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43話 神様、新人達と親睦を深める

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「今日も頑張るぞ」

パンッ!パンッ!顔を叩きわたしは自分に気合を入れる。


「おはようございます」

「おはようエマ」

「あの、ごはんにお菓子を持ち帰らせてもらってありがとうございました」

「家の人は喜んでくれた」

「弟も妹もお母さんもすごく美味しいってとても喜んでくれました」

「そう、よかった…お父さんは?」

毒父はどうしたんだ?エマが父親のことは言わないので気になったので聞いてみる。

「…」明るかった表情が一変し悲しそうな顔になり下を向くエマ。

「言いたくなかったらいいんだけど、ごめんね」エマの感じを見てわたしは咄嗟に謝る。

「大丈夫です…最近お父さん家にいなくて…でも昨日たまたまお父さんを見かけたんですけど知らない女の人といて『もう俺は家に帰らないから勝手に生きろ』って言われたんです」

なんて勝手な毒父だ。この毒父を囲う女もどういう感覚してるのかな。こういう人って女に捨てられたらまた家に帰って来るんだよね。


「よし、ご飯食べて元気出そう」

「…はい」

エマの家庭の事情もあるし働き始めたばかりで給料もまだ出してない。

昨日話してたら「なにも食べずに来ました。でも慣れてるので大丈夫です。迷惑はかけません」って言うんだけどこんな小さな子供を朝から何も食べないで働かせるわけにもいかないから今日からエマはわたし達と一緒に朝ご飯を食べることになった。ハヤテとレンは食事の準備中。

「あの、わたしもお手伝いしてきます」

「じゃあお願いね」

気がきく頑張り屋さんのエマである。

「おはようございます」

「おはようー」

双子の姉妹のエリーとナタリーが来た。

昨日話していたらナタリーが「それならわたしも一緒に朝ごはん食べたいでーす」と言ってきたのでうちで一緒に食事をすることになった。

「おはようございます」ウィリアムさんが来た。ウィリアムさんも「よろしければわたしもよろしいですかな」と言われたので「いいですよ」と了承した。

同じ従業員で扱いが違うのもよくないからね。でも寝る前に冷静になってよく考えてみるとエマはともかく(なかなか厚かましい新人達だな)と胸の内で思った。

起きなんしございんすおはようございます。ふわぁ~」あくびをしてまだ眠そうな顔のカミラが来た。「わっちもいただかせておくんなんし」と当然カミラも一緒に朝ご飯を食べたいと主張したというわけだ。

これで朝と店が閉店してから夕方と一日に2回も従業員と一緒にご飯を食べることが決まった。まあ別に問題ないけどね。いいことじゃないか。同じ釜の飯を食べたら親しくなるっていうし従業員と親睦を深めることは悪くはない。

さあ、みんなで朝ご飯を食べたらコックコートに着替えて身だしなみを整えて仕事に取り掛かる。作業台を綺麗に拭いて清潔になったらスポンジケーキを冷凍庫から出して解凍する。スポンジケーキは今からも作るけどね。

2日目だけどみんな動けて作業できてていい感じだね。

「カパレコさん」

「なに?」

エリーに声をかけられる。

「こんな感じでいいですかね」

「上手だよ」

綺麗に生クリームでコーティングできている。昨日から働き始めたとは思えないような出来栄えだ。

「難しいな~」

「生クリームを塗るのに時間かけてたらクリームが硬くなってしまって美味しくなくなるから手早くだよ」

「はい!」

いい返事のナタリー。

そう言ってわたしも新人達を教えてるんだけど、ハヤテとレンのほうがわたしよりもはるかに上手に仕上げるんだよね…。

「これはどうするんでありんすか」

「それはここに入れるです」

「味見していいでありんすか」

「ダメです!」

おお、レンがカミラを指導してるぞ。

お菓子作りが終わったら店の清掃に外の掃除をしてもうそろそろ開店だ。相変わらず早くから並んでいる人がいて50人くらいの行列ができていた。ありがたいね。

そして昼になり開店。

「いらっしゃいませ」

「ケーキにプリンに…全種類ください。あと持ち帰る分は全部5個ずつで」

「かしこまりました」

「ありがとうございました」


そして店が終了し従業員みんなで食事タイムだ。

「もう仕事は慣れた?」

「そうですね」

「だいたい」

「な、なんとか」

「ある程度は…」

「わっちも問題ありんせん」

「そろそろ国王の誕生祭で城に行くことはみんなにも話したけど、その間店はどうしようか?わたしとハヤテとレンいなくて大丈夫そう?」

「大変そうですね」エリーが言う。

「そのことなのですが…誕生祭にはわたしも出席することになりまして…」

「わかりました。ウィリアムさんいないんじゃ厳しいかな。やっぱり店休みにしようか」

「急に言いまして申し訳ございません。昨日国王の側近の者に通達されまして」

ウィリアムさんはこの国で重要な地位の人みたいだし、参加するのは当然だろうね。なぜそんな偉い人がうちのお菓子屋で働いているのかってことなんだけどね…。店は休むことに決まった。わたし達は3人で店をまわしていたけど、新人達にはまだ厳しいからね。
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