメニューをコヨミ様の方に差し出したサイリは店員が持ってきたお冷をごくごくと勢いよく飲み干した。
思っていたよりも喉が渇いていたらしい。
あっという間になくなってしまったお冷のグラスを置いて、熱々のおしぼりで手を拭く。
熱が手を包み込んで、血液が元気に巡る。
「決まりました?」
コヨミはメニューをぺらぺらと何度もめくり、数度往復している。
「……それは無理だな。もう食堂は閉まっている時間だ」
「そこはコヨミ様の力でどうにかなんないんですか?」
「ならないな」
「はぁー」
サイリはもう行くぞとばかりに立ち上がって上着を着たコヨミを見上げて、ため息をついた。
コヨミとサイリの服は完全にお揃いだ。
いや、逆に完全にお揃いすぎてめちゃくちゃ組織っぽいから痛い恋人同士には見えないのが不幸中の幸いと言える。
「今日どの辺りに行く予定なんですか?」
「いろいろだな」
すでにコヨミの空腹は向こう側とやらに行ってしまったらしい。
事前に教えてもらえないのは、信頼がないからかと思ったけれど、それは違った。
近くの噴水のある大きな広場から始まった【外回り】は、墓場や、寺社、神社といったいかにもな場所や、帝国劇場、博物館や学芸館、図書館といった知識層が好きそうな場所、若者が多数あつまる学校や人気のお店など多岐にわたる。
悪魔が出没しやすい場所というのがあるのだという。
それは大抵の場合は人通りの多い場所にあり、甚大な被害を産む前に定期的に見回りしていると言うことらしい。
まだイタズラぐらいしかできない下等悪魔に何度か遭遇した。
放置しておくと、出没する悪魔が変化して段々と強い悪魔が現れるようになるのだという。
サイリにとって1番身近だったのは学校だった。
それもサイリの通う学校まではかなり近い。
うちの学生も帰り道に通っているような大通りから一般入っただけのなんの変哲もない場所だった。
コヨミやサイリからすれば脆弱な悪魔でしかないが、対抗手段を持たない人たちからすれば脅威に違いない。
サイリは地味な仕事を淡々とこなすコヨミを少し見直した。
「……あの、疲れました…ちょっと休憩を……」
歩き疲れたサイリの前には、クリームソーダなるメニューの写真がある。
それにケーキセットに、プリンアラモード……
心の高鳴るものばかりが並んでいる。
「ほら、コヨミ様も! お昼食べてないんですよね⁉︎ サンドイッチとか! ホットドッグとかありますよ!」
ガラス張りの小洒落た喫茶店の店の前にしてサイリはいくぶん元気を取り戻している。
「……まぁいいが……」
「えっ、ほんとですか? もう口がクリームソーダの口になってたんですよ~ コヨミ様はサンドイッチですか? それともがっつりカレーとか?」
うきうきと店に入ったサイリは店員にふたりです!と元気よく伝える。
案内された席は四人掛けのソファ席で、窓に面していて外を歩く人々が見えている。
机の上に置かれたメニューをコヨミ様の方に差し出したサイリは店員が持ってきたお冷をごくごくと勢いよく飲み干した。
思っていたよりも喉が渇いていたらしい。
あっという間になくなってしまったお冷のグラスを置いて、熱々のおしぼりで手を拭く。
熱が手を包み込んで、血液が元気に巡る。
「決まりました?」
コヨミはメニューをぺらぺらと何度もめくり、数度往復している。
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