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子供時代
第11話 シルフィ、初めての旅行編③
しおりを挟む「あー、えっと……シルフィリアくんと言ったかね。これは何をしているんだ?」
翌日の昼前。
ワイマールさんは屋敷の庭の土を土魔法でひたすらモコモコと寄せ集めている俺に向かって恐る恐るといった感じで話しかけてきた。
もちろん、事前に庭の土を集めて使う許可は頂いている。
その時のワイマールさんはとっても困惑していた。
隣ではロッゾやマッケンさんもスコップを使ったり魔法を使ったりして土集めを手伝ってくれている。
最初マッケンさんもガイナス様も意味が分からないという顔をしていたが、俺がワイマールさんに庭の土集めの許可を貰いに行ってる間に過去の俺のやらかしをロッゾから聞いたらしく、戻ってきたらとっても生ぬるい眼差しを2人から頂いたーー解せぬ。
ちなみにガイナス様も手伝ってくれようとはしたのだが、さすがに竜王様にまで土集めをさせるのはとっても畏れ多いので「お気持ちだけ」と丁重にお断りした。
だがそのせいか、1人残されたガイナス様は庭の隅っこで時折こちらを恨めしげに見ながらのの字を書いて不貞腐れていた。
あ。やば、ガイナス様と目が合っちゃった……
……ちょ、やめて、そんなうるうるした目でこっちを見られても竜王様に土集めなんてさせたのバレたら国の役人とか偉い人から怒られるの俺なんだからな!?
「……よし、あらかた集まった。この土で『ゴーレム』の形を作った後、鉄鉱石で周りを固めて補強します」
あれはそう、俺が8歳か9歳だった頃。
前世で遊んだクラフトゲームで道具や家の素材などの無機物だけでなく、ペットやモンスターなどの生き物も作っていたのを思い出した俺は、軽い思いつきで頭の中に最初に思い浮かんだものを作ってしまい、後で父様はもちろん侍従頭やその他もろもろの家の者たちにたいそう怒られた。
その時作ったものが花壇用の土で作った『ゴーレム』だ。
そして今回作るのはその土で作ったゴーレムの改良版で、鉄鉱石を加えて作る『アイアンゴーレム』である。
ちなみにあの時作ったゴーレムは壊れてなければ今もうちの屋敷のどこかで見回りをしている……はずである。
ちょっと前見た時は何故かゴーレムの頭の上に鳥の巣が出来ていて、何の種類かよく分からない鳥の雛がピヨピヨしてたけど、今あのゴーレムはどうしてるだろうか。
「君は錬金術師なのかい?」
「ただの物作りが好きな少年です」
ただし“創造神の愛し子”というチート付与の称号付きだが。
これに関してはバレると厄介そうなのでなるべく他人には分からないようにしないといけないが。
どこかに人のステータスを鑑定出来る人とかいるのかな……今まで領地からあまり出なかったのでそれっぽい人に会った事ないけどこれからは用心しないと。
皆で頑張って集めた土の塊の周りに、ワイマールさんに村の内外から集めてもらった鉄鉱石を地面に置いてもらう。
……よし、何とか2体は作れるだろ。
俺は土の塊に手をかざすと脳内で前世のクラフトゲームで作った『アイアンゴーレム』の姿を思い浮かべ、その後に光属性魔法を発動した。
魔法属性効果についてちゃんとはまだ調べていないので一般的な効果がよく分からないが、色々と自分で試してみた結果、俺の光属性魔法の効果に関しては【負傷部位・身体や精神疲労への回復】の効果の他に【一定の条件下で指定のものに命を与える】という効果が今のところあるみたいだった。
この一定の条件下が俺もまだいまいちよく分かっていないが、とりあえず命が絶えた動物の死骸などには効果は無く、あくまでも命を吹き込めるのは最初から無機物だったものだけだ。
「おお!形が……形が出来上がって……!!」
「これは……なんと言うか凄いね」
聞こえてきた声に集中する為閉じていた瞼を開くと、目の前には表面を鉄で覆われたおおよそ想像通りの『アイアンゴーレム』が2体立っていた。
──────────────
「いまだに信じられん」
そう言いながら村の入口に立っているゴーレムを見上げているワイマールさん。
奥さんのニナさんは最初こそ驚いていたが「シルフィちゃん、貴方凄いのね!」と手放しで褒めてくれた。
他の村人も最初見た時はビビりまくって攻撃しようとしたり家へ逃げ帰ったりしたが、慣れたらしげしげと少し遠巻きに観察しに来ていた。
「どこまで光属性魔法が継続するか分かりませんが、数年前試しに作ったゴーレムもまだ動いているっぽいのでたぶんこの2体も壊されなければ数年は保つと思います。壊れる前にメンテナンスも兼ねて確認しに来たいですが、その前に壊れた場合はワーマイア宛に連絡を貰えればたぶん来れると思います」
「とてもありがたいが、儂らにはこれに見合うだけのお返しが……」
「泊まらせて頂いて美味しいご飯も頂きました。お礼ならそれで充分です」
そう言っている間にゴーレムの1体が村に近付いてきた狼型の魔物を発見し、ぴょんと身軽に飛ぶとその魔物へと着地しそのまま踏み潰していた。
……そ、そんな戦い方なんだ君たち。
「疑っておったわけではないが、強いな」
戻ってきたゴーレムを嬉しそうに見るワイマールさんに俺も嬉しくなった。
「相変わらず坊っちゃまは凄いですね……」
ロッゾは褒めているのか呆れているのか分からない淡々とした声音でそう呟いた。
そんな俺たちから少し離れたところに立つ比較的大きな木の真下。
その木に隠れるようにして立ち、こちらを見ながらガイナス様とマッケンさんが何やら二人で少し深刻そうに話し込んでいたのを俺は全く気付かなかった。
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