21 / 49
20
しおりを挟む
あきらかに祖父は置いていかれたダンボールを気遣わしげに何度も見ている。
サイリに休養すると宣言した手前、仕事はしていないがそわそわしていていかにも落ち着きが無くなっている。
「………じいちゃん」
じっとりとした視線を祖父に送れば、慌てたように祖父は布団の中にひっこんだ。
「わかってる、わかってる。腰が治るまで仕事は休みにする……」
祖父は責任感が強いので、こうしてやることが目の前にあればやってしまいたくなるんだ。
サイリは祖父に聞こえないように小さく舌打ちする。
仕方ない……一日2時間ぐらい手伝うか……
そのぐらいなら生活に支障が出るとも思えない。
あーでもなーいやだなー、すーごいいやだなー
仕事する気もなかったのに……
悪魔を召喚して悪魔を殲滅する仕事なんて、危ない予感しかしない。
去り際に久須木田コヨミが差し出してきた契約書を見ると、かなり好条件だった。
サイリが空いている時間だけ仕事をすればいい。毎日でなくてもいいいというのは気が楽だ。金銭面も問題ない、というか危険手当がついているのか普通の給仕よりも給金が高かった。
サイリははぁーーーっと思い切りよく重たい息を吐き出した。
やるしかないのか……
よく考えてみれば別に脅されてるわけでもない。
祖父の仕事だって強要されているのではないし、ただ仕事の勧誘をされているだけなのにどうしてこうも「意思に反して仕事をさせられる」感が強いんだろうか。
サイリはダンボールを部屋の隅に追いやり、目隠しにと布を上からかけた。そうして心の乱れを写すような荒れた字ででかでかと「腰が先!仕事は後!」と書いた。
サイリに休養すると宣言した手前、仕事はしていないがそわそわしていていかにも落ち着きが無くなっている。
「………じいちゃん」
じっとりとした視線を祖父に送れば、慌てたように祖父は布団の中にひっこんだ。
「わかってる、わかってる。腰が治るまで仕事は休みにする……」
祖父は責任感が強いので、こうしてやることが目の前にあればやってしまいたくなるんだ。
サイリは祖父に聞こえないように小さく舌打ちする。
仕方ない……一日2時間ぐらい手伝うか……
そのぐらいなら生活に支障が出るとも思えない。
あーでもなーいやだなー、すーごいいやだなー
仕事する気もなかったのに……
悪魔を召喚して悪魔を殲滅する仕事なんて、危ない予感しかしない。
去り際に久須木田コヨミが差し出してきた契約書を見ると、かなり好条件だった。
サイリが空いている時間だけ仕事をすればいい。毎日でなくてもいいいというのは気が楽だ。金銭面も問題ない、というか危険手当がついているのか普通の給仕よりも給金が高かった。
サイリははぁーーーっと思い切りよく重たい息を吐き出した。
やるしかないのか……
よく考えてみれば別に脅されてるわけでもない。
祖父の仕事だって強要されているのではないし、ただ仕事の勧誘をされているだけなのにどうしてこうも「意思に反して仕事をさせられる」感が強いんだろうか。
サイリはダンボールを部屋の隅に追いやり、目隠しにと布を上からかけた。そうして心の乱れを写すような荒れた字ででかでかと「腰が先!仕事は後!」と書いた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
皇帝陛下は身ごもった寵姫を再愛する
真木
恋愛
燐砂宮が雪景色に覆われる頃、佳南は紫貴帝の御子を身ごもった。子の未来に不安を抱く佳南だったが、皇帝の溺愛は日に日に増して……。※「燐砂宮の秘めごと」のエピローグですが、単体でも読めます。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる