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サキュバスの娘、大罪を断罪す

1 二度目の馬車旅

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私とアイリスは今ペンタゴンという街へと向かっていた。
冒険者登録を終えて一息つけるかと思った矢先の出来事である。

なんと冒険者ギルドのギルド長ロバートに指名依頼を出されてしまったのだ。もちろん、各人拒否権は当然あったのだが、ロバートの無言の圧力に首を縦に振るしかなかったのである。

依頼内容は、簡単だ。
先日魔族によって滅ぼされたであろうペンタゴンという街の調査である。既に先遣隊として何人かの冒険者が派遣されていて、いくつかの情報を持って帰ってきているらしいが、そのうちの何件かは帰ってきていないそうだ。

つまり帰ってこれない要因がまだ残っているということ。私たちの目標として、その先遣隊の安否を確認すること……ではなく、先遣隊の代わりに調査をすることらしい。
一応私たちはまだブロンズタグ冒険者になったばかり。安否を確認するということは、自ら危険を冒して捜索するに等しい行為のため、私たちよりも経験値の高い冒険者が選ばれたのだろう。

場合によっては、冒険者が消息不明になった原因と対峙しなければいけない危険性があるのだ。私たちじゃおそらく手におえないだろう。かといって、調査に人手が足りていない状況だ。私たちをどうにかして使うほかないというわけだ。街一つ分だからね。そりゃ人がいるよ。

私たちが調査しなければいけないのはいくつかある。
一つは、本当に魔族によって滅ぼされたのか。これはぶっちゃけ先遣隊の情報からして確かな事実だと認められている。

二つ目は、生存者の確認。生き残った人を探すというものだ。これに関してはほぼほぼ意味がないだろう。それは後述の内容のせいでもある。

三つ目、空き家や空き地に住み着いた野盗、盗賊の駆除。そう、生きた人間がいたとしても、こういう輩が跋扈しているせいで、結局命を刈り取られる。こういう輩は私たちよりもずっと情報に聡い。
盗れるものがあるとわかったなら直ぐに行動を開始しているだろう。

盗賊からすれば、街一つ分の財宝だ。襲いに来ないほうがおかしい。
私たちの主な目的はこいつらの対応ではあるが、さすがに女の子二人なのはギルド長もわかっているので、近くにいる別の冒険者に報告するだけでよいと言われている。

ということで私は今ガタガタと馬車に揺られながらペンタゴンへと向かっているのであった。
馬車旅って私いいことないんだよなあ。最初に着いた町は死体しかなかったし、道中でハイドに裏切られるし……。

余談だけど、最初に着いた町から通常ルートに進むとペンタゴンの街を寄っていったそうだ。つまり、私たちがあのまま普通のルートを進んでいたら、状況的に悪魔たちに襲われていた可能性があったのだ。あの時のあの判断は間違いじゃなかった。紙一重で私たちは命を繋ぎとめていたのだ。

「ご主人様、見てくださいまし!! 草! 草が生えてますの!!」
「はいはい、アイリス。少しは落ち着きなって……」

ちなみに、先ほどからアイリスは馬車の外を見てはしゃいでいる。ただただ草原が広がっているだけなのに、何をそんなに楽しんでいるのだろう。私にはわからない。

「私、中央街から出るのは初めてでして……。こうして外の世界を見て回れるなんて、素敵ですわ!! ああ、念写真に収めたいですの!!」

アイリスは視界に映る草原をひたすらに念写真に写している。いや、どれも景色変わんないじゃん!!
見てよ、これ! ただの草!!

そうして夜が近づき、私たちは野宿をすることになった。
ご飯に関してはアイリスがアイテムボックスから取り出してくれた。マジ便利だな。

「さ、召し上がれ! 白身魚のポワレですわ!」
「「「いただきます」」」

私とアイリスは、御者と用心棒も含め四人で焼き魚を食べていた。焼き魚と言っても調理人が料理したマジもんの料理だ。お皿の上に、白身魚が載せられ、その上に野菜が丁寧に盛り付けてある。特製のソースはそれだけで食欲をそそる……のだが。

「ごちそうさまでした」

いかんせん、量が少なかった。直ぐに食べ終えてしまった。アイリスの方を見ると、満足気な様子だ。しかし、私にはちょっと少ないかなあ。ほら、用心棒もなんだか物足りなさそうな顔してる。
私はこっそり持ってきていた携帯食の干し肉を食べた。

「さて、どうやって寝ましょうか」

御者がそう尋ねる。大抵、この場合は誰が不寝番をやるかの相談だ。夜中に一か所にとどまっていると、野盗や魔物、魔獣に襲われてしまうからだ。私はまだ魔物とはスライムくらいしか会ったことないけど、きっと怖い生き物なんだろう。

「私は自前のテントで寝ますわ」

そういうとアイリスは「空間魔法」のアイテムボックスからテントを取り出して設営しだした。
おお、やっぱ便利だな。だけど多分彼女は何か誤解している。

「アイリス、今は誰が不寝番をやるかの相談しているんだよ」
「不寝番? そんなものが必要なんですの?」

どうやら馬車旅の危険を理解していなかったので、私は丁寧に説明した。納得したアイリスは顔を赤らめて恥ずかしがっていた。

「無知で申し訳ないですの」
「いいや、いいんですよ」

さて、御者が慰めているうちに決めておこうか。
そう思っていると、用心棒の人が、先に不寝番をすると名乗り出てくれた。
つまり私たちは夜中に目を覚まして交代することになる。まあ、それでいいでしょう。

まだ耳を赤らめているアイリスと一緒に私たちは、アイリス設営のテントに入ることになった。

「え、ご主人様! 私と一緒に寝てくださるのですか!」
「護衛のためだよ。変なことはしないでね」
「も、もちろんですの!!」

なんかしでかしてきそうだなあ。まあいいや。ひとまず、おやすみなさい。
アイリスがまだ何か言っているような気がしたが、気にせず私は眠った。
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