怪異退治はアクマでゴリ押し

染西 乱

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「ほんとうはね、コヨミ様が自分で教えるって言っていたんだけど……」

眉を下げた困った顔も文句なくかわいい。美人というのは何をしていても絵になる。
入野先輩はそのままほっそりとした指を頬に寄せて、ふぅと小さくため息をついた。

「最初からそこまで特別待遇にしていたらかわいそうよ、って女の子は女同士教えないといけない事もあるし、って説得して変わってもらったの」

「コヨミ様はとてもすごい人だけど……他人の機微がわからないところがあって……英才教育を受けてらしたからか、ちょっと変わってるところもあるから……」

すごい濁してるけど、あの人のことをわからんちんの変な人だと言っているわけだな。

私の顔にわかりやすい共感でも浮かんでいたのか、入野先輩はうんうんと頷いている。
女の子は突出したものを排除したがる。
これだけの美人なら、入野先輩自身が今までにそれを嫌というほど体験してきているだろう。
あるいはサイリの思いつかないような陰湿なことをされてきている可能性すらある。
女の嫉妬は怖い。

「ね、その制服だってわざわざ特注で作ったみたいだけど、こんなかわいい女の子一人だけ特別扱いですって言ってるようなものだし、良くないですよとは言ったんだけど、聞いてもらえなくて……」

先ほどサイリが聞いたこの制服の違いについてもすでに指摘していてくれたらしい。
だよね、普通はやめといた方がいいと思うよね?

「トキの中にもいろんな人がいるの」

入野先輩の話はまだ続いている。
なんなら悪魔の知識を詰め込んでいた時より頭に染み込んでくる、ここで生活するための知識だ。

「中にはコヨミ様のことが好きで仕方がない人もいる。もはや崇拝という感じね」

あー、あの人もな、冷たそうな顔をしているけれど美しい顔をしているし、動かない表情筋も相まって彫像みたいだし人から崇め奉られるのは納得といった感じだ。あの浮世離れした感じがまた神々しいとか言うんだろう。
まぁ、わからなくはない。

が、実際に仕事を一緒にするとなると話は変わってくるよな~?

ああいう系列の人は遠くから見て、はぁ今日も後光|《ごこう》差してるなぁって目を細くするぐらいがちょうどいい。

端的に言うならば関わり合いにはなりたくない、である。
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