サキュバスの娘だって冒険したい 〜転生したら淫魔の娘だったので、魅了や触手を駆使して世界を堕とします〜

三文小唄

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冒険者になる

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ガタゴトと馬車が揺れ始め、私たちはラーストを旅立った。
目的地はアヴリル中央街の冒険者ギルド本部。そこで私は冒険者に登録をしてこの世界を巡るつもりだ。

ひとまず私は目の前にいた冒険者たちに挨拶をすることにした。これから一緒に行くのだ。当然であろう。馬車はおよそ5日間かかるらしい。事前に食料を買い込んでいなかったが、御者の人が手配してくれているので、食事に関しては心配いらないとも言っていた。

「あの、私フラムって言います。これからしばらくお願いします」
「おう、よろしくな!」
「よろしくお願いしますね」
「……よろしく」
「可愛い子だね。大変だと思うけど、あたしらがいるから安心しなよ!」

最初に元気よく答えた短髪の人はアダマンというらしい。全身に金属鎧を着こんでいてカチャカチャと音を鳴らしている。長剣を横に立てかけてあるので、おそらく戦士だろう。いかにも正義感の高そうな雰囲気を出している。

次に物腰が柔らかいローブを着た男の人は、ハイドと名乗った。魔法を使うのが得意そうな見た目だ。ローブの下には動きやすそうな恰好をしているようで、ちらりと短剣も見えた。いざとなったら近接戦闘もこなせるのだろう。

私に話しかけられてもおどおどとした様子で、あまり会話に入ってこない眼鏡をかけた女の人は、シェリルというらしい。名前すらも言わなかったため、ハイドさんが教えてくれた。彼女は、私と目線を合わせると慌てて手元の本を読み始めた。人と話すのが苦手なのかな?
読んでる本はなにやら薬学書っぽいものだ。そのせいか、彼女からは薬草の匂いがほんのり漂ってくる。

最後に、大量に荷物を持って入ってきていたアンバ―さん。彼女は力持ちらしく、その鍛え抜かれた筋肉を見せてニカっと笑った。その笑顔は世の男性すべてを魅了するほどの魅力があった。さわやかなお姉さんだ。

この四人はほぼ同年代で、私の住んでいた街ラーストで意気投合。パーティを組んだとのことだった。まだ結成から二か月らしく、パーティとしての経験値は低いという。
冒険者ギルド・ラースト支部での依頼は簡単なものが多いらしく、もっと上を目指したいと思ったこの四人は、アヴリル中央街のギルド本部で腕試しを考えてこの馬車に乗ったそうだ。

つまり私と目的地がまるっきり同じ。これは好都合だね!

ちなみに冒険者というのは、各街にあるギルド支部に張り出された依頼をこなす職業だ。依頼内容は多岐にわたり、薬草採取から迷子の捜索、魔物退治や護衛、戦争や未踏破地域の解析などがある。
余りにもやる内容が多いために、ひとくくりに冒険者と言ってもやる仕事が全く違うことも多い。

おそらく、この四人も元々別々の仕事内容だったのだろう。
アダマンさんやハイドさんは魔物退治や護衛、シェリルさんは薬草採取かな?
アンバ―さんは未踏破の地域を巡っていそうだ。

この四人が組めば、大概の依頼はこなせそうだ。その道のプロが混じっているわけだからね。

私はというと、この冒険者の未踏破領域へのマッピングがしたいと思ってる。つまり、アンバーさんは私の先輩ということになる。今のうちにいろいろ話せるといいな。

「おう、フラムちゃん。フラムちゃんは、なんで中央街まで行くんだい」
「私も冒険者を目指してるんです。将来は誰も行ったことのない場所へ行って、この世界の地図を広げたい」
「ほお、それはうれしいねえ。あたしもその仕事を主にやってきたから、後輩ができるのは大歓迎だよ」
「でもなんで中央街までなんだ? ラースト支部でも冒険者登録はできるだろ?」

そう、本来ならば私がわざわざアヴリル中央街まで行く必要はない。冒険者登録をするだけなら、各街の支部で事足りるからだ。
だがなぜ私がそれをしないのか。それは簡単だ。できない理由があるから。

「私、まだ十歳なんです。支部で登録できるのは十五歳からなので」
「ああ、そういうことか」

そう、単純に年齢制限だ。それもそのはず、冒険者というのは常に危険が付きまとう職業だ。安全面を考慮すれば年齢制限を設けるのは当然。
だから私が冒険者になるにはあと五年かかるということだ。しかし、あと五年もしていたら、お母さんにサキュバスへの道を強く勧められてしまう。サキュバスの仕事は十歳からでもできてしまう。そういう需要があるからだ。

私はそれが嫌だったから、早々に抜け出した。
ちなみに、ギルド本部だと年齢制限はないらしい。ギルド本部が直々にふさわしいかどうか見極めてくれるからだそうだ。
私はこの三年で強くなるよう勉強した。それに、サンクシオンさんからもらった紋章もある。これさえあればとりあえず冒険者にはなれるだろう。

その期待を胸に、私は馬車に乗ったのだ。

それからアンバーさんやハイドさんからいろいろな話を聞いた。冒険者になったときはどうやって過ごしたのか。どういう依頼が効率がいいのか。非常にためになる話ばかりだった。
途中でアダマンさんが割り込んで、自身の武勇伝を語り出した時は、私以外の皆が聞き飽きたといった雰囲気に包まれた。だけど、それは私にとっては未知であり、感動的な物語のようだった。

そうこうしているうちに、中継地の町にたどり着いた。そこで私たちは一旦休憩を取ることになった。
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