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サキュバスの娘、大罪を断罪す
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え、どういうこと。結局私って死んでるの?
あんなに死にたくないと願った挙句、もがいてもがいてようやく手に入れた生すら私は手放してしまったというの?
そんなのひどすぎるじゃん!
私はまた途方もない絶望感に打ちひしがれる。
人間って死んだあと、こうやって霊となって世界に留まるのかな。けれどそれっておかしくない?
死んだら霊になるのだとしたら、今頃私の視界にはたくさんの霊がひしめき合っているはずなんじゃない?
もしかして霊ってなにかしらの条件が無いとなれないのかな。うーん、それよりも本当に私って死んでるのかな?
まあよくわからないけど、ひとまず誰かを探そう。一人じゃさみしいもの。
空の暗く赤い光に照らされて、青々しいはずの緑が紫色に染まっている。その中を私はひたすら進んだ。
最初は不便だと思ったこの透ける体も、このとげとげしい葉を楽にすり抜けることができることに気づいてからは感謝の念すら抱いた。いやー、これ便利だね。裸なのはいただけないけど。
何時間、何日が経ったのだろうか。空を見上げても太陽は一向に見えない。そのため日にちの感覚がずれてしまっている。あいにくとこの体は疲れることを知らないし、疲労も感じない。ひたすらに歩くことができた私は、代り映えのしない景色に飽きつつも進むことをやめなかった。
ようやく木々の間隔が広がっていったとき、突然と視界が開いた。
「何……これ」
目の前には、石でできた建物が居並ぶ町があった。規模こそ小さいが、大通りには馬車が走り、屋台店らしきものも続い並んでいた。その中には幾多の人々が行きかっていた。
「うーん、でもこの人たち……」
すれ違う人々。その中には獣人や亜人なども含まれていたが全員に共通する点があった。それはその人たちの表情だ。皆が皆、一様に暗い表情を浮かべていた。赤色の空と何か関係があるのだろうか。この異常な空だ。何かが起きているに違いない。
「あの……すみません」
私は咄嗟に近くの人に声をかけた。が、そこで私は失敗したと思った。なにしろ、今私素っ裸じゃん!
だがそれは杞憂だったらしい。彼らは私の声に気づくことすらなく通り過ぎて行った。
「やっぱり私のこと見えてないみたいだね。嬉しいんだか悲しいんだか……」
これじゃ誰ともコンタクトを取ることができないね。世界に置いて行かれたような気分だよ……。
しょぼーんと肩を落としていると、一つの視線がこちらを向いていることに気が付いた。
「じー……」
大きな帽子を目深にかぶり、モノクルをつけた少女がこちらを睨んでいる。
「え、まさか私のこと見えてないよね?」
「じー……」
少女は尚も私の方を睨む。え、まさか私のこと魅惑のボディが見えてしまっているの!?
恐ろしい子っ!
「……あの、見えてます?」
「……」
少女は私の声が聞こえたのか聞こえてないのかわからないが、睨むのをやめた。
ふぅ、どうやら見えていないようだ。大方私の後ろの景色を見ていたんだろう。早とちりして損した。
「君……、淫魔なのかな」
はいーーー! やっぱり見えてましたぁーーーー!
ばりっばりに見えてましたーーー! いやしかしどういうこと? なんで見えてるの?
今の私って幽霊だよね? 透けてるよね? みんな素通りしていったもんね!?
もしかしてアレなの!?
不審者か何かだと思われてスルー安定wみたいな反応で去っていったのかな!? だとしたら恥ずかしくて死んじゃいそうなんですけど! まあもう死んでるみたいなんですけどね!!
死して恥辱を受けるとは思いませんでしたー! はい、生きててすみませんでしたー!
「いや、違うな……。天使のようにも見える。どうにも姿がぼやけていて見えづらいなぁ」
……あれ? もしかしてはっきりと見えてない感じなのかな。ぼやけて見えている系?
うーん、この子って霊感あるタイプってやつなのかな。だから私が見えている感じなのかもしれない。いや、そうに違いない。私は公衆の面前で裸になってスルーされるようなかわいそうな女の子なんかじゃないもんね!
「それにしてもさっきからこの霊は動きが激しいね。何かに悶絶しているみたいだ。成仏できないのに何か理由があるみたいだね、きっと。ほれ、何があったか聞かせておくれ。パシアンはこう見えても占星術師と呼ばれてる凄腕の占い師なんだぞ」
「……占星術師?」
私はどこかでその名を聞いたことがある。はて、どこだったかな。
パシアンと名乗る少女はにかっと微笑み、モノクルの奥の瞳を輝かせた。
あんなに死にたくないと願った挙句、もがいてもがいてようやく手に入れた生すら私は手放してしまったというの?
そんなのひどすぎるじゃん!
私はまた途方もない絶望感に打ちひしがれる。
人間って死んだあと、こうやって霊となって世界に留まるのかな。けれどそれっておかしくない?
死んだら霊になるのだとしたら、今頃私の視界にはたくさんの霊がひしめき合っているはずなんじゃない?
もしかして霊ってなにかしらの条件が無いとなれないのかな。うーん、それよりも本当に私って死んでるのかな?
まあよくわからないけど、ひとまず誰かを探そう。一人じゃさみしいもの。
空の暗く赤い光に照らされて、青々しいはずの緑が紫色に染まっている。その中を私はひたすら進んだ。
最初は不便だと思ったこの透ける体も、このとげとげしい葉を楽にすり抜けることができることに気づいてからは感謝の念すら抱いた。いやー、これ便利だね。裸なのはいただけないけど。
何時間、何日が経ったのだろうか。空を見上げても太陽は一向に見えない。そのため日にちの感覚がずれてしまっている。あいにくとこの体は疲れることを知らないし、疲労も感じない。ひたすらに歩くことができた私は、代り映えのしない景色に飽きつつも進むことをやめなかった。
ようやく木々の間隔が広がっていったとき、突然と視界が開いた。
「何……これ」
目の前には、石でできた建物が居並ぶ町があった。規模こそ小さいが、大通りには馬車が走り、屋台店らしきものも続い並んでいた。その中には幾多の人々が行きかっていた。
「うーん、でもこの人たち……」
すれ違う人々。その中には獣人や亜人なども含まれていたが全員に共通する点があった。それはその人たちの表情だ。皆が皆、一様に暗い表情を浮かべていた。赤色の空と何か関係があるのだろうか。この異常な空だ。何かが起きているに違いない。
「あの……すみません」
私は咄嗟に近くの人に声をかけた。が、そこで私は失敗したと思った。なにしろ、今私素っ裸じゃん!
だがそれは杞憂だったらしい。彼らは私の声に気づくことすらなく通り過ぎて行った。
「やっぱり私のこと見えてないみたいだね。嬉しいんだか悲しいんだか……」
これじゃ誰ともコンタクトを取ることができないね。世界に置いて行かれたような気分だよ……。
しょぼーんと肩を落としていると、一つの視線がこちらを向いていることに気が付いた。
「じー……」
大きな帽子を目深にかぶり、モノクルをつけた少女がこちらを睨んでいる。
「え、まさか私のこと見えてないよね?」
「じー……」
少女は尚も私の方を睨む。え、まさか私のこと魅惑のボディが見えてしまっているの!?
恐ろしい子っ!
「……あの、見えてます?」
「……」
少女は私の声が聞こえたのか聞こえてないのかわからないが、睨むのをやめた。
ふぅ、どうやら見えていないようだ。大方私の後ろの景色を見ていたんだろう。早とちりして損した。
「君……、淫魔なのかな」
はいーーー! やっぱり見えてましたぁーーーー!
ばりっばりに見えてましたーーー! いやしかしどういうこと? なんで見えてるの?
今の私って幽霊だよね? 透けてるよね? みんな素通りしていったもんね!?
もしかしてアレなの!?
不審者か何かだと思われてスルー安定wみたいな反応で去っていったのかな!? だとしたら恥ずかしくて死んじゃいそうなんですけど! まあもう死んでるみたいなんですけどね!!
死して恥辱を受けるとは思いませんでしたー! はい、生きててすみませんでしたー!
「いや、違うな……。天使のようにも見える。どうにも姿がぼやけていて見えづらいなぁ」
……あれ? もしかしてはっきりと見えてない感じなのかな。ぼやけて見えている系?
うーん、この子って霊感あるタイプってやつなのかな。だから私が見えている感じなのかもしれない。いや、そうに違いない。私は公衆の面前で裸になってスルーされるようなかわいそうな女の子なんかじゃないもんね!
「それにしてもさっきからこの霊は動きが激しいね。何かに悶絶しているみたいだ。成仏できないのに何か理由があるみたいだね、きっと。ほれ、何があったか聞かせておくれ。パシアンはこう見えても占星術師と呼ばれてる凄腕の占い師なんだぞ」
「……占星術師?」
私はどこかでその名を聞いたことがある。はて、どこだったかな。
パシアンと名乗る少女はにかっと微笑み、モノクルの奥の瞳を輝かせた。
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