74 / 77
サキュバスの娘、大罪を断罪す
22 直撃
しおりを挟む
「ヒャハハハハハハ、楽しいなぁこれ!!」
「くっ!」
次々と影の刃が地面から生える。それを軽いステップで避けながら相手の出方を窺う。今度は腕の薙ぎ払いがやってきた。
私はそれを高い跳躍でもって避ける。しかし、振り下ろされたもう一つの腕が私を襲った。
「なにをっ!」
スキル『飛翔』を使い、空中での軌道を変化させることでなんとか回避。
だが怪物の攻撃はそれだけにとどまらない。地面に衝突した腕の影から刃が飛び出してくる。
「ホーリーアロー!」
光魔法のホーリーアローでいくつかの刃の軌道を逸らすことに成功したが、撃ち漏らした数本が私の翼を打ち抜く。『飛翔』スキルによって肥大化した翼は、空中では大きな的だ。なんとか着地した私は、直ぐに翼を元の大きさへ戻す。だが、欠損部分が回復することはない。
ぐぅ……、翼って以外と痛覚があるのか痛いんだよね。
「頑張るねエ、頑張るねエ。だけどまだまだこれから……むっ!?」
突然怪物が後方へ跳躍したと思ったら、直後にそこへ斧が降ってきた。
「くそっ、外したか」
地面に刺さった斧を引き抜いた男。ヘプタ盗賊団の筋肉ダルマ、ファバダだった。
「ファバダさん!」
「よう、嬢ちゃん。助けに来たぜ。怪物、よくも族長を瀕死にしてくれたなぁ」
ファバダはその巨大な戦斧を怪物へ向ける。
その後ろには上半身裸のバデムと、メルケンが立っていた。
ここでヘプタ盗賊団の幹部の面々が揃う。
「家族を殺された恨み、晴らさせてもらいやすよ」
「オレっちだって参加するぜ」
族長会議で集まっていた幹部連中。そのほとんどがここに集まってきていた。
あれ、だけどもう一人女性が居たような気が……。
「クヒヒ、弱い奴らが集まったところでどうせオレにはかなわんぜ?」
怪物が目の前の三人に向かって腕を大きく薙ぎ払う。しかし、その薙ぎ払いは、ぶつかる寸でのところで止まった。なんと、腕の影からたくさんの槍が生え、腕を貫いていた。
「『影魔法』――シャドウスピア」
怪物の背後にいつのまにか女性が現れていた。スキルの発生源はあの人か。
たしか……ルルイエという名前だったはずだ。族長の背後の影に潜んでいた人だ。
「ぐぬぬ、こんなものきかんっ!」
だが、刺さった槍はすぐさま引き抜かれ、その傷も直後に修復されてしまった。こいつの回復力は尋常ではない。私が放った攻撃も直ぐに直されてしまう。一体どうすれば倒せるのか。
「奴を倒すにはどうすればいいかわかりやすか?」
上半身裸だが、利発そうなバデムが私にそう尋ねる。怪物は現在、斧使いのファバダが応戦している。そして中遠距離から、メルケンとルルイエが魔法スキルを放っていた。
「私が思うに、首を刎ねても直ぐに再生してしまいます。実際、塔の崩落で首が飛んでしまった状態だったにもかかわらず、あいつは復活してきました。あいつは不死身なのかもしれないです」
「不死身か……。それでは手の打ちようがないでやすね」
そうなのだ。先ほどまでは確かに死んでいたはずの怪物。しかし、その後に復活を果たしてしまった。私の攻撃を受けても直ぐに再生してしまうことから、やつは不死身なのかもしれない。
分子レベルにまで分解すればあるいは倒せるのかもしれないが、そんな攻撃があるはずもない。
いや……待って。
もしかしたら……。
「バデムさん。もしかしたら倒せる方法があるかもしれません」
「なんだと、教えるでやんす」
耳を貸すバデムに私はそっと作戦を伝えた。
「おらぁぁぁ!」
ファバダの戦斧が怪物の腕を叩き斬る。しかし、斬れた端から再び新しい腕が生え、ファバダを掴もうとする。
「ウォーターシュート!」
そこにメルケンの水魔法が炸裂する。小粒の水弾が何連発も腕を貫いた。その隙にファバダが後退した。
「助かった、メルケン」
「いえ、オレっちはこれくらいしかできやせんので」
「おい、ファバダさん、メルケン! こっちまで後退できるか!」
バデムに呼ばれたファバダとメルケンは、即座に交代を始めた。
「逃がすかよっ!」
標的をファバダに設定した怪物は、ファバダに向かって影の刃を飛ばす。私はその間に潜り込み土魔法でガードをした。
ルルイエがさらに援護射撃を行ってくれたおかげで、ファバダとメルケンはバデムと合流することができた。
バデムが彼らに作戦を伝えている間、私は怪物の動きを食い止めてなければいけない。いや、なかなかきついなあ。ダメージを与える傍から回復されてると、心が折れそうになる。
こっちは受けたダメージが癒えることはないんだから。
心の中で愚痴をこぼしていると、再び足元に影の刃が出現した。
「くっそう、うざったい奴らだ。それならこれはどうだ! 恐怖の波動!!」
「逃げてみんな! あれに触れただけで命を刈り取られちゃう!」
怪物を中心に半径十メートルに黒い霧が発生した。私は『飛翔』スキルで空へ逃げたが、皆は無事なんだろうか。
……大丈夫だ。皆うまく退避できている。
『飛翔』スキルがうまく使えない私は、フラフラとしながらもなんとか着地する。その着地を狙ったかのように怪物はこちらに向かって黒い塊を打ち放っていた。あれは、まさか!!
「――喰らえ、恐怖球」
既に眼前まで飛来してきた黒い塊は、私に触れた途端に爆発した。
「くっ!」
次々と影の刃が地面から生える。それを軽いステップで避けながら相手の出方を窺う。今度は腕の薙ぎ払いがやってきた。
私はそれを高い跳躍でもって避ける。しかし、振り下ろされたもう一つの腕が私を襲った。
「なにをっ!」
スキル『飛翔』を使い、空中での軌道を変化させることでなんとか回避。
だが怪物の攻撃はそれだけにとどまらない。地面に衝突した腕の影から刃が飛び出してくる。
「ホーリーアロー!」
光魔法のホーリーアローでいくつかの刃の軌道を逸らすことに成功したが、撃ち漏らした数本が私の翼を打ち抜く。『飛翔』スキルによって肥大化した翼は、空中では大きな的だ。なんとか着地した私は、直ぐに翼を元の大きさへ戻す。だが、欠損部分が回復することはない。
ぐぅ……、翼って以外と痛覚があるのか痛いんだよね。
「頑張るねエ、頑張るねエ。だけどまだまだこれから……むっ!?」
突然怪物が後方へ跳躍したと思ったら、直後にそこへ斧が降ってきた。
「くそっ、外したか」
地面に刺さった斧を引き抜いた男。ヘプタ盗賊団の筋肉ダルマ、ファバダだった。
「ファバダさん!」
「よう、嬢ちゃん。助けに来たぜ。怪物、よくも族長を瀕死にしてくれたなぁ」
ファバダはその巨大な戦斧を怪物へ向ける。
その後ろには上半身裸のバデムと、メルケンが立っていた。
ここでヘプタ盗賊団の幹部の面々が揃う。
「家族を殺された恨み、晴らさせてもらいやすよ」
「オレっちだって参加するぜ」
族長会議で集まっていた幹部連中。そのほとんどがここに集まってきていた。
あれ、だけどもう一人女性が居たような気が……。
「クヒヒ、弱い奴らが集まったところでどうせオレにはかなわんぜ?」
怪物が目の前の三人に向かって腕を大きく薙ぎ払う。しかし、その薙ぎ払いは、ぶつかる寸でのところで止まった。なんと、腕の影からたくさんの槍が生え、腕を貫いていた。
「『影魔法』――シャドウスピア」
怪物の背後にいつのまにか女性が現れていた。スキルの発生源はあの人か。
たしか……ルルイエという名前だったはずだ。族長の背後の影に潜んでいた人だ。
「ぐぬぬ、こんなものきかんっ!」
だが、刺さった槍はすぐさま引き抜かれ、その傷も直後に修復されてしまった。こいつの回復力は尋常ではない。私が放った攻撃も直ぐに直されてしまう。一体どうすれば倒せるのか。
「奴を倒すにはどうすればいいかわかりやすか?」
上半身裸だが、利発そうなバデムが私にそう尋ねる。怪物は現在、斧使いのファバダが応戦している。そして中遠距離から、メルケンとルルイエが魔法スキルを放っていた。
「私が思うに、首を刎ねても直ぐに再生してしまいます。実際、塔の崩落で首が飛んでしまった状態だったにもかかわらず、あいつは復活してきました。あいつは不死身なのかもしれないです」
「不死身か……。それでは手の打ちようがないでやすね」
そうなのだ。先ほどまでは確かに死んでいたはずの怪物。しかし、その後に復活を果たしてしまった。私の攻撃を受けても直ぐに再生してしまうことから、やつは不死身なのかもしれない。
分子レベルにまで分解すればあるいは倒せるのかもしれないが、そんな攻撃があるはずもない。
いや……待って。
もしかしたら……。
「バデムさん。もしかしたら倒せる方法があるかもしれません」
「なんだと、教えるでやんす」
耳を貸すバデムに私はそっと作戦を伝えた。
「おらぁぁぁ!」
ファバダの戦斧が怪物の腕を叩き斬る。しかし、斬れた端から再び新しい腕が生え、ファバダを掴もうとする。
「ウォーターシュート!」
そこにメルケンの水魔法が炸裂する。小粒の水弾が何連発も腕を貫いた。その隙にファバダが後退した。
「助かった、メルケン」
「いえ、オレっちはこれくらいしかできやせんので」
「おい、ファバダさん、メルケン! こっちまで後退できるか!」
バデムに呼ばれたファバダとメルケンは、即座に交代を始めた。
「逃がすかよっ!」
標的をファバダに設定した怪物は、ファバダに向かって影の刃を飛ばす。私はその間に潜り込み土魔法でガードをした。
ルルイエがさらに援護射撃を行ってくれたおかげで、ファバダとメルケンはバデムと合流することができた。
バデムが彼らに作戦を伝えている間、私は怪物の動きを食い止めてなければいけない。いや、なかなかきついなあ。ダメージを与える傍から回復されてると、心が折れそうになる。
こっちは受けたダメージが癒えることはないんだから。
心の中で愚痴をこぼしていると、再び足元に影の刃が出現した。
「くっそう、うざったい奴らだ。それならこれはどうだ! 恐怖の波動!!」
「逃げてみんな! あれに触れただけで命を刈り取られちゃう!」
怪物を中心に半径十メートルに黒い霧が発生した。私は『飛翔』スキルで空へ逃げたが、皆は無事なんだろうか。
……大丈夫だ。皆うまく退避できている。
『飛翔』スキルがうまく使えない私は、フラフラとしながらもなんとか着地する。その着地を狙ったかのように怪物はこちらに向かって黒い塊を打ち放っていた。あれは、まさか!!
「――喰らえ、恐怖球」
既に眼前まで飛来してきた黒い塊は、私に触れた途端に爆発した。
0
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる