転生辺境伯次男はチートが過ぎる

如月 満月

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子供時代

他視点 黒き竜王の守り人①

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トライア・ドラグーン王国で主権者警護隊副隊長をしているマッケン・アンガーは、その国を治める2人の竜王とは幼馴染であった。
1人は自らの体を犠牲に海を作ったと言われている水竜ギルギティアを祖に持つ竜人ファープニル・ドラグニア。
もう1人は黒の古代竜エンシェントドラゴンレシュテルヘルを祖に持つ竜人ガイナス・ドラグニアだ。

10歳の頃、竜人族の成人の儀で『何でもいいから竜を一体倒す』という課題を出されたファープニル・ガイナス・マッケンのやんちゃ組3名は、自分の親たちの手によって3人仲良く地底竜ボルボロスの住んでいたとされる巣穴に突き落とされた。
日頃は3人それぞれ好き勝手に行動して問題児のような扱いを受けていた3人だが、その日だけはそれまでが嘘のように各々が自分の役割を把握して動き、連携をして巣穴を寝床にしていた大型の飛竜を二体も倒した。
魔法攻撃に優れているファープニル、攻守共に優れるオールラウンダーのガイナス、そして物理攻撃が得意なマッケンは、それぞれが強い力と可能性を秘めており、これからの時代を担う者たちになると実はとても期待されていたのだった。


「この飛竜のお肉堅そうじゃない?本当にこんなの食うわけ?ってかさ~ボクら竜人なのに祖先のお肉食べるとか共食いになんない?」

そう言って倒した飛竜の死体をツンツンとつついているのは見た目だけは儚い系美人のファープニル。
その見た目だけで判断すると中身で痛い目を見る竜人の代表格だ。
コイツに何人の男女が泣かされたり殺されかけたりしてきたか……多すぎてたぶんもう誰も数えてない。

「俺は何度か食ってるが普通に美味いぞ。それに俺たちの祖先とは種類が違うらしいから問題ないんじゃないか?……飯の話してると腹減ったな」

そう言って腹に手を当てているのはガイナスだ。
一見竜人の中では常識人ぽいが、基本的に家族以外の他人には一切興味が無い為、団体行動にはあまり向かない男である。

「とりあえずコイツら持って上に戻らねーと課題クリアになんねーぞ」

マッケンこと俺はそう言って飛竜の死体を一体肩に担ぐと人型のまま翼だけ出して地上に戻るべく浮上した。





──────────────





「はぁ!?番が隣の国で生まれたぁ!?」

ここがどこかも忘れて叫んでしまった俺に、幼馴染の男はいつもの無表情とは違う興奮を隠せない笑顔でしっかりと頷いた。

「あぁ!だから今からアウクシリアまで番を迎えに行ってくる」
「ちょっと待て」

是と言えば今にも会議室の窓から飛び出しそうな男を制止する。
すると止められた事に不満なのか、男の瞳孔は楕円形からより細長い形に変化した。
邪魔する奴は全員もれなく殺りますみたいな凶悪な目をこちらに向け、口元だけは笑っている。

……おっと、これはヤバイか……?


「落ち着け……じゃなかった、落ち着いてください、ガイナス様。今は重要な話し合いの最中ですよ。国のトップが途中で抜けて良いわけないでしょ」
「この場にはミーシャもいるし、一応どっかにファルもいるだろ」
「ファープニル様ならガラハット様のお使いでガルガンチュアに行ってもらってますよ」

俺の言葉にガイナスはフンと小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。

ここまでの間、空気のような存在感で俺とガイナスを困惑した顔で見ている同盟国の皆様方。
彼らの目は明らかに“関わりたくない”と口に出さずとも物語っていた。


ーーこれはマズイ。

竜人の番至上主義の悪い見本を他国に見せてしまってるし、なによりガイナスが他国の要人がいる中で暴れ回らないかとっても心配である。


「マッケン、後は頼んだぞ」

そう言って全てを丸投げしてきた幼馴染改め竜王様は窓から飛び出して行った………………が、

「そっちに行ったぞーー!!」

ガイナスが飛び出して行った窓から外に向かって叫ぶと、既に待機していた仲間達や他の隊の騎士たちが上空や地上で暴走した竜王様を待ち構えていた。
さながら魔物の群れスタンピード並みの迎撃体制である。


「皆様方」

後ろを振り返り、同盟国の代表者たちの顔を見る。
その表情は困惑したままの者もいれば、顔を青くしている者もいたり、反応は様々だ。

「(あの馬鹿が)大変ご迷惑をおかけして、誠に申し訳ございません」

そう言って俺は深々と頭を下げた。
そして一言、


「申し訳ないついでに、今からちょっと・・・・の間だけ外が騒がしくなるので皆様この建物から絶対に出ないでくださいね」

俺のその言葉にミーシャ様が「ちょっとか?」とつっこんでいたのは聞こえないフリをした。
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