サキュバスの娘だって冒険したい 〜転生したら淫魔の娘だったので、魅了や触手を駆使して世界を堕とします〜

三文小唄

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サキュバスの娘、大罪を断罪す

13 族長会議①

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私とアイリスとキュイールが地下牢から出てきたところで、ヘプタ盗賊団の団員の一人に話しかけられた。
どうやら族長会議を行うとのこと。それに是非参加してほしいと頼まれてしまった。ちなみにキュイールは強制参加らしい。

参加してほしいと言われているが、これはほぼ強制だろう。なにせ首にはまだ荒縄が括られたままだからだ。この状態でこの盗賊団に背くようなことをすれば、最悪首が締まりかねない。そんな最期はごめんだよね。

「わかりました。どこに行けばいいですか?」
「族長会議はギルド長室の隣にある会議室で行いやす。もう何人も集まっていやすから、早くきてくだせえ。ギルド長室はこの建物三階の奥にありやす。気を付けてくだせえ。それと……さっきはありがとうございやした」

そういうとその団員は去っていった。ありがとうってなんのことだろう。
私、何か感謝されるようなことしたっけ。うーんと唸っていると、先ほどの火矢のことを思い出した。そうか、あの時の一団にいたのか。

唐突にバルコニーに振ってきた火矢。あの場では私があの場で指揮していた。遠距離の攻撃を牽制しつつ、階下の味方を援護するというチームプレーが、結果的に防衛に役だったのだ。もしあの火矢に対処できなければ、ヘプタ盗賊団の損耗は今よりもひどかっただろう。

正直、盗賊団に対していい印象は持たないけど、こうして感謝されるとやっぱりうれしいよね。私って意外とナイス指揮だったんじゃない? むふん。

「おいお前、顔がだらしなくなってるぞ」
「いいじゃありませんの。こういうご主人様の顔も素敵ですわ」

おっと、つい顔に出てしまったか。キュイールに窘められ、顔をキッと戻す。アイリスはそれに多少不満顔をしたが、「これはこれでステキな顔ですわ」と持ち直していた。いや、アイリスの趣味は聞いてないから。

程なくして私たちはギルド長室の隣にある会議室へと着いた。キュイールがどうやら結構な頻度でここにきているため、迷わずに来れた。

「さ、入るぞ。くれぐれも族長に歯向かうなよ」
「わかってますよ」

キュイールが扉を開いた。
中には長いテーブルが一つ置かれてあった。上座にやたら体格のいい男が座っている。なぜか上半身裸だ。寒くないのだろうか。身体には無数の切り傷が刻まれており、彼の壮絶な人生を物語っているようだった。腰には獣の毛皮が巻かれており、みたからに蛮族の長だった。

おそらく彼が族長と呼ばれる人物なのだろう。
私から見て族長の右側に、サンが座っていた。親しげに族長と会話している。そしてその向かいの席には一見利発そうな顔立ちの男が座っていた。

しかしそいつも上半身裸だった。
ヘプタ盗賊団とは、裸族なのか?
ちなみに、それ以外にも座っている人がいたが、普通に服を着ていた。利発そうなやつは要人っぽい雰囲気が出てるから、幹部の人が上半身裸で覚えておけば問題ないだろう。あ、サンはちゃんと服着てるけどね。

私たちはキュイールに案内された席に座る。テーブルの端っこに近いほうだ。族長会議ということは、ここにいる人たちは少なくとも族長にとって大切なメンバーだ。気を張っておかないと。ふと視界の端に、空いてる席を見かけた。まだ誰か一人来てないのかな。

「みんな集まったな。それでは族長会議を始める。まずはバデム。今回の戦の報告をくれ」
「はい、今回はここ元冒険者ギルドにて防衛線を行いやした。敵はディゴン盗賊団。奴らは北から襲撃してきていやす。そのため、団を五つのグループに分けて対応に向かわせやした。北西、北、北東、ギルド待機組、遊撃隊でやす」

なるほど、ディゴン盗賊団は北側に拠点を置いているのか。それを知っていたからこそ事前の対応が出来たということか。

「北西チームのリーダー、メルケン。子細を」
「はい、北西の敵はなんとか掃討しやした。一部敵を逃がしてしまいやしたが、こちらの損耗はほぼありやせん。人数だけのあいつらに負けやしやせん! と言いたいところでしたが、おそらく敵はディゴン盗賊団が吸収した別の盗賊団のようでやした! チームバランスが悪く、そこをうまく突く形で撃退しやした」
「さすが、メルケンだな。よくやった」

メルケンと言われた男が少し笑って座った。メルケンは、この会議のメンバーの中ではまだ若い方に見える。二十代くらいだろうか。それでも私の年齢の倍以上あるんだけどね。精神面では同じくらいかな。

「次は北チームのリーダー、ファバダ」
「はい、北の敵は厄介でやした。おそらくこっちが本体でしょう。仲間が80人やられやした。けが人も大量にでやした。申し訳ない。しかし一度撤退し、ギルド待機組と結託して追い返すことに成功しやした。お嬢の縄捌きに大分助けられやした」
「そうか、ご苦労だったファバダ」

報告を終えたファバダは座る。ファバダは族長と同じくらい筋肉質な身体をしていた。服はしっかりと来ているが、その筋肉のふくらみは服の上からでもわかった。きっと相当な手練れだろう。背後の壁に巨大な戦斧が立てかけてあるが、これはファバダの物で間違いないだろう。

ここまでは順調な会議だ。被害こそあるものの、どちらも善戦している。あと残るのは北東チームとギルド待機組、遊撃隊だ。ギルド待機組に関してはある程度までわかる。
私たちがその現場にいたからだ。といっても途中から参加して、途中から抜けたので子細はわからないけどね。

「さて、北東のウァンだが……」

族長は誰も座っていない空席を見る。その目は悲しそうだった。もしかして一番被害が大きかったのは北東だったのかもしれない。そして今呼ばれた男は、きっと帰らぬ人になってしまったのだろう。
悲しげな雰囲気の中、私はいたたまれない気持ちになった。
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