転生辺境伯次男はチートが過ぎる

如月 満月

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子供時代

第17話 竜王様作『婚約指輪』

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「ファープニル、シルフィに最高の防御と効果を付与した指輪を今すぐ作れ」

そう言ってガイナス様は倒れた俺の様子をからかい……見に来たファープニル様にお願い、と言うより無茶振りした。





「ん~……、どんな材料かにもよるけど。まぁガイナスの事だから用意するのは最高の素材だろうけどさぁ」
「当たり前だ」

そう言ってガイナス様がいつの間にか空中に出来ていた黒い穴?に手を突っ込んで何やらゴソゴソした後に取り出したのは、白い麻で出来ているような見た目の大きな巾着袋。

にオリハルコンと高純度の魔石が入っている。適当に使え」
「わ~お、さっすが番馬鹿になってるだけある!ねぇねぇ、このオリハルコンとかいつ採れたやつ?最近のじゃないでしょ」
「採掘したのは50年前だが、物自体は1000年以上前に出来た物ではないかとの見立てだ」
「うわ~やっばぁ~!」

ガイナス様に渡された袋の中を覗いて何やら興奮しているファープニル様と真顔で袋の中身を解説しているガイナス様。

だが俺はそれどころでは無かった。


「あ、あのあの!さっきの何も無いとこから袋を出したのはどんな魔法なのでしゅ…ですか!?」
「シルフィ、落ち着け。後でちゃんと教えてあげるから」

ファープニル様とはまた違う俺の興奮具合に苦笑しながらガイナス様は俺を宥めた。

(おっと、いけね。興奮しすぎて噛んじゃった)

自分の知らない魔法を見るとワクワクしてどうやるのか知りたくなる。
キラキラした目でガイナス様を見ていると愛おしげな目で頭を撫でられた。

……やばい、ちょっと冷静になったら恥ずかしくなってきた。


「ぷふふーっ!面白いねぇ、シルっち。ボクも君の事気に入ったから特別に今ここで作ってあげる!」
「ここで!?」

ファープニル様の言葉にこの世界でも物作りが好きな俺は一気にまたテンションが跳ね上がった。
逆に俺がファープニル様の言動でテンションが上がっているのに不服なのか、ガイナス様は不貞腐れている。

「作れと言ったのは俺だが、なんだか複雑だ……」
「ふふ、ガイナス様もファープニル様に頼んでくださってありがとうございます」
「ああ」

俺の感謝の言葉にムスッと不貞腐れていたガイナス様は顔をこちらに向けると嬉しそうに微笑む。
俺もその微笑みに釣られて自然と顔が笑みの形に綻んだ。

(この人はほんと、俺が相手だとずっと笑顔だなぁ)

その笑顔を向けられるのがいつの間にかとても嬉しく、胸が温かくなる自分がいる。
これからもずっと、その笑顔を見ていたいと思った。



「よし、じゃあやるよ~」

そう言うとファープニル様は左手の手のひらにオリハルコンの塊と無色透明な『魔石』と呼ばれる石を数個乗せると、左手を握りしめその上から右手を乗せて包み込んだ。
そして目を閉じると、何やらボソボソとこちらには聞き取れないほど小さな声で何かを呟いた。
するとファープニル様の握っていた手の隙間から白い光が淡く漏れ出したなと思ったらピカッと光り、その後すぐに消えた。


「よぉ~し、完成!ガイナス、お手」

そう言うとファープニル様はガイナス様が出した手のひらの上に握ったままの自分の手を置くとゆっくりと開いた。

「……ほう。これはまた立派なモンを作ったもんだ。礼を言う」

感心した声でそう言ったガイナス様の手のひらの上には、細かい模様といろいろな色の小さな石が嵌った指輪と、同じような模様はされているものの黒い石が1個嵌った指輪の2個が乗っていた。

「婚約祝いだよ、君たちのね。その代わりボクに番が見つかったらお礼は倍返ししてよ!」
「ハイハイ」

適当に返事をしたガイナス様はおもむろに俺の右手を取ると、薬指に先程作られた指輪を嵌めた。
俺の指には大きいかと思われた指輪は、指に嵌るとぐぐっと縮みちょうどよくフィットした。

なにこれ凄い機能。
前世でもこんな機能があったら良かったのに。

「うわぁ……綺麗」

俺の指に嵌った指輪をまじまじと見ると、ところどころ花が咲いている蔦のような模様とその模様の邪魔にならない位置で嵌め込まれている小さな色とりどりの魔石。
キラキラと光るその石たちからは抑えられてはいるもののそこそこの魔力を感じた。


「シルフィも俺に付けてくれないか?」

そう言われてガイナス様から受け取った指輪。
それは俺の指に嵌っている指輪とほぼ同じ模様だが、1箇所だけ翼を広げた竜が刻まれており、その竜の口に咥えるようにして1粒の黒い石が嵌め込まれている。
なんだか俺の指輪に比べてかっこいい。

「……そ、それでは手を出してください」

俺の声に嬉しそうにガイナス様が右手を差し出す。
その手を取り、薬指にそのかっこいい指輪を嵌めた。
ガイナス様の指にはちょうど良かったらしく、縮む事無くそのまま嵌ったようだ。



「ところでこの指輪にはどんな効果が?色々魔石付いてるけど防御だけです?」

俺の問いにファープニル様とガイナス様は顔を見合わせると意味ありげに笑った。

「いずれ分かるよ。……近いうちにね」
「はぁ」

これは二人とも言う気がないな。
秘密にしたいって言うより知った時が面白そうって顔をしている。
なに俺で遊ぼうとしてるんだ、この竜王様たち。





──────────────





「陛下!陛下たちはここか!?」

部屋の外から聞こえてきた何度目かの慌ただしい声や物音に、俺は開けたままだった部屋の入口へと顔を向けた。

「チッ、もう来たか……」

隣でガイナス様の忌々しそうな声が聞こえる。
ファープニル様は顔は笑みの形をしているものの、その目は全く笑っていなかった。

部屋の中に慌ただしく入り込んできた騎士らしき人はファープニル様とガイナス様の姿を見るやいなや土下座に近い形で平伏し叫んだ。

「恐れながら申し上げます!城門前で『勇者』と『聖女』を名乗る3名が我が国に滞在しておられるアウクシリアの聖女シカールカ様に面会したいとの事です!なお、『聖女』に関しては二人ともそれぞれ“聖紋”があったとの事で本物で間違いないかと思われます!」

“聖紋”というのは、『聖女』として覚醒した際に体のどこかに現れる紋様ーー聖女の証である。


「…………今度はまで連れてきたか」
「断りにくいよう、とうとう『聖女』を出してくるとはね。ほんっっっっとあの自称勇者はしつこいねぇ~」

この世界では『聖女』というのは神の代弁者ということもあり、に偉い立場だとされている。
なので一般的な解釈だとこの国の竜王陛下であるファープニル様やガイナス様よりも立場的にはシカールカ様や他国の聖女様の方が上なのだ。
ただ、これはあくまで一般的な解釈なので、その国々によって多少の扱いの差などはあるみたいだが。

するとガイナス様の立っている反対方向からクスクスと笑い声が聞こえた。
ガイナス様が「あ、やべ。本気でブチ切れてる」と呟いていたがすぐにそのクスクスと聞こえる笑い声に掻き消されてしまった。

いつまでも止まないクスクス笑ってる声にそちらの方を見ると、ファープニル様が口元を握りこんだ手で隠していたが、目元は弧を描いていた。



「暇で仕方なさそうなと、ちょうど遊んであげようと思ってたんだよね」

そう言ってファープニル様が愉しげに嗤った。
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