怪異退治はアクマでゴリ押し

染西 乱

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座学といっても大人数で行うものではなく、先ほどの美人先輩……えーと入野先輩と二人っきりでこぢんまりとした部屋に缶詰にされている。

ますますムキムキ筋肉のおっさんとペアにならなくてよかった。

入野先輩が近くに来ると、軽やかな香水の匂いがする。大人の女って感じがしてかっこいい。
なにかの花の匂いだとは思うが、サイリは花に詳しくない。わかって桜と椿と……まぁそのぐらいだ。あ、百合もわかる。

サイリの学校は神道というわけではないため、神とか悪魔とかそういった話をサイリは一切知らない。

悪魔にも偉いとか下っ端とかそいいう順位があるらしい。

それぞれの悪魔の特徴をわかりやすく説明しているきちんとした資料を配られる。

結構分厚い……

サイリが思うより悪魔というのはたくさんいるらしかった。
入野先輩は、その優しい声で主だったものを説明してくれているが、サイリの瞼はいつひっついて開かなくなってしまうかわからない。こっくりこっくりと船を漕ぎそうになると、優しく肩をぽんぽんと叩かれて覚醒するというのを何度か繰り返している。

学校の後の座学など頭に入るわけもない。
だってもう頭疲れてんだもん……。

「すいません、なかなか頭に入ってこなくて……」

今日一日の最後にと小テストをしてもらったが、惨憺さんたんたるものだった。こんなに丁寧に教えたくれてるのにまったく身にならなくて申し訳ない。

怒られているわけではないのに、サイリは身を縮こまらせた。

「全然大丈夫! ここに入隊するとみんなが通る道なのよ。あなたは時期が違うから一人でっていう形になったけど、本来なら何十人と一緒に講義みたいにして教えるのよ」

「へぇ、そうなんですか。仲間がたくさんいるっていいですね」

サイリの頭の中では教室に詰め込まれた大人たちが、クソ真面目に黒板を自分のノートに写している。
美人の入野先輩の隣に座りたいけど座れない、とそこだけぽっかり空席になってしまい、クソ鈍感な筋肉マッチョがここ空いてるな、と何にも考えずに隣の席に座って入野先輩と仲良くなるところまで見えた。

「えぇそうね、といっても最終的に残るのは良くてほんの数人だけよ」

「え?」

「悪魔召喚の適性がないとね……座学の後に実地があるから……」

入野先輩は実地で力を振るえずに【トキ】を去っていった仲間を思い出しているんだろう。わずかに伏せられたまぶたが物悲しげだ。

「あなたの場合は反対になってしまったけど、本来なら悪魔の知識を豊富に持っていた方が悪魔召喚には有利なの」

なんてこったーそうだったのかーー
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