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かんぺきな猫
しおりを挟む学校の帰り道には猫が何匹かいる。
集合住宅五棟と十二棟の真ん中にある道のすぐ横に自転車置き場があって、夏は日陰、冬は日向に座ってのんびりしていることが多い。飼い猫なのか、野良猫なのかわからないが、首輪はしていない。遭遇率が高いのは白い猫と、真っ黒な猫とぶち猫の3匹だ。それぞれの猫をそのまま色で呼び、機嫌がいい時には頭を撫でたり、腹を撫でたりする。猫たちは人に構われ慣れている。給食のパンの残りをあげると、ふんふんとしきりににおいを嗅いでからパクパクと食べる。僕はにこにこしながらそれを見守り、食べ終わったところで抱っこしたり頭を撫でたりする。
少しすると、シロとクロを見かけなくなり代わりに、タビ猫を目にすることが増えた。黒い身体に、手足の半分ぐらいからが白くてまさにタビを履いたみたいな模様だった。しっぽの先っぽも白い。
目の色が片方ずつ色が違う猫だった。
せっせとパンをあげて餌付けしていたら、五年生の女の子が近くにやってきて「あれ、ぶちちゃんじゃないのか」と言った。女の子はタビを少しだけ撫でてからすぐに走り去った。ブチは最近まったく姿を表さない。それはクロもシロもだ。
「わぁ、この子もオッドアイなんだ~」とその子が言ったので、僕は初めてオッドアイという言葉を知った。左右の目の色が違うことを言うらしい。
ブチはオッドアイだった。確かはっさくみたいな黄色とソーダバーみたいな水色だ。そうちょうどこのタビと同じ色だ。
「ブチ?」呼ぶと、目の前の猫がなぁーんと返事をする。
「……シロ」なむ、と返事をした。
「クロ」にゃふ、と返ってきた。
「タマ」返事はない。なんの名前でも返事するかと思ったけど、そうじゃなかった。
目の前の猫はクロでありシロでありブチであるタビらしい。
「おかしいね、みんなちゃんと死んだのに」
シロは車に轢かれて、クロは保健所の人に連れていかれて、ブチは暗い目をした男の人に改造銃で撃たれてしまった。
三匹の死体はそれぞれ国の清掃の人が引き取っていった。
すごく悲しかったけど、僕が飼っているわけではないので何も言えなかった。
こうやってタビとしてみんなが戻ってきてくれていたなんて思ってもみなかった。
なんでもない顔をしているタビの頭を何度も撫でる。喉もこしょこしょ撫でる。頬の横から伸びている長いヒゲがぴくぴくと動いている。
タビはもっと撫でろと言いたげに腹を出してコンクリートの上に寝転がった。腹の毛は背中以上にふかふかで気持ちがいい。
僕はそれに応えて両手を使ってお腹を撫でた。
タビがのっそり身体を起こしたところで、僕はいつも通りにこっそり残してきた学校のパンを差し出した。
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