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子供時代

他視点 明るき陽の光を放つ竜王①

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「なんぞワシがここに呼ばれたのじゃ」

ボヤくワシに横に居た男が「聞いてなかったんですか?」と鼻で笑いながら言った。

「なんじゃおぬし、そのマヌケな顔はリザードマンか?」
「なっ……!俺はリザードマンじゃなくて竜人だ!」

顔を真っ赤にして怒っているリザードマンに似た顔の男は放っておき、この場で一番体が小さいが実際はこの中で一番年上のミーシャは周囲を見渡した。

(寝惚けながら話半分で聞いていたのが仇になったのう)

よく見ればこの場に居る者は皆、親が国の中枢や上に立つ者ばかり。
そんな中でミーシャだけは両親共既に鬼籍で、育ててくれた祖父も王立の施設とは言え薬学研究所の所長という地味な肩書きだ。
ミーシャも立派な肩書きなどなく、その施設の研究員でしかない。

ただしミーシャの血筋・・に関しては普通では無いのだが。



「あ!ミーシャじゃん!」

知っている声にそちらを向けば、案の定思い浮かんだ人物がこちらに向かって近づいてきた。

「ファープニルか。息災だったかの」
「相変わらず変な喋り方だねぇ、ミーシャ。あの偏屈ジジイは元気?」
「今もピンピンしとるわ。あれはあと200年は生きそうじゃぞ」
「うっへぇ~化け物じゃん!でもまぁそれなら薬学研究所はまだ安泰だねぇ!」

ワシとファープニルが話してる所へ2人の大柄な男が近づいてきた。
どちらも顔だけは見た事ある。

確か黒い方がガイナスで、茶色い方がマッケ……マッケンと言ったか。

「ファル、そのチビは誰だ?」

茶色い髪の男がワシを見下ろして失礼にも指を差す。
それにワシはふぁ~と大袈裟に溜息を吐き、やれやれと肩を竦めた。
そしてじろりとその男を睨め上げるように見た。

「最近の若造は目上の者に挨拶も出来ぬとは嘆かわしい事じゃ。それに、100歳にもなっとらん小僧がワシを指差すでないわ」

ワシの言葉に指差したまま固まった男は目線だけファープニルに向けた。
その視線を受けたファープニルはにっこりと笑って頷いた。

「マ、マジか……年上なのかよ、コレで」
「見た目だけならかっわいい幼女なんだけどね~。しかも女装が趣味だし。こう見えてミーシャは300歳超えだよ」

ファープニルの言葉に目の前の2人の男は「は?」とでも言いたげな顔をした。
そして表情がほとんど動かない黒い髪の男の方が「そう言えば」と淡々と言葉を紡ぐ。

「太陽の如く、オレンジの光り輝く色を持つ竜人がいると聞いた事がある。見た目の姿だけで判断し侮ったら痛い目を見ると。貴方がそうだったのか」
「ほう?ワシの噂なぞあるのか。いつの時代もお喋りな輩がいるもんじゃな」

まぁ、悪い噂では無いようなので放っておいて良かろう。
ワシの存在が変わっとるのは自覚しておるし。

「自己紹介が遅れてすまない。俺はガイナス、隣の失礼な男がマッケンだ」
「おい、失礼な男ってなんだよ」

やはり先程名前を思い浮かべた本人でどちらも合っていたらしい。
言い合いして軽く胸を小突いたりしているが、ファープニル含め3人とも仲が良いようだ。

「くふふ。仲が良くて羨ましいのう」

そう言ったワシにマッケンは何か苦い物でも食べたような顔をした。
なんじゃ、その顔は。

「見た目はただのメスガキなのに笑うとなんかこえーな。ある意味ガイナスみたくどこか底知れなさを感じるんだが」
「ふん。ただの馬鹿な若造という訳ではなさそうじゃの」
「お褒め頂いてどーも」
「褒めとらん」

ワシとマッケンの言葉の応酬にファープニルはケラケラと笑い、ガイナスは興味無さそうな無表情顔だった。





──────────────





「……とうとう呼びに来おったか」

ベッドに座り下に届かない足をプラプラしながら、幼女ーーに見えて実は300歳超えの竜人男性であるミーシャは不服そうに呟いた。

「ミーシャ様、あたしもほんとに行っていいんですか……?」
「ランラン、今更何を言うとる。おぬしが嫌と言うてもワシは連れてくぞ」

横で不安げに確認してくる己の番ーーパンダ獣人のランランに、ミーシャは安心するように頬にキスをした。
傍から見れば可愛らしい幼女が凛々しい女性の頬にキスをしている図なのだが、実際は成人男性が成人女性の頬にキスをしているだけの健全(?)な図である。

「でもあたしなんて最下層の……吐き溜めみたいなとこで暮らしてた捨て子で、」
「……要らぬ事ばかり言うのはこの口か?」
「んっ……!」

ランランのリップクリームを塗ったような潤いのある唇に今度は噛み付くようなキスをする。
今はまだ幼子の外見のままなので、何かをするにもいちいち背伸びしたりしないといけないこの体が鬱陶しい。


「おぬしの事は、ワシが何があっても守るから安心せい」
「……はい。どこまでもお供します」
「ランランがいくら離してくれと言うてももう無理じゃぞ」
「……っ!はいっ!あたしも絶対、ミーシャ様から離れませんから」

そう言って泣き笑いの表情でこちらを見たランランに、ミーシャは眩しいものを見るように目を細めた。
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