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サイリは学校へ通わせてもらってはいるものの、職業夫人になってバリバリ働くぞ!という心意気は残念ながら持っていない。
今現在サイリの母が仕事をしているため、家の家事はほとんどサイリが行っている。
サイリが働きに出るとしたら家のことは誰がやるのか。
答えはやらずともわかっている。

サイリである。

家族で分担など夢のまた夢。

仕事なんてしようものなら家の家事の全ての負担はサイリが負うことになるのが目に見えている。
ただでさえ平日は学校があるというのに、どの時間に働くというんだか。
学校が終わってから?
学校が休みの土曜日と日曜日だけ?
そんな少しの時間働いたところでこの量の悪魔召喚機と同等の働きが出来るとも思えない……

「……ちょっと持ち帰って考えます」

ここで答えを出すのは愚策。
なにごとも一度冷静になって考えることが大事だ。

久須木田コヨミは優雅に頷き、「どうぞ、じっくり考えてくれ」と言う。

「ウチは所謂出来高制というやつでね。基本的な賃金にプラスして悪魔召喚能力を加味した金額と、実際の討伐手当が出ることになっている。……まぁ詳しくはこの契約書を確認してくれ」

透明なファイルに入った契約書が渡される。

契約書にはまだ誰の名前も記入されていない。

「よく確認しておくといい。契約は大事だからな」

まだ働くと決めたわけではないが、どのような契約で働くのかは詳しく知っていたほうがいいだろう。
検討の材料になる。

「それでは」

サイリはどこまでも優美な久須木田コヨミの背に向かって塩をぶつけてやりたいのを我慢した。
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