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冒険者になる
14 未来の念写真家
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「そういえばフラムは、どちらからおいでになったの?」
「私? 私はラーストって街のサキュバス街からだよ」
「まあ、そんな遠くからでしたの。私、そちらの方まで足を運んだことはありませんの。一度行ってみたいものですわ」
アイリスは遠くを見つめながら語る。
「私の夢は、いつかいろんな街を巡って念写真を撮る事ですの。ですけど、私はやはり貴族。いずれは父上の領地を継ぐことになります。だからその夢を叶えることは難しいでしょう。それはわかってはいるのですが、ついつい家出をして遠くの方まで念写真を撮りに行ってしまうのですわ」
「アイリスは色んな場所を巡って色んな風景を撮りたいんだね。私の夢と一緒だ。私もこの世界を旅して回りたいと思ってるんだ」
「そうでしたの! 本当に私とフラムは似たもの通しね。類は友を呼ぶと、どこかの本で見た気がしますが、これの事だったんですの」
アイリスは感動のあまり手を組み空に感謝の祈りをささげている。いちいち行動が派手なんだよね。でもその美しい外見のせいでかなり様になってしまっている。傍から見れば、聖女様と見紛うばかりの姿だ。
「あ、そうですわ」
アイリスは何かを思い出したように、ローブの下に隠してあったポーチから紙を取り出した。
念写真だ。
「仲良くなった証に、私がいままで撮ってきたこの念写真を見ていただきたいですの」
「ありがとう」
私は渡された念写真を見る。よくある街中の風景、賑わった露店商たちの姿、街中の噴水、誰かの家の花壇。これらはこの街の風景っぽい。
辺り一面の花が咲いている丘、鹿のような魔獣がこちらを林の奥から覗いてる風景、空を飛ぶ鳥型魔獣の雄々しい姿。これはこの街から少し離れた所の風景かな。
アイリスの撮る念写真はどれも臨場感が満載で、見ていて飽きさせるものがなかった。
「これはいい念写真だ……」
「お褒めにあずかり光栄ですわ。ですけれど、少し恥ずかしいですの」
アイリスは顔を隠し照れている。自分の作品をこうして褒められることに慣れていないのだろう。しかし、実力は本物であると確信できる。正直本にして売ってほしいくらいだが、この世界にコピー機というものはあるのだろうか。世界に一枚だけの念写真となると、法外な値段になってしまう。
「もしよろしければ、フラムの姿も撮っていいかしら?」
「私を撮ってくれるの?」
「もちろんですの! はじめての友達ですもの。撮ってみたいですわ」
私はそれを快く了承し、アイリスは念写の準備をし始めた。
そういえば、念写って一体どうやるんだろう。おそらく魔法か魔術具を使うんだろうけど。
「それでは行きます。光魔法――『念写』」
彼女は私を見据えると瞳を閉じる。そして自身の額に手を当てると、その指先が淡く光り出した。
アイリスは、その光を手元の紙に移すと、その紙に色が広がり始めた。やがてその色たちは一つの姿を見せた。
おお、これ私だ。
「完成ですの」
アイリスが完成させた私の念写真は、笑顔で映っている私の姿。自分で言うのも恥ずかしいのだけど、正直モデルのような可愛さだ。マジ映える。念写真の撮り方一つでこんなにも可愛くできるだなんて、やはり凄い。
「ありがとう! アイリス。めちゃくちゃ可愛く撮れてるね。やっぱりアイリスは才能があるよ!」
「いえいえ、そもそもフラムの素材が元よりよろしかっただけですわ」
ふーむ、これが念写というやつか。光魔法の属性なんだね。光魔法を扱える私なら同じようにできるのでは?
「ねえねえ、アイリス。ちょっと一枚紙をくれる?」
「……? 別にかまいませんの、どうぞ」
アイリスから紙を貰った私は、先ほど彼女がやっていたように魔法を唱える。目標はアイリスの姿だ。
「光魔法――『念写』」
私は目を瞑る。なるほど、これが念写か。目を閉じても映像が脳に直接入ってくるようだ。私は集中力を切らさないように、見ている映像を額から紙に移す。紙に色が広がったのを確認すると私は目を開けた。
「で、出来たー。念写って難しいね」
出来た写真はアイリスを映し出していた。しかし、その映ったアイリスは少し驚いた表情をしている。これは失敗といえるだろう。可愛らしい笑顔のアイリスを紙に映したかった。
「な、フラムも念写が使えますの!?」
当のアイリスはというと、念写真と同じような顔で驚いていた。
「なんとなく見様見真似でやってみたら出来たよ。私も光魔法の適正があるからね」
「いやいや、光魔法の適正があるからといって、一回見ただけで魔法が使えるはずがありませんの! もしそうなら、世界中の人々がもっとたくさんの魔法が扱えてますもの」
ん?
お母さんは、魔法を目で見て覚えろと言っていたよ?
もしかしてこれができるのは魔族だけなのかな。そういえば私、サキュバス以外の魔族と会ったことないなあ。
「でもうれしいですわ! 念写という部分においても私たち似た者同士なんですの! これはまさしく神が私に与えてくださった運命の出会い! 貴族という立場に縛る神を私は恨んでおりましたが、今私は初めて感謝いたしますの!」
またアイリスは空を仰ぎ、感謝をささげている。これ、毎回やるつもりなのかな。
でも、やっぱりかわいいからこのままでいっか。
「私? 私はラーストって街のサキュバス街からだよ」
「まあ、そんな遠くからでしたの。私、そちらの方まで足を運んだことはありませんの。一度行ってみたいものですわ」
アイリスは遠くを見つめながら語る。
「私の夢は、いつかいろんな街を巡って念写真を撮る事ですの。ですけど、私はやはり貴族。いずれは父上の領地を継ぐことになります。だからその夢を叶えることは難しいでしょう。それはわかってはいるのですが、ついつい家出をして遠くの方まで念写真を撮りに行ってしまうのですわ」
「アイリスは色んな場所を巡って色んな風景を撮りたいんだね。私の夢と一緒だ。私もこの世界を旅して回りたいと思ってるんだ」
「そうでしたの! 本当に私とフラムは似たもの通しね。類は友を呼ぶと、どこかの本で見た気がしますが、これの事だったんですの」
アイリスは感動のあまり手を組み空に感謝の祈りをささげている。いちいち行動が派手なんだよね。でもその美しい外見のせいでかなり様になってしまっている。傍から見れば、聖女様と見紛うばかりの姿だ。
「あ、そうですわ」
アイリスは何かを思い出したように、ローブの下に隠してあったポーチから紙を取り出した。
念写真だ。
「仲良くなった証に、私がいままで撮ってきたこの念写真を見ていただきたいですの」
「ありがとう」
私は渡された念写真を見る。よくある街中の風景、賑わった露店商たちの姿、街中の噴水、誰かの家の花壇。これらはこの街の風景っぽい。
辺り一面の花が咲いている丘、鹿のような魔獣がこちらを林の奥から覗いてる風景、空を飛ぶ鳥型魔獣の雄々しい姿。これはこの街から少し離れた所の風景かな。
アイリスの撮る念写真はどれも臨場感が満載で、見ていて飽きさせるものがなかった。
「これはいい念写真だ……」
「お褒めにあずかり光栄ですわ。ですけれど、少し恥ずかしいですの」
アイリスは顔を隠し照れている。自分の作品をこうして褒められることに慣れていないのだろう。しかし、実力は本物であると確信できる。正直本にして売ってほしいくらいだが、この世界にコピー機というものはあるのだろうか。世界に一枚だけの念写真となると、法外な値段になってしまう。
「もしよろしければ、フラムの姿も撮っていいかしら?」
「私を撮ってくれるの?」
「もちろんですの! はじめての友達ですもの。撮ってみたいですわ」
私はそれを快く了承し、アイリスは念写の準備をし始めた。
そういえば、念写って一体どうやるんだろう。おそらく魔法か魔術具を使うんだろうけど。
「それでは行きます。光魔法――『念写』」
彼女は私を見据えると瞳を閉じる。そして自身の額に手を当てると、その指先が淡く光り出した。
アイリスは、その光を手元の紙に移すと、その紙に色が広がり始めた。やがてその色たちは一つの姿を見せた。
おお、これ私だ。
「完成ですの」
アイリスが完成させた私の念写真は、笑顔で映っている私の姿。自分で言うのも恥ずかしいのだけど、正直モデルのような可愛さだ。マジ映える。念写真の撮り方一つでこんなにも可愛くできるだなんて、やはり凄い。
「ありがとう! アイリス。めちゃくちゃ可愛く撮れてるね。やっぱりアイリスは才能があるよ!」
「いえいえ、そもそもフラムの素材が元よりよろしかっただけですわ」
ふーむ、これが念写というやつか。光魔法の属性なんだね。光魔法を扱える私なら同じようにできるのでは?
「ねえねえ、アイリス。ちょっと一枚紙をくれる?」
「……? 別にかまいませんの、どうぞ」
アイリスから紙を貰った私は、先ほど彼女がやっていたように魔法を唱える。目標はアイリスの姿だ。
「光魔法――『念写』」
私は目を瞑る。なるほど、これが念写か。目を閉じても映像が脳に直接入ってくるようだ。私は集中力を切らさないように、見ている映像を額から紙に移す。紙に色が広がったのを確認すると私は目を開けた。
「で、出来たー。念写って難しいね」
出来た写真はアイリスを映し出していた。しかし、その映ったアイリスは少し驚いた表情をしている。これは失敗といえるだろう。可愛らしい笑顔のアイリスを紙に映したかった。
「な、フラムも念写が使えますの!?」
当のアイリスはというと、念写真と同じような顔で驚いていた。
「なんとなく見様見真似でやってみたら出来たよ。私も光魔法の適正があるからね」
「いやいや、光魔法の適正があるからといって、一回見ただけで魔法が使えるはずがありませんの! もしそうなら、世界中の人々がもっとたくさんの魔法が扱えてますもの」
ん?
お母さんは、魔法を目で見て覚えろと言っていたよ?
もしかしてこれができるのは魔族だけなのかな。そういえば私、サキュバス以外の魔族と会ったことないなあ。
「でもうれしいですわ! 念写という部分においても私たち似た者同士なんですの! これはまさしく神が私に与えてくださった運命の出会い! 貴族という立場に縛る神を私は恨んでおりましたが、今私は初めて感謝いたしますの!」
またアイリスは空を仰ぎ、感謝をささげている。これ、毎回やるつもりなのかな。
でも、やっぱりかわいいからこのままでいっか。
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