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「久須木田コヨミ出てこい!!」

【トキ】の本部の近くは静まり返っている。
そこに走ってきたサイリは息を乱しながら、呼び出しボタンを何度も連打する。

「三ツ矢サイリ様ですね? お入り下さい」

涼やかな受付の言葉にもむかつきながらサイリは玄関ドアから入り、どすどすと足音を立てる。

「こちらにどうぞ」

中に入ったはいいが、どこに行ったらいいのかわからん、と思っていたら【トキ】の制服をきた女性がすすっと現れて案内をしてくれる。

「……こんなにあっさり私みたいな部外者入れてもいいんですか?」

この間来た時にはすげなく追い返されているサイリは、今日のスムーズな対応をいぶかしんで案内してくれている女性に問いかけた。

「コヨミ様からサイリ様が来たら通すようにと伺っていました」

なるほど、サイリが怒鳴り込んでくることは予想の範囲内ということか。
怒りで浮いたこめかみの血管がますます浮き上がった気がする。

「こちらです」

一つのドアの前で女性は立ち止まったが、そこ扉には何の表札も出ていない。
例えば応接室とか、社長室とかそういったプレートがかかっていない。

「ここですか?」

空き部屋に閉じ込められるんじゃないだろうなと警戒したサイリは黙って扉を見る。

「こちらでコヨミ様がお待ちです」

女性はサイリがドアに入るまで見届けるつもりらしく、一歩下がったところからサイリを見ている。
なんなら女性がドアを開けてくれればいいのになぜそうしないのか。

「……」

サイリはぶすっとした顔を隠さず、思い切りよくドアをノックした。
強くたたきすぎて右手の骨が痛い。

「入れ」

スピーカーから声が聞こえる。
サイリがドアを触るまでもなくドアが自動で開いた。
ふぅん、内側の人間が許可しないとドアが開かないようになっているのか。
そういえばドアの横に何やらものものしい機械が置いてある。
入室するときの認証が必要なものか。

ずいぶんとものものしいな。

サイリは見送るように頭を下げている女性にちら、と視線を送ってから部屋に入った。
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