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子供時代

他視点 とある侍従の日記①

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〇年〇月〇日   晴れ

今日はシルフィリア坊っちゃまが7歳を迎えられためでたい日である。

毎年ご子息たちの誕生日を祝っている旦那様と奥様は、今回も当然張り切ってお誕生日会を企画した。
ところで毎年旦那様が手渡ししている坊っちゃまたちへの誕生日プレゼントだが、クラウス坊っちゃまは年相応の物を欲しがるのに対して、シルフィリア坊っちゃまの欲しがる物は一貫性が無い。
去年の6歳の誕生日は自分専用の花壇が欲しいと仰られ、何か花を植えられるのかと思ったらそこにはどう見ても『マンドラゴラ』と呼ばれる植物型の魔物が植わっていた。
シルフィリア坊っちゃまは「父様の領地視察に付いて行った時にたまたま森で干からびかけてたのを見つけたから拾ってきた」と仰られていたが、そのような魔物は本来森のもっと奥に隠れるようにして生息しているものだし、干からびかけているとは言え魔物なので簡単に拾えるものでもない。
どこに今まで隠していたのかと考えるととても恐ろしい。

旦那様は案の定、ちょっとビビりながらも「森に返してきなさい」とシルフィリア坊っちゃまに仰られたが、坊っちゃまは「大丈夫です。ちゃんと力関係を教えてやり従わせましたから」とにこやかに返していた。
末恐ろしい子供である。将来が怖い。
ちなみにそのマンドラゴラは今も花壇に大人しく植わっており、たまに庭を散歩する姿を皆が目撃していた。
そして冬の時期に野盗が降り積もった雪に紛れてこの屋敷を狙おうとした際は、警備兵より先に野盗を土属性魔法でボコボコにしていた。

なにあれ、怖い。


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〇年〇月〇日   曇りのち雨

今日もまたシルフィリア坊っちゃまがやらかした・・・・・

去年、8歳の誕生日に自分専用の部屋をもう一室邸内に作ってもらい、どこで覚えたのか最高レベルの防御魔法をその部屋にかけてそこを『実験部屋』としていた。
そこからは時たま物凄い轟音が聞こえて最初の頃は皆驚いていたが、最高レベルの防御魔法のおかげで部屋も屋敷もかすり傷一つ付かない為、現在は皆慣れたもので「いつもの事か」と済ませていた。
ただ、今日は何か違ったようで、メイドたちが慌てながら「皆さん道を開けてください!良いと言うまで廊下には出てこないで!」と何やら物々しい雰囲気で叫んでいた。
私は何があるのかと引っ込んでいた部屋の扉からこっそり廊下を見たのだが、そこには長い白衣の裾を引き摺るようにして歩いているシルフィリア坊っちゃまと、その後ろに重たそうな足取りで歩いている天井スレスレの大きさのゴーレムと呼ばれる人型の魔物がいた。
一瞬目が点となったが、坊っちゃまに何かあってはいけないと思い声を掛けようとしたら、「皆さん落ち着いてください。コイツは僕が作った・・・ので僕の言う事を聞きます。想定より大きかったので外に出しますが、皆さんを傷付ける事は無いので安心してください」と仰られると後ろのゴーレムを従えて庭に出て行った。
しばらくその光景を見ていた者たちが唖然として固まったままだったのは想像に難くない。

その後、ワーマイア辺境伯領でのみ所有を認められているワーマイア騎士団の団長もされている旦那様は、本日の騎士団での訓練を終えて帰宅された際にシルフィリア坊っちゃまのやらかし・・・・を侍従から聞かされ頭を抱えていた。
同じく学園から帰宅したクラウス坊っちゃまも弟のやらかしに頭を抱えていた。
似た者父子親子である。
ちなみに奥様はいつも通り「男の子ってほんと元気で羨ましいわ~」とのほほんと仰られていた。
違う、そうじゃない。


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〇年〇月〇日   快晴

シルフィリア坊っちゃまの押しかけ婚約者であられる隣国の竜王陛下ことガイナス様宛に、他の竜王陛下から戻ってこいと伝書鳥を通じて連絡が来たり、専属護衛のアンガー殿が直接迎えに来たりとで早く国に戻れと催促をされているらしく、坊っちゃまと絶対に離れたくないガイナス様は両親に婚約者の顔を見せるとかなんとか理由を付けて坊っちゃまを連れて急遽帰国する事になった。

旦那様はまだ遠出もした事の無い坊っちゃまに慣れない長距離の旅路をさせるのはどうかと直前まで渋っていたのだが、ガイナス様に何か脅さ……言いくるめられたのか最後は疲れた顔をしながら了承していた。
日に日に旦那様がげっそりとなさっているようでなんともお労しい事である。
ただ一部の侍従たちの間で、そんな窶れた美貌がなんとも儚げで色っぽいと密かに噂されているのを旦那様は知らないだろうし、知ってもさらにげっそりしそうなので耳に入らないよう気をつけたいと思う。
ちなみに奥様はどこから聞いたのかその噂を把握されており、噂していた侍従は奥様の料理の味見役をさせられ本人たちもげっそりしていた。

竜王陛下であられるガイナス様も色々と凄い方だとは聞いているが、あの方はまだうちのシルフィリア坊っちゃまのやらかし・・・・を目の前でご覧になっていないと思われるので、あちらに着くまで……いや、着いた後も坊っちゃまが何かしでかしてしまわないかと少々不安ではある。
坊っちゃまの無自覚なやらかしほど怖いものはないと屋敷のほとんどの者が思っている事を、きっと本人だけが知らない。

ロッゾよ、シルフィリア坊っちゃまをどうか頼んだぞ…………
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