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サキュバスの娘、大罪を断罪す
5 投獄
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朝になったのだろう。私は目が覚めた。
つめたい床の感触が頬を冷やす。眠気眼に起き上がると、私はひとつ伸びをした。
そしていつも起きるのが遅いアイリスを起こそうと目を開けた。
そうして開けた視界の先には、鉄の格子があった。
「へ?」
夢でも見ているのだろうか。いつの間にか私は牢の中にいた。
いや、閉じ込められている?
え、どうして?
周りには誰もいない。私は咄嗟に立って状況を確かめようとしたら、じゃらりと足元で音がした。
鎖だ。私の右足には鉄球が鎖で繋がれた枷が嵌められていた。
どうしてこうなった!?
私は土魔法のロックカッターで鎖を断ち切ろうと試みる。
「……あれ?」
しかし私の魔法は不発した。いつもなら魂から湧き上がる魔力が形となって魔法が形成されるのだが、今はそれが発動しなかった。
もしかして魔力が枯渇している?
いや違う。私の中にはまだ魔力が残っている。それがどういうわけか、何かに堰き止められているようなのだった。考えられるとしたらこの足枷か。
よく見れば、足枷には水晶のようなものが嵌められていた。
この世界の水晶は何かしらの効果を持っているものが多い。鑑定の水晶や、処断の水晶、私の持つ冒険者ギルドのブロンズタグにも水晶が嵌めこまれていた。もしかしたら、この足枷にも何かしらの効果があるのかもしれない。例えば、魔力を堰き止めるような効果だったり。
だとするとこれはかなりピンチだ。私は今何者かに捕まって投獄されている。
おそらく用心棒が不寝番している最中にその何者かに襲われてここまで運ばれたのだろう。
だとしたら、敵は最低でも用心棒すら相手にできる戦力を持っているかもしれない。
アイリスは大丈夫だろうか。
「アイリスー!! どこにいるのー!!」
「は~い、ご主人様~。……ムニャムニャ」
この声はアイリスだ。どうやら近くの牢に閉じ込められているようだった。それにしてもこの返事の仕方は、まだ寝ぼけている感じだな?
一先ず、アイリスの生存は確認できたので良しとしよう。次はどう脱出するべきかを考えねば。
今、私は魔法のスキルを使えない。つまり私が使える六大元素魔法と、淫魔魔法、空間魔法のスキルは現在使用不可ということになっている。おそらくアイリスも同様な枷を嵌められているだろうから、脱出は厳しいだろう。
残りのスキルで使えるものと言えば、『堕天』『淫魔』『屈服の服罪』か。
前の二つのスキルは、未だによくわかっていないスキルだ。『淫魔』なんて勝手に暴走してアイリスをサキュバスの眷属にしてしまったくらいだ。
下手に発動できるものでもない。そうすると、残るは『屈服の服罪』だ。
私は鉄球に向かって『屈服の服罪』を発動してみた。
ズンという音と共に鉄球が床にめり込む。
おお、どうやらこれは発動できるようだ。しかし鉄球を重くしてどうする……。足が余計に重くなるだけじゃないか。スキルで脱獄というのは難しそうなのがわかった。
ならば、この鉄格子を調べよう。まさかペンタゴンの外まで連れ去られたわけでもあるまい。
だとしたら、この建物も被害にあって壊れている部分もあるかもしれない。私は鉄格子を隈なく調べた。
はい、完璧に機能してました。
という事は、ペンタゴンの被害にあっていない部分もあるという事だろうか……。
それはつまり生存者がまだいる可能性があるということだ。私たちはもともとペンタゴンの被害について調べるためにここにきている。被害がない場所で生存できた人がもしいるのなら、ギルドに報告しないと!
しかし現状私たちは報告できる立場になかった。だって捕まってるもん。
あ、もしかして帰ってこない冒険者もここに収監されてたりするのかな。それともやっぱり殺されてるのかな……。もしかしたら私たちも殺されるんじゃ……?
「アイリス~。助けて~」
「ハッ! ご主人様が助けを求めてますの! え! あれ? ここどこですの? ご主人様―!!」
あ、アイリスが起きた。ちょっとぼやいただけなのに。今度からこうやって起こそうかな。いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
「アイリス聞こえるー? 今私たち、どうやら捕まっているみたいなんだ。どうにか脱出できそうにない?」
「任せてくださいませ。私の『眷属魔法』でなんとかご主人様を……ってあれ? スキルが発動しませんの」
あー、やっぱりアイリスもダメか。こりゃ八方塞がりだなぁ。
私が半ば絶望していると、誰かが階段から降りてくるような音が聞こえた。
そしてその足音の主は私の牢の前で止まった。
背丈は私と同じくらいの少女。長い黒髪は後ろで束ねられており、着ている服は質素な印象を与えた。彼女は不敵な笑みを浮かべて私を見下ろす。
「ねえ、あんた。アタイたちの仲間にならないか? あんたら冒険者なんだろ?」
彼女は、振り上げた手のひらからブロンズタグを二つ吊り下げた。そのタグには、私とアイリスの名前が刻まれていた。
「アタイはサン。ヘプタ盗賊団の族長の娘だ」
つめたい床の感触が頬を冷やす。眠気眼に起き上がると、私はひとつ伸びをした。
そしていつも起きるのが遅いアイリスを起こそうと目を開けた。
そうして開けた視界の先には、鉄の格子があった。
「へ?」
夢でも見ているのだろうか。いつの間にか私は牢の中にいた。
いや、閉じ込められている?
え、どうして?
周りには誰もいない。私は咄嗟に立って状況を確かめようとしたら、じゃらりと足元で音がした。
鎖だ。私の右足には鉄球が鎖で繋がれた枷が嵌められていた。
どうしてこうなった!?
私は土魔法のロックカッターで鎖を断ち切ろうと試みる。
「……あれ?」
しかし私の魔法は不発した。いつもなら魂から湧き上がる魔力が形となって魔法が形成されるのだが、今はそれが発動しなかった。
もしかして魔力が枯渇している?
いや違う。私の中にはまだ魔力が残っている。それがどういうわけか、何かに堰き止められているようなのだった。考えられるとしたらこの足枷か。
よく見れば、足枷には水晶のようなものが嵌められていた。
この世界の水晶は何かしらの効果を持っているものが多い。鑑定の水晶や、処断の水晶、私の持つ冒険者ギルドのブロンズタグにも水晶が嵌めこまれていた。もしかしたら、この足枷にも何かしらの効果があるのかもしれない。例えば、魔力を堰き止めるような効果だったり。
だとするとこれはかなりピンチだ。私は今何者かに捕まって投獄されている。
おそらく用心棒が不寝番している最中にその何者かに襲われてここまで運ばれたのだろう。
だとしたら、敵は最低でも用心棒すら相手にできる戦力を持っているかもしれない。
アイリスは大丈夫だろうか。
「アイリスー!! どこにいるのー!!」
「は~い、ご主人様~。……ムニャムニャ」
この声はアイリスだ。どうやら近くの牢に閉じ込められているようだった。それにしてもこの返事の仕方は、まだ寝ぼけている感じだな?
一先ず、アイリスの生存は確認できたので良しとしよう。次はどう脱出するべきかを考えねば。
今、私は魔法のスキルを使えない。つまり私が使える六大元素魔法と、淫魔魔法、空間魔法のスキルは現在使用不可ということになっている。おそらくアイリスも同様な枷を嵌められているだろうから、脱出は厳しいだろう。
残りのスキルで使えるものと言えば、『堕天』『淫魔』『屈服の服罪』か。
前の二つのスキルは、未だによくわかっていないスキルだ。『淫魔』なんて勝手に暴走してアイリスをサキュバスの眷属にしてしまったくらいだ。
下手に発動できるものでもない。そうすると、残るは『屈服の服罪』だ。
私は鉄球に向かって『屈服の服罪』を発動してみた。
ズンという音と共に鉄球が床にめり込む。
おお、どうやらこれは発動できるようだ。しかし鉄球を重くしてどうする……。足が余計に重くなるだけじゃないか。スキルで脱獄というのは難しそうなのがわかった。
ならば、この鉄格子を調べよう。まさかペンタゴンの外まで連れ去られたわけでもあるまい。
だとしたら、この建物も被害にあって壊れている部分もあるかもしれない。私は鉄格子を隈なく調べた。
はい、完璧に機能してました。
という事は、ペンタゴンの被害にあっていない部分もあるという事だろうか……。
それはつまり生存者がまだいる可能性があるということだ。私たちはもともとペンタゴンの被害について調べるためにここにきている。被害がない場所で生存できた人がもしいるのなら、ギルドに報告しないと!
しかし現状私たちは報告できる立場になかった。だって捕まってるもん。
あ、もしかして帰ってこない冒険者もここに収監されてたりするのかな。それともやっぱり殺されてるのかな……。もしかしたら私たちも殺されるんじゃ……?
「アイリス~。助けて~」
「ハッ! ご主人様が助けを求めてますの! え! あれ? ここどこですの? ご主人様―!!」
あ、アイリスが起きた。ちょっとぼやいただけなのに。今度からこうやって起こそうかな。いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
「アイリス聞こえるー? 今私たち、どうやら捕まっているみたいなんだ。どうにか脱出できそうにない?」
「任せてくださいませ。私の『眷属魔法』でなんとかご主人様を……ってあれ? スキルが発動しませんの」
あー、やっぱりアイリスもダメか。こりゃ八方塞がりだなぁ。
私が半ば絶望していると、誰かが階段から降りてくるような音が聞こえた。
そしてその足音の主は私の牢の前で止まった。
背丈は私と同じくらいの少女。長い黒髪は後ろで束ねられており、着ている服は質素な印象を与えた。彼女は不敵な笑みを浮かべて私を見下ろす。
「ねえ、あんた。アタイたちの仲間にならないか? あんたら冒険者なんだろ?」
彼女は、振り上げた手のひらからブロンズタグを二つ吊り下げた。そのタグには、私とアイリスの名前が刻まれていた。
「アタイはサン。ヘプタ盗賊団の族長の娘だ」
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